ここからが飛行機モデルの本番!? レジン製シート製作とランディングギア取り付け【達人のプラモ術<F-4JファントムⅡ ブルーエンジェルス仕様>】

【達人のプラモ術】
造形村
1/48 F-4JファントムⅡ
ブルーエンジェルス仕様

05/06

前回は下面へのデカ―ルの貼りとクリアーでのオーバーコート塗装、そして機体を研ぎ出してハイグロスに仕上げました。今回は製作を先送りにしていたシートを製作、そしてランディングギアの取り付けなど機体の細部工作を進めていきます。(全6回の5回目/1回目2回目3回目4回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
でもレビューを配信中。

 

■イジェクトシートはレジンパーツでディテールアップ

F-4Jの座席はマーチンベイカーMk.7(航空用射出座席を専門に開発しているメーカー)のものが使われています。ゼロゼロ射出能力(速度ゼロ、高度ゼロでもパイロットを安全に脱出させる)を持つこのシートは、今では見られなくなったヘッドレスト上のフェイスカーテンハンドルが外観上のポイントです。緊急時にはこのリング状のハンドルを引き下げることでパイロットの頭部と顔面を保護するフェイスカーテンが展開され、座席をイジェクト(射出)、超音速時での射出であっても安全にパイロットを保護します。

ちなみに1950年代の初期の超音速機では、まだフェイスカーテン付きの射出座席が装備されておらず、音速を超えた速度で緊急脱出をおこなったパイロットは機体の外に飛び出した際にヘルメットや酸素マスクが瞬時に飛ばされ、風圧で瞼や鼻腔、口、耳が裂けるという瀕死の重傷を負ったそうです。いや怖いです。フェイスカーテン大事です。

最近の戦闘機の射出座席はフェイスカーテンを装備していません。ヘルメットや酸素マスクの安全性が向上したのと、緊急時に頭の上のイジェクトリングを引き下げるための時間を短縮するため、座席両サイド、あるいは両足の間のレバーを握ることで作動するようになっています。

話を模型に戻しましょう。

キットのシートも良くはできているのですが、シートベルトが省略されており、ちょっと物足りません。そこで今回はアイリス(飛行機モデルのディテールアップパーツメーカー)のレジン製シートにエデュアルドの塗装済みエッチングを組み合わせることで、精密感を大幅にアップさせています。

黄色と黒の縞模様のイジェクトリングは暗色が基調のコクピットの中で映えるポイントになるのですが、正直塗り分けが大変。今回は塗装済みのエッチングを使っているのでシャープに仕上がっています。

▲右がキットのシートを組んだもの。左奥がアイリスのレジンン製シート。ディテールの密度感が各段に高いのが分かる。専用エッチングパーツも付属しているが、今回はエデュアルド社製の塗装済みエッチングに置き換えている

▲アイリスの1/48レジンン製シートは、レジンパーツとしては安価で1000円前後で入手可能。エデュアルドのF-4用シートベルト(使用したのはアカデミー用)は1500円前後で購入できる

▲エデュアルド社製の塗装済みエッチングパーツは、実にありがたい。中央に見えるにイジェクトリングは折りたたんで重ね貼りすること厚みが再現される

▲シートを塗装してエッチングパーツを取り付け完成させた状態。黄色と黒の縞模様のイジェクトリングがワンポインとなってディテールを引きたててくれる

▲完成したシートをコクピットに仮組みしてみた。キットのシートと比べて大幅に密度感がアップしている。キャノピーは開状態にする予定なので、ディテール満載のシートが良い見せ場になる

▲実物のマーチンベイカーMk.7 イジェクトシート。毎回、シートベルトの取り回しがどうなっているのか悩まされる

▲F-4での実際のベイルアウト(緊急脱出)シーン ©US NAVY

 

■脚の製作とピンポイントウエザリング

次は脚を製作します。

基本キットのインストの指示に沿って製作していけばOKですが、機体下面のUS NAVYのロゴや機首のイエローラインの一部が脚カバーにかかっているため、事前に位置合わせをしたデカールを貼ってクリアーでのオーバーコート塗装を済ませておく必要がありました。

また脚を機体に取り付けた後では、カバー部分を研ぎ出すことができないので、脚カバー類は事前に磨いておく必要があります。脚柱やホイールは通常塗装のF-4と同じホワイトで塗装し仕上げればOK。飛行機モデルの脚は強度が不足がちなモデルが多いのですが、本キットは脚柱の接着面が大きく取られているので、取り付け後の強度が確保されているのがありがたいです。

今回、機体は光沢仕上げなので、スミ入れやウエザリングはあえて入れていません。しかし脚収納庫と脚柱、ホイール部分にのみスミ入れ塗料のブラックでウォッシングすることで複雑なパーツのディテールを強調し、軽く汚れた感じを再現しています。

コツとしてはスミ入れ塗料を攪拌せず、上澄みの薄い色の部分のみを使うこと。そうすることでディテールを強調した仕上がりを得られます。

▲ランディングギア(脚)は下地を黒サーフェイサーで塗装したのち、白で塗装しておく。細かいディテールが多いのでやはりエアブラシ塗装がベストだ

▲主脚タイヤはホイールが別パーツ化されているので、マスキングの手間がいらないのがありがたい。ホイールはパーツが小さいのでランナーから切り離さず塗装する

▲完成した主脚(左2点)と前脚。主脚はいちばん左側がスミ入れ塗料を入れていない状態。中央がスミ入れをいれた状態。よりモールドが強調されているのが分かる。オレオ部分はシルバーで塗装しておく

▲ホイールも同様、スミ入れをすることで陰影がつき立体感が強調されているのが分かる

▲主脚とカバー、作動用アクチュエーターを機体に取り付けた状態。キットは脚柱の取り付け角度も決めやすいのがありがたい

▲前脚を取り付けた状態、こちらもカバー類の角度が決めやすく、強度も確保できるよう工夫されている

▲F-4ブルーエンジェルス大地に立つ!脚が付いたことでより飛行機らしくなった。モチべーションもアップ!

▲脚の取り付けと併せて、個別に研ぎ出し磨いておいた主翼のフラップなど動翼類も取り付けていく。水平尾翼はまだ仮付け状態。塗装の仕上がりがイマイチなので、次回までに再塗装するつもりだ

ということで今回はここまで。実は静岡ホビーショーのあとにインフルエンザに罹ってしまい発熱と喉をやられてダウン。さすがに起き上がれず、製作作業も中断するハメに。いやゴメンナサイ。現在は体調も回復したので、次回、F-4ブルーエンジェルスの完成に向けて鋭意製作中であります。乞うご期待!

 

■一緒に並べたいブルーエンジェルス支援機ファットアルバート

今回製作しているF-4ブルーエンジェルスとぜひ一緒に並べたいと思っている機体(プラモ)があるんですよ。それがブルーエンジェルスの支援機「C-130Tハーキュリーズ Fat Albert(ファットアルバート)」。

機材や人員の輸送で使われている機体ですが、ブルーエンジェルスのチームカラーの機体は、ショーでも短距離離陸用のロケットを使ったテイクオフなど派手なフライトを見せてくれる人気ものでもあります。ちなみに2018年にC-130Tハーキュリーズは退役、現在は新型のC-130Jスーパーハーキュリーズに改編されています。

プラモ的にはイタレリが1/72スケールでKC-130ハーキュリーズ ファットアルバートを発売していたのですが、現在は絶版となっているのが残念。ブルーエンジェルスカラーのC130は実にカッコ良いのであります。以前購入して確か積みプラのどこかにあるはずなんですが…クローゼットを掘りおこして発見せねば!

▲ブルーエンジェルスカラーのC130T ©U.S. Navy Blue Angels

▲RATO(短距離離陸用のロケット)を使ってど派手な急上昇を披露するファットアルバート ©U.S. Navy Blue Angels

▲以前イタレリから発売されていた1/72KC-130ファットアルバート。現在では絶版となっており入手困難

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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