モノづくりの情熱を炎に変える!新富士バーナー【GPジャーナル】

【GPジャーナル】

毎月、独自のイノベーションや情熱、モノづくりへのこだわりを持った“気になる企業”にズームアップ。その現場の裏側を深堀りします!

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【VOL.05】

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新富士バーナー株式会社

設立年:1978年
従業員数:115人

1978年、愛知県蒲郡市で創業する。工業・農業用バーナーで培った技術を背景にアウトドアブランド「SOTO」を展開。聖火リレートーチの燃焼機構を担当するなど、その技術力には定評がある。

■一次産業からキャンパーまで! モノづくりの情熱を炎に変える企業

1978年の創業以来、まもなく半世紀の歴史を刻む新富士バーナー。もとは工事現場の配管作業などに使われる工業用トーチバーナーの製造から始まった。「用途に合わせて最適な炎をデザインする」ことを使命とし、プロ向けの工具から、雑草焼却などの農業用、そしてアウトドアまで、あらゆるシーンで必要とされる〝炎〞を作り続けてきた職人集団である。

今ではキャンパーの間で不動の地位を築いた同社だが、その大きな転機となったのが1990年に販売された「ポケトーチ」だ。

「100円ライターを燃料にする画期的な製品で、当初はハンダ付けなどのホビー用途として開発されました。ところが、風に強く着火しやすい点がキャンパーの間で口コミで広がり、予想外のヒットとなったのです。社長自身もキャンプ愛好家だったこともあり、日本のキャンプスタイルに合った製品を作ろうと、1992年に立上げたのが『SOTO』ブランドでした」(坂之上さん)。

その後、CB缶(カセットガス)の弱点である低温時の火力低下(ドロップダウン)を解決した「レギュレーターストーブ ST-310」や、予熱作業や煤の処理を不要にしたガソリンストーブ「MUKAストーブ」、ガスとガソリンの両方が使える「ストームブレイカー」など、常識を覆す製品を連発。その卓越した燃焼技術は、聖火リレートーチの燃焼機構を担当するまでに至った

そんな同社がなぜここまで信頼される企業に成長できたのか。

「何より、ガス器具は命に関わるため安全性は絶対です。『1万台作っても1点のガス漏れも起こさない』という鉄の掟のもと、重要部品は1000分の1ミリ単位で内製し、全数検査を経て出荷しています。他社がやらないこと、困難な課題にあえて挑む姿勢が、今に繋がっているのだと思います」(坂之上さん)。

また、単なる道具作りにとどまらず、火を扱うスキルやその暖かさを次世代へ伝える「火育(ひいく)」も自らの役割だと語る。真摯に炎と向き合い続けるプロフェッショナル集団が、次にどのような〝炎〞を灯してくれるのか、期待は高まるばかりだ。

新富士バーナー 開発部 広報
坂之上 丈二さん
2005年入社。広報として、取材や登山家との連携まで、対外的な窓口を一手に担うブランドの“顔”でもある。

■わずかな誤差も許さない! SOTO製品のクオリティも支える精緻な技術力を見た!

火という命に関わる道具を作る責任。だからこそ彼らは、ガスの心臓部を自らの手で削り出す道を選んだ。1000分の1ミリ精度で生み出される部品と、それを支える幾重もの検査体制。技術と人の目が織りなすSOTOの製造現場、その最前線に迫る。

工場の入り口に並ぶNC旋盤では、真鍮の線材からガスの流路となるバルブやノズルなどの重要部品を削り出している。その精度は1000分の1ミリ単位。わずかな誤差も許されないため、24時間稼働の自動加工に加え、投影機などを用いた朝昼晩の抜き取り検査を徹底している。「1万台作っても1点のガス漏れも起こさない」という使命のもと、デジタル技術と人の目による厳格な品質管理が新富士バーナーの信頼性を支えている。

■まだまだあるぞ! 会社訪問で見つけた注目の取材ネタ!

▼世界中から賞を受賞するSOTO製品たち

▼SOTOの始まりはポケトーチ!

▼インダストリアルなラッピングトラックがイカす

■品質が安全性に直結! 厳格な検査で細部の異変も見逃さない

ガス器具は命に関わるため、わずかな不具合も許されない。組み立て途中で全数を水に沈めて行う「水没検査」や、暗室での「燃焼検査」が課される。一台一台、熟練のスタッフがその目と手で炎の形状や気密性を確認。安全を保証してから世に送り出す。

製造工程は、まさに検査の連続だ。あえて組み立てを手作業で行うのは、指先の感覚で部品の違和感を察知し「作りながら検査」するため。顕微鏡で微小部品まで確認する徹底ぶりだ。厳しい試験をクリアした製品のみが、最後に人の手でパッケージングされる。箱詰めの瞬間まで目を光らせ、ユーザーの元へ届くのは、幾重もの関門を突破し、工場で実際に火を灯された「点火済み」の製品だけなのだ。

■アウトドアユースを前提としたタフさと実用性! SOTOのモノづくり哲学に迫る

華美な塗装も、意図的な装飾も存在しない。あるのは「軽く、小さく、扱いやすく」という機能の追求だけだ。極限まで削ぎ落とされた「必然のカタチ」。なぜSOTOは飾り気を排し、実用本位に徹し続けるのか。その質実剛健なモノづくりの裏側を訊いた。

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SOTOの製品開発は、デザイナーがスケッチを描くことから始まるのではない。すべての起点は、寒冷地で火力が落ちる、プレヒートで手が汚れるといった、フィールドで直面する具体的な「課題」にある。それらを技術的に解決することこそが最優先事項であり、外観はその機能を成立させるための結果に過ぎない。

「デザイン主導というのは、あまりないですね。まず機能を突き詰め、最後に意匠を整えるのがSOTOのモノづくりです」(西島さん)。

彼らが追求するのは、「軽く、小さく、そして手に取りやすく」という徹底した実用性だ。そのための要件を極限まで詰め込み、無駄を削ぎ落としていく過程そのものが、SOTOのデザインフロー。

「その最後に、少しかっこよくしようとアレンジを加える。形で入らないから突飛なものは生まれませんが、結果として機能主導のストイックな姿になるんです」(西島さん)。

塗装を施さない無垢な金属の質感も、装飾的なパーツの欠如も、すべては軽量化やコストダウンといった、新富士バーナーが目指す機能要件を満たした結果だ。その「飾らない姿」は、厳しい自然環境で点火でき、いつもどおり確実に機能させるための、合理的な選択の帰結なのだ。

新富士バーナー 開発部 係長
西島丈玄さん
2003年入社。設計・デザインを担当。「機能主導」を掲げ、数々のバーナー開発に携わる開発の要。

 

 

 

▼「レギュレーターストーブ ST-310」(7480円)

▼「TrekMaster ST-331」(1万2870円)

累計出荷台数100万台を超える代表作「ST-310」。低気温下でも安定した火力を発揮するマイクロレギュレーターを初めて搭載したモデル。「ST-331」はCB缶モデルとしては初の液出し分離型バーナー。低重心で安定感良好。山岳や不整地でも安心して使用可能だ。

登山用CB缶も課題解決を起点に生まれた。冬山対応の配合と、安価で収納性の高い実用性を両立。安全性のため、キャップ形状に至るまで一から再設計する徹底ぶりだ。

バーナー同様、クッカーも実用本位だ。極薄チタンの採用や、リブを排した際の歪みと格闘し、軽量化を徹底追求。後発だからこそ、既存品に負けない機能美を目指した。

■その時々にふさわしい火を灯す--『SOTO』だけじゃない! こんなところにも新富士バーナー製品

キャンプ好きなら「SOTO」はおなじみでも、その母体の「新富士バーナー」が、実は工業や農業用バーナーの老舗であることは意外と知られていない。道路の白線引きから雑草の焼却まで、暮らしのあちこちで活躍する「炎のプロ」。アウトドアの枠を超え、ニッポンの生活を支え続けるその素顔とは。

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かつて彼らの主戦場は、キャンプ場ではなく、電柱の上や農地だった。通信インフラを支える工事や、農家の重労働を減らす除草作業。「炎の形をデザインする」高度な技術は、今なお日本の産業を縁の下で支えている。

その実力が示されたのが、2021年の聖火リレートーチ、その心臓部である「燃焼機構」を担当した。

「リレーは雪の残る東北から真夏の東京まで続きます。雨風や気温差の中でも炎を絶やしてはいけない。そこには新富士バーナーが培ってきた技術の粋が詰め込まれているんです」(坂之上さん)。

桜型のトーチの内部には、寒暖差を制御するレギュレーターや、雨風に強い燃焼機構など、これまで磨き上げてきた「消えない技術」が結集していたのだ。

こうしたノウハウこそが、SOTO製品の信頼性を支える屋台骨となっている。

「例えば草焼きバーナーの燃料を気化させる構造。これはガソリンストーブに応用されています。工業用バーナーを作り続けてきた技術の蓄積があるからこそ、今のSOTO製品が作れるんです」(西島さん)。

絶対に失敗できない現場で鍛え上げられた「プロの道具」としてのDNAが、我々の手元の小さなバーナーにも確かに息づいている。

■東京2020オリンピックの成功も技術力で支えた!

世界的デザイナー吉岡徳仁氏が描く桜の造形を、新富士バーナーの燃焼技術が実現した。各分野の企業が結集した「オールジャパン」の結晶。国民が繋ぐ希望の炎を、日本のものづくりが陰で支えていたのだ。

 

草焼きバーナーの、燃料を気化させる「らせん状パイプ」。この構造はアウトドア用ガソリンストーブに応用されている。工業用で培った技術の蓄積こそが、SOTOの礎だ。

←工場見学&取材の様子は公式YouTubeチャンネルでも公開中!

 

 

 

 

>> 連載【GPジャーナル】

※2026年3月6日発売「GoodsPress」4月号P106-109ページの記事をもとに構成しています

<取材・文/山口健壱 写真/逢坂 聡 イラスト/福島モンタ>

 

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