【達人のプラモ術】
ゲッコーモデル
「1/35 米海軍 パトロール エアクッション ビークル(PACV)後期型」
03/08
PACVの製作第3回は、コクピットの製作に続いて、特徴的な艇体の製作を進めていきます。インストでは工程12からとなります。(全8回の3回目/1回目、2回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■艇体の製作
各パーツの精度も高く嵌合性も良好で、リフトエンジンのインテークダクト等はサクサク組んでいけます。ただし小さいパーツ(パーツGa3やGa4等)は接着面積が少ないので、組み立て後にパーツのポロリがないよう、しっかりと接着してください。同様に工程15の艇体上部と下部スカート部分を繋ぐパーツ(G15・G16E-14・D8・Cd13・Cd14)も力がかかるの部分となるのでしっかりと接着固定しておく必要があります。
▲前回完成させたキャビンを艇体上面に組みあわせていく。艇体上面パーツに白いムラがあるのは離型剤落としで取りきれていなかったため、ラッカー薄め液でパーツを吹いたことで生じたもの
▲艇体後部の甲板を組んだ状態。金色の部分はエッチングパーツ
▲リフトエンジンのインテークダクト内に12枚のフィンを接着しているところ
▲艇体上部に取り付けるパーツを組み上げた状態。この後、個々のパーツを塗装する
■艇体の塗装
艇体上部パーツは、指定色であるオリーブグリーンに塗装しつつ組んでいきます。今回はタミヤラッカー塗料を使用。艇体はサイズが大きいこともあって、缶スプレー(TS-28オリーブドラブ2)を使用して塗装しておきます。小パーツは缶スプレーだと厳しいので、TS-28と同色となるビン塗料(LP-29オリーブドラブ2)を使いエアブラシで塗装しています。
▲組み上げたパーツは黒サーフェイサーで下地塗装をしておく
▲艇体上面を缶スプレーで塗装。使用色はタミヤ缶スプレー(TS-28オリーブドラブ2)
▲タミヤ スプレー「No.28 TS-28 オリーブドラブ2」(770円)
▲塗装した艇体上面にキャビンを取り付ける
▲個々に「TS-28 オリーブドラブ2」で塗装したパーツを取り付けていく
▲工程15で組んだ艤装パーツも個々に塗装
▲塗装した後、艇体に接着
■艇体下部スカートの製作
艇体上部の続いて、下部のホバークラフトの特徴的なスカート部を組んでいきます。スカート部分は6パーツに分割されており、艇体下部となるパーツKに組みつけていきます。
スカートの6パーツは合わせも良好なのですが、パーツの厚みしか接着面がないので、正直強度に不安があります。構造上、裏側からの補強も難しいため、組み上げた後、乾燥時間をしっかりと取りることで強度を確保しています。
▲艇体下側となる部分。中央のパーツにホバークラフトのスカート部分となる6分割されているパーツを接着していく
▲組み上げた艇体下部。6パーツを組み合わせて構成するスカート部分は、接着がパーツの面合わせのみなので強度に不安がある
■本キット製作、最大の難所!
さて、ここでさ先に組み上げた艇体上部とスカート(艇体下部)を合体させるのですが、これにはかなり苦労させられました。ある意味ここが本キット製作での一番の難所かもしれません。
スカート側に艇体上部にはめ込む凸が設けられていますが、まずこれが上手く合いません。また艇体下部となるパーツKの上面が艇体上部のキャビン底部分と干渉してしまうのも問題です。
作例では、スカートと躯体の接着のガイドにあるハメ合わせガイドはカット。パーツKの上面をカットすることで、キャビン底面が干渉しないようにしています。
当初は、工程10でキャビンを組む際に位置を正しく組んでいないため干渉したのかと思いましたが、キャビンの組み方に問題はなく、本キット特有の問題のようです。
▲本キット最大の難所が、工程17の艇体上下接着とスカートの取り付けだ。修正工作を施さないと正しく組み上げることが難しい
▲艇体上部と下部(スカート)を組みあせるのだが、ここでトラブル発生、そのままではどうやっても上手く艇体上部と下部が組み合わせられないのである。原因は、艇体上部に組み込んだキャビンの床面が艇体下部のパーツKに干渉してしまう(床面が1mmほど低すぎるため)のと、艇体上部の取り付けるためにスカートに設けられた凸状のツメが正しい位置にこないため
▲艇体下となるパーツKの上面がキャビンの床面と干渉してしまうため、合わせ目に不自然な隙間ができてしまう
▲スカート部に設けられた凸状のツメの位置が艇体上部の凹部分と微妙にズレていることで、艇体の上下がうまく合わない。作例では、悪戦苦闘している途中で艇体側面に接着したパーツ(Cd13、Cd14)が外れてしまった。スカート側の嵌合用のツメは切り落としてしまった方が良い
▲艇体下部となるパーツKは、キャビンの床面と干渉する部分(赤い斜線部分)を切り抜き、またスカートに設けられた嵌合用の凸のツメ(赤い丸部分)をカットすることで、艇体の上下接着が格段にやりやすくなる。正しい上下艇体の位置合わせは慎重に行う必要がある
■キャビンの製作
艇体の上下接着に悪戦苦闘しつつ、接着剤の乾燥時間を利用してキャビンのルーフ部分の塗装を進めておきます。内側は指定のネイビーグレーに、外側は艇体と同じ「TS-28 オリーブドラブ2」となります。ウエザリング等も考慮して、この時点ではクリアパーツはまだ取り付けません。
▲キャビンのルーフは1パーツで構成。上部には銃座が取り付けられている
▲キャビンのルーフを取り付けると内部はほとんど見えなくなってしまう
▲PACVは前面に大型の乗降ハッチが付くので、開状態で製作することでそれなりに内部も見られる
■フィギュアはキットの到着待ち
第1回でも書きましたが、キットにはフィギュアが付属していません。作例はジオラマで仕上げるつもりなので、やはりフィギュアが欲しくなります。ベトナムのアメリカ兵は1/35スケールでは数多く揃っています。今回はGoodmoelから発売されている「1/35ベトナム戦争アメリカ戦車用ソルジャー」レジンキットを通販にて購入。現在到着待ちです。こうしたフィギュアを組み合わせることで、ブラウンネイビーで使用されたPACVのリアルな雰囲気が演出できると思います。
あとは水面も作らないといけませんね。PACVがほぼカタチになってきたので、次回はキットの製作と同時に海面ベースの製作を進めていきたいと思います。
というわけで今回はここまで、PACVの製作また次回をお楽しみに!
Goodmoel
「1/35ベトナム戦争アメリカ戦車用ソルジャーモデル(2名) レジンキット」(3687円)
▲到着待ち!
▲タミヤ缶スプレーと比較すると本キットの大きさが良く分かる
■現役で活躍中のエア・クッション型揚陸艇
ベトナム戦争でのPACVは限定的な使用で使用で終わっていますが、現在でもホバークラフトは現役で活躍しています。アメリカ海軍、イギリス、韓国、そして海上自衛隊で運用されているエア・クッション型揚陸艇がそれにあたり、LCAC(エルキャック/Landing Craft Air Cushion)の通称で呼ばれています。
米海軍と海上自衛隊で運用しているLCAC-100級は全長26.8m、全幅14.33m、満載排水量166.6トンとPACVに比べてかなり大型で、60トンの積載量を誇り、戦車など重量級の車両を搭載しても40ノット以上の速度で巡行できる性能を誇っています。
プラモデルとしては日本のピットロードをはじめブロンコモデル、トランぺッターなどがキット化しています。スケールは1/144ですが、PACVと並べて飾っても良いでしょう。
ピットロード
「1/144 海自エアクッション型揚陸艇 LCAC 10式 戦車1輌付きキット」(4158円)
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/663397/
- Source:&GP
- Author:&GP
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