積雪・凍結・低気温…厳しい自然環境が育んだボルボのピュアEV「EX30」の走行安定性を本国スウェーデンで実感した

雄大な自然体験を好む人の間で、スウェーデンをはじめとする北欧の土地の人気は高いようです。そこでは森林や河川などの環境保全が重要なテーマ。いかに共存の道を探っていくか。クルマメーカーにとっても重要な課題といいます。

2024年3月、スウェーデン生まれのボルボは、電気自動車「EX30」のテストドライブを通して、ひとつの大変いいサンプルを体験させてくれました。まだまだ雪深いスウェーデンの、さらに北部を走る「The Big Winter Drive」なるイベントを開催。私も参加しました。

■積雪あり凍結ありの路面を2台試走

▲EX30シングルモーター・エクテンデッドレンジ

スウェーデンにはアウトドア用品のメーカーが数多くあり、クオリティの高い製品を手がけていることについては、知っている人も多いのではないでしょうか。私も「ホグロフス」や「フーディニ」、それに「POC」のスキーヘルメットを愛用しているぐらいです。

ボルボ車も、冬は零下40℃になるような土地で使われることを前提に、開発されてきました。かつては後輪駆動、それから前輪駆動になり、そして全輪駆動と、より高い走行性能をめざして駆動方式も”進化”。いまは、EVが主流。はたして、雪道での性能ぶりは? と私も大いに気になっていました。

▲EX30ツインモーター・パフォーマンス

今回のテストドライブは、森のなか、平野、川沿いなどを200km強走るというもので、路面の状況は積雪あり凍結ありと、けっこう厳しいものでした。そういえば、スウェーデン陸軍の研究では、雪の状態を200ぐらいに分類しているそうです。つまり、雪との付き合いを徹底的に研究している国なのですね。

乗ったのは、日本にも導入済みの「EX30シングルモーター・エクテンデッドレンジ」と、24年中の導入が予定されている「EX30ツインモーター・パフォーマンス」。

「EX30シングルモーター・エクテンデッドレンジ」は、モーター1基をリアに搭載して後輪を駆動。「EX30ツインモーター・パフォーマンス」は、前後にモーター搭載で全輪駆動。前者の最大トルクが343Nmであるのに対して、後者は543Nm。前輪も駆動しての最大加速は、静止から時速100kmまで3.6秒といいますから、スポーツカー顔負けです。

冬の道での走行性能は、ひとことでいって、大きな安定感がありました。タイヤはミシュラン「X-ICE NORTH4」というスタッド(鋲)を打ったスウェーデン(と他の一部の寒い国)向けのスノータイヤ。

大変よくできたタイヤで、どんな状況でもほとんど滑らず、かつ、加速と制動に優れ、かつ、意外にノイズが低く、かつ、ステアリングフィールがダイレクトで、乗り心地は快適。EX30とのマッチングも、ボルボではよく調整していました。

さらに雪が軽く載った凍結湖を使った「アイストラック」でのテストでも、EX30はばつぐんともいえる安定性を発揮。リアモーターで後輪駆動のEX30シングルモーター・エクテンデッドレンジも、全輪駆動のEX30ツインモーター・パフォーマンスも、並べられたコーンの間をSの字を描くように走り抜けていくのにもスムーズな挙動です。

■滑る道でトナカイが飛び出してきても避けられる車両安定性能

ハンドルを操作したとき、あえてアクセルペダルを強めに踏むと、一瞬、後輪がより強い力で前に進もうとし、いわゆるリアが流れた状態になりますが、それも一瞬だけ。すぐに駆動力が制御され、車両は安定姿勢に戻ります。

「ドリフトは無理」と、アイストラックにいたボルボのドライビングインストラクターが言ったとおりでした。EX30ツインモーター・パフォーマンスで直線路に入るとき、パフォーマンスモードで前輪も常に駆動している状態にして、アクセルペダルを強めに踏むと、うわっと声が出そうな加速をみせます。直進性はいっさい乱れません。

そのあと強いブレーキングをしながらハンドル操作をしてみました。このときも前輪はしっかりグリップして、行きたい方向に車両はきちんと曲がってくれるのでした。

「滑るような道でトナカイが飛び出してきてもちゃんと避けられるはずです」と、インストラクターは自信を感じさせる笑顔で言うのでした。

スウェーデンはそもそも積雪に慣れているので、除雪はかなりていねいです。ただし路面は凍結しますから、摩擦係数が低い、つまりつるつる滑るのが冬の特徴といえるでしょう。そんな道ですが、ボルボEX30はかなり心強いパートナーでした。頼りになるEVなのです。

>> ボルボ EX30

<文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

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