かつて“中型”クラスのバイクといえば400ccを指していましたが、いま世界的に売れている“ミドルクラス”というと、600〜800cc程度の排気量になっています。日本国内では大型二輪免許が必要となりますが、1000ccクラスほどのあり余るパワーがあるわけではなく、扱いやすいのが特徴。大型二輪免許を取得したばかりのライダーにもオススメできるサイズとパワー感です。
このクラスには、ライディングが上手くなると言われるモデルが多いのもポイント。これからリターンしようと考えているライダーも、普通二輪免許しか持っていないのであれば教習所に通って勘を取り戻しつつ、大型二輪免許を取得してこれらのバイクに乗るのがオススメです。
筆者がこれまで試乗した多くのモデルの中から、こうした“ライダーを育てる”ミドルクラスのバイクをピックアップしてみました。
1. スズキ「SV650」
このクラスの中でも、四半世紀を超える歴史を持つ長寿モデルがスズキの「SV650」。初登場はまだ前世紀だった1999年で、途中国内販売がされない期間があったり、「グラディウス」という派生モデルが生まれたりもしましたが、欧州では今に続くまで長く支持されてきました。
搭載されるエンジンは水冷の645cc 90°Vツインで、現行モデルの最高出力は63PS。数値としては決してパワフルではありませんが、V型らしいトルクフルな特性で、街中やワインディングでは俊敏な加速感が味わえます。
トラス構造のフレームに、正立式のフロントフォークとリンク式のサスペンションというオーソドックスな足回りですが、コンパクトなエンジンを中心とした車体のバランスが秀逸で、ジムカーナのような競技やサーキット走行などもこなす性能を秘めている。価格が80万3000円とリーズナブルなのも大きな魅力で、多くのライダーを育ててきたモデルでもあります。
ビキニカウルとセパレートハンドルを採用した「SV650X」というバリエーションモデルもあり、スポーティなバイクはハンドルが低くないと…という人はこちらを選ぶのもありです。価格は84万7000円。
2. スズキ「GSX-8S」
昨年登場し、新設計の775cc並列2気筒エンジンのフィーリングと、スポーティな足回りで高い評価を得ているのが同じくスズキの「GSX-8S」です。2気筒エンジンで重要な意味を持つクランク角は270°で、低中回転域でのトルク感と高回転でのパワフルさを両立。最高出力は80PSを発揮します。「スズキクロスバランサー」と呼ばれる2軸バランサーを世界初採用し、2気筒ながら驚くほど振動が少ない不思議なフィーリングです。
足回りは倒立フォークにラジアルマウントのブレーキと、現代的なスペックとされていて、ハンドリングも現代的なもの。トラクションコントロールや3段階に選べるライドモード、クイックシフターなど、電子制御も充実しているのもポイントです。その分、価格は106万7000円と同じスズキの「SV650」と比べると高価になっていますが、現代のスポーツマシンを味わいたいなら、こちらのほうがおすすめです。
今年に入って、フルカウルをまとったバリエーションモデル「GSX-8R」も発売されたので、よりスポーティなルックスが好みならばこちらを選ぶのも良さそう。価格は114万4000円です。
3. ヤマハ「MT-07」
今やヤマハの中核をなす存在となった「MT」シリーズのミドルクラスモデルが「MT-07」。搭載されるエンジンは688ccの水冷並列2気筒で、クランク角は270°となっています。このエンジンは、同社の「YZF-R7」や「テネレ700」にも採用されており、パワー感とトラクションのつかみやすさを両立しているとして評価が高いものです。最高出力は73PSを発揮。
フロントフォークはオーソドックスな正立式で、ABS以外は電子制御も搭載していないというシンプルな構成の車体ですが、その分ライダーの感覚を磨くには最適な存在。日常の速度域でライダーの意のままに扱えるというコンセプト通り、素直なハンドリングと右手の操作にリニアに反応するパワーユニットが魅力です。価格が83万6000円とリーズナブルなのもポイント。
現行モデルはフロントフェイスのデザインがやや先鋭的で、ちょっと気恥ずかしいという人は、オーセンティックなデザインの「XSR700」を選ぶという手もあります。基本的にエンジンと車体は同じですが、こちらは価格が100万1000円となります。
4. カワサキ「Z650RS」
レトロなデザインが好みであれば、カワサキの「Z650RS」がオススメです。1976年に発売され“ザッパー”の愛称で親しまれた「Z650」をオマージュしたスタイリングで、バイクらしいルックスに仕上がっています。搭載されるエンジンは648ccの水冷並列2気筒で68PSを発生。クランク角は1970年代に一般的だった180°で、高回転域でのシャープな吹け上がりを重視した特性とされています。
フロントフォークは正立式で、ホイールはスポークの細いキャストタイプ。遠目に見るとスポークホイールっぽく見えます。レトロなスタイルではありますが、2024年モデルからはトラクションコントロール機構も追加されました。ハンドリングは軽快で、アップライトなハンドル位置と相まって街乗りからワインディングまで気持ち良く走れます。
レトロなスタイルにこだわりがなければ、ストリートファイター的なデザインの「Z650」という選択肢もあります。これは「Z650RS」のベースとなったモデルで、デザイン以外のスペックはほぼ共通。価格は「Z650RS」が105万6000円に対して、「Z650」は101万2000円となっています。
5. ホンダ「CB650R」
ミドルクラスの排気量でも4気筒エンジンのフィーリングを味わいたいのであれば、ホンダの「CB650R」があります。648ccの水冷並列4気筒エンジンは95PSを発揮。4本並んだエキゾーストパイプの造形も美しく、インラインフォーを所有する欲も満足させてくれそう。これまでに紹介した2気筒モデルに比べるとパワフルで、高回転域での吹け上がりの気持ち良さも味わえます。
これだけの出力になると装備されていてほしいトラクションコントロール機構も搭載。足回りもフロントにショーワ製SFF-BP倒立フォークを採用し、ラジアルマウント式のブレーキを装備するなど安心感を高めるものになっています。ハンドリングも、軽快な2気筒モデルに比べると安定感の強いもの。4気筒らしいエンジンの伸び感じながら、高速コーナーを曲がって行くのが気持ちいい特性です。価格は100万1000円と、スペックに対してお得感が高いと感じられます。
フルカウルモデルが好みであれば、スーパースポーツ的なデザインの「CBR650R」という兄弟モデルも選べます。こちらの価格は107万8000円となっています。
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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- Original:https://www.goodspress.jp/features/584104/
- Source:&GP
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