音楽とともに楽しむお酒はより美味しい。アーティスト鷺巣詩郎、石渕 聡、小宮山雄飛に聞く、「お酒と音楽」の魅力とは?

【酒と泪と男とカルチャー】

お酒を楽しむ場を思い返すと、特に出先ではいつも音楽が流れていることに気が付きます。軽い酔いと微かに聴こえてくる美しい音色…何とも心地良い時間です。「お酒」と「音楽」は言わずもがなとても相性の良い組み合わせ。その証拠にジャズバーやクラブなど、そもそもワンセットになっている場所が街には溢れています。今回は「お酒×音楽」の魅力についてプロのアーティストたちにインタビュー。好きなお酒や音楽、そしてシチュエーションなど語ってもらいました。

■お酒×音楽。大事なのは心や体が踊るかどうか

▲鷺巣詩郎/作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。数々のアーティストの楽曲を手掛けるだけではなく、映像音楽のフィールドでも活躍。特に庵野秀明監督とは「ふしぎの海のナディア」以降、「エヴァンゲリオン」シリーズをはじめ多くの作品でタッグを組み、彼の楽曲なくしては語れないほど。2020年には東京オリンピックの開会式で国家「君が代」の編曲も担当するなど、世界に誇る日本のアーティストのひとり。

「エヴァンゲリオン」シリーズをはじめ、さまざまな庵野秀明作品で劇中曲を担当する作曲家・編曲家・音楽プロデューサーの鷺巣詩郎さん。誰しも一度は彼が生み出した音楽を耳にしたことがあるはず。国内だけではなく世界中を飛び回り活躍し続ける鷺巣さんに、お酒と音楽について取材を敢行。毎日忙しく活動する中で、お酒や音楽はどのような存在なのでしょうか?

――普段、よくお酒は飲まれるのでしょうか?

鷺巣詩郎(以下、鷺巣):仕事が終わってから、食事をしながら飲みますね。ほとんど食中酒です。普段、パリやロンドンにいるのですが自分で夕飯を作ってね。時間は結構バラバラですが、仕事が終われば気兼ねなく飲めるじゃないですか。

――その際、何を召し上がることが多いですか?

鷺巣:ビールを飲む場合もありますけど大体は白ワインですかね、フランス産の。最後にお菓子を食べながらシャンパーニュを飲むんですけど、ほぼ毎日飲んでいます。自分の音楽を聴きながら。

――ご自身の楽曲を聴きながら、というのはチェックも兼ねて?

鷺巣:いえ、あくまでチェックは仕事中に終わらせるので。ただ、何と言えば良いんですかね…。仕事のとき、張り詰めた状態で聴くのとはまた違って、食事しながらお酒を飲んで聴いていると、案外気付きがあるんですよ。少し気持ちがリラックスしている状態でないと気付かないことがあるというか。オフのときではあるものの、それは結構重要視しています。敏感過ぎない状態というか。

――なるほど。結構まったりと聴いているんですか?

鷺巣:そうですね、でも実を言うとBGM的に聴く音楽はあまり好きじゃなくて。ホテルのバーとかで静かにかかっている音楽を聴くよりも、逆にガンガンに音が鳴っているクラブとかのほうが好きなくらいで。それこそ自分でもクラブを経営していたこともありますし、中途半端に聴こえてくるよりは大音量で聴きたいですね。

ーーそうなんですね。落ち着いた楽曲も多数制作されているので意外です。

鷺巣:僕はどんなに静かな曲やスローな曲を作ったり演奏したりしても、基本的に音楽はダンスミュージックだと思っているんです。踊るためのもの。例えば、スローでムーディな音楽であっても、特に海外だと恋人と一緒に踊っているじゃないですか。腰を音楽に合わせて動かしたくなるというのかな、そういう気持ちを喚起させる音楽を作りたいと常に思っています。踊りと音楽と、そして適量のお酒。そもそも自分にとって、その組み合わせは必然というか当たり前のものという感じなんです。

――その“踊りたくなる音楽”というのは、例えばアニメなどの劇中曲でもでしょうか?

鷺巣:もちろん。どうしてかと言うと、やっぱりそのシーンごとの音楽って心が踊ったり、ざわざわしたり、不安になったりとか観ている人たちの心情を動かすものじゃないですか。そう考えると、根底にあるのは人を動かすということになるんです。腰などの体だけではなく、心も同じようにね。特に劇中音楽は何千年も前からギリシャで栄えたものですし、要するにステージの脇で合唱していて、それに合わせてステージ上の演者たちは踊っていたわけで。劇音楽というのは観ている人の心を動かすものであると同時に、舞台にいる人間を舞わせるものですよね。だから、「エヴァンゲリオン」にしろ「ゴジラ」にしろ、体であれ心であれ“人を動かす”というのが僕の音楽の根底にはあるんです。

▲日本でレコーディングする際は、こちらの「リズメディア」のスタジオをよく使用するそう

――人を動かす、だからダンスミュージックということですね。今度はお酒についてもお聞きします。ワインを好きになったきっかけや好きな理由はありますか?

鷺巣:僕は小学校から高校までフランス語の授業がある学校に通っていたんですが、15歳くらいになると夏休みにフランスに行くんです。林間学校みたいな感じですかね。それで通っている学校の先生は来なくて、国立大学のフランス語の教授が付き添ってくれるという良いシステムで。初めて参加したとき、1970年代の初めくらいだったかな、羽田空港の出国カウンターを過ぎたところ辺りで付き添いの先生が言うんです。「君たち、もうここからは日本じゃなくてフランスだ。せっかく治外法権なんだから、ワインもどんどん飲みなさい」って(笑)。さすがに今はそんな理屈は通らないでしょうし、僕らはもう時効でしょうけど、当時はそんな感じで。

――それではフランスでワインを?

鷺巣:そうですね。実際、僕らみたいな子供たちでもフランスでレストランの席に着くと注文をするときに「何を飲みますか?」って聞かれるんです。「白ですか? 赤ですか?」って。あちらでは白か赤か、何もいらなければ水。この3択でした。結局、食中酒だからなんですよね。食べ物にはワインをあてがうというのが文化なんですよ。日本でお茶が付いてくるようなものですよね。だから、気付いたときには当たり前のように食事と一緒に楽しむものに自分の中でなっていたんです。

ーーそれにさらに音楽を合わせる、と。

鷺巣:音楽ってやっぱり何かと合わさると劇的な効果が出ますから。フィギュアスケートもそうですし、オリンピックでブレイキンもやりましたし。相乗効果は計り知れないですよね。でも、映画やアニメ作品で音楽が流れているのってよく考えると不思議ですよね。現実では鳴っていないじゃないですか。

――確かに現実では音楽って鳴ってはいないですね。

鷺巣:でも、面白いのが人間の心の中では鳴っていたりするんです。例えば遅刻しそうなときとか、急いでいるような音楽が頭の中に流れていたりするじゃないですか。それもある意味、心が踊らされている状態なわけで。やっぱりバラードだろうと“踊らせる”というのが自分のテーマです。

▲テーブル上の2枚のLPは「THE WHITE ALBUM -EVANGELION 30TH ANNIVERSARY 1&2」。その奥のポスターは鷺巣さんが以前経営していたクラブの看板をプリントしたもの

――最後に、音楽を聴く環境について伺いたいのですが、スタジオで基本は聴かれているんでしょうか?

鷺巣:本当にそうです。スタジオの最高のスピーカーで。だから僕は仕事が終わってスタジオで飲みながら音楽を聴いて、今でもよく踊ります。特にロンドンとパリではとにかくよく踊っていますよ。踊るというか、体が動くんです。自分が良い音を仕上げられたときは喜びを表現したいと思うし、自分も勝手に動いてしまいますね。自宅にもそこそこ良いスピーカーを置いているので、近所迷惑にならない程度の音量で聴いて。家でもよく妻と踊ります。

――素敵ですね。

鷺巣:音楽とお酒、そしてダンスは僕の中では三位一体なんです。自分が生きていくうえで欠かせない3要素ですね。

>> 鷺巣詩郎

■楽しかった音楽体験もそのとき飲んだお酒で思い出せる

▲石渕 聡/コンテンポラリー・ダンスカンパニー「コンドルズ」及び「コンドルズ軽音楽部(THE CONDORS)」のメンバー。大東文化大学教授。著書に『冒険する身体 現象学的舞踊論の試み』(春風社刊)がある。ダンスに音楽、そして文学までマルチに活躍するアーティスト兼文学博士。

コンテンポラリー・ダンスカンパニー「コンドルズ」に1996年の立ち上げから参加し、アーティストとして活動する傍ら大学で教授として教鞭を執る石渕 聡さん。活動するフィールドが広く、加えて扱う楽器や音楽もさまざま。そんなマルチに活躍し続ける石渕さんが考える、「お酒と音楽」とは?

――よろしくお願いします。何でも、石渕さんは変わったお酒を嗜んでいるとお聞きしたのですが?

石渕 聡(以下、石渕):よろしくお願いします。そうなんです、日本ではなかなか手に入らないんですけどスペイン・バレンシアではよく飲まれる「CASSALLA(カサージャ)」というお酒で。読み方も合っているか怪しいんですけどね。多分ウォッカとかそういう部類に入るのかな…アルコール度数も46%あるので結構強い。でも、甘みもあって香りも豊かですし美味しくて。

――このお酒はなぜ飲むようになったのでしょう?

石渕:バレンシアにアルヘメシという町があるんですが、そこで「聖母サルー祭」というお祭りが毎年9月に行われていて。小さい教会も大きい教会も一緒になって、マリアさまがお神輿みたいなのに担がれていて、町中で音楽が演奏されて。最後には50人くらいで8段くらいの大きなひとつの塔を作って、みたいな凄く盛り上がりを見せるお祭りなんですけど、そのお祭りに参加したときに出合ったんです。

▲バレンシアではよく飲まれるという「カサージャ」。「アブサン」を思わせる草の香りや甘い香りが特徴的

――それは観光で行かれたんですか?

石渕:それがですね、その人間で作る塔の周りで作っている最中ずっとドルサイナという笛みたいな楽器を吹いているんですけど、それに出ようと。そもそものスタートというかきっかけはトウキョウ・チリミテルスというバレンシアの民族音楽をやっている人たちがいるんですけど、僕も入れてください! って全然そんなお祭りを知らないときに頼んで一緒に演奏させてもらっていたんです。で、リーダーの人はスペインに普段は住んでいるんですけど、日本に帰ってきたときにそういう祭りがあるから皆で本場スペインで演奏しない? って言うわけですよ。それで面白いじゃんってなって。

――そのお祭りは部外者というか、その土地の人ではなくてもすぐに演奏させてもらえるんですか?

石渕:いや、演奏させてくれるわけないじゃん! って最初は皆言いましたよ。でもリーダーが「昔、演奏させてもらったことあるから全然大丈夫でしょ」みたいに言っていて。それじゃあ、練習して皆で行きましょうかってなったんです。もう、そこから猛練習で。何でかと言うと、人間の塔のそばでドルサイナを吹くには試験があるんです。でもまあ人間の塔の近くだけではなく、全部で10プログラムくらいあるからどこかで吹ければいいやという感じで。

▲ドルサイナを演奏する石渕さん

――ちゃんと試験があるんですね。

石渕:そう。現地の人たちもバンバン落ちる。でも僕ら5人で行ったんですけど、日本人じゃないですか。だから「せっかく日本から来たし、皆で吹いてください」って言ってくれて。テストが無意味なものになっちゃいました(笑)。それで無事演奏できたんですけど、夜遅くまでずっと祭りは続くんですけど、その間沿道ではこの「カサージャ」をヤカンに入れて、それを「ファンタレモン」で割ってひたすら皆で飲むんですよ。演奏者も見ている側も皆で、ワーッと。それがしんどいんですけど楽しくて。現地の方々からすると日本人は珍しいでしょうけど、それでも輪に入れてくれた気がしたし、とても良い思い出です。

――長時間演奏もして、しかも飲んでってまさしく“祭り”って感じですね。聞いているだけでもとても楽しそうなのが伝わってきます。

石渕:だから「カサージャ」は味ももちろん美味しいんだけど、エクスペリエンスの要素が強いですね。あのときの、バレンシアの人たちとの繋がりを飲むたびに思い出します。地酒みたいなもんですし。だから、代々木とか赤レンガとかでスペインにまつわる催事がやっていたりすると我々も伺ったりするのですが、そのときに「カサージャ」を持ち込んだりね。すると、バレンシアの人がたまにフラッと来て「何でこのお酒があるの?」と驚いて、そこから会話が広がったりする。やっぱりお酒もその土地の文化、みたいなものが乗っかっているんでしょうね。日本でも泡盛とか焼酎とか日本酒とかありますし。

――お酒を通じてさまざまな人と交流できるのもお酒自体の魅力ですよね。ところで、「カサージャ」を飲んでいるときはどのような音楽を聴かれますか?

石渕:やはりスペインの民族音楽をアテにちびちびとやることが多いですね。一口飲んで音楽に耳を傾けていると、本当にあのときの強烈な記憶が蘇ります。ドルサイナの音色、教会などの建物、人々の喧騒、そして「ファンタレモン」で割られたあの味…。今年もまた行って演奏しようと思っているので、感傷的になるというよりもワクワクしている気持ちのほうが強いですかね。

――ちなみに、民族音楽は何で聴いていますか?

石渕:普段はPCにiLoudのスピーカーを繋げて聴いています。あとはほかのメンバーが来たときに彼らが聴けるようにKanto Audioの「ORA」もありますよ。それぞれに直接音が向かうように、どちらもセットしています。ここで実際に音楽を制作してチェックすることも多いですからね。

▲上はiLoud、下はKanto Audio「ORA」

――なるほど、それぞれ座って聴く位置に合わせているわけですか。それにしても、さまざまな楽器がありますね。

石渕:そうでしょう? 楽器が好きなんですよ。もう、楽器オタクと言ってもいいくらいで、いろいろな国で気になる楽器があったらすぐに買っちゃう。似ている形のものは弾き方も似ていたりしますし、逆にパッと見て何をどう操作すれば良いのかわからないものもあります。バレンシアで演奏したドルサイナはトランペットとか管楽器の仲間ですが、吹いてみたいなって思ったのは音のパワーがすごかったから。圧力があるというか、耳にビリビリと来るくらい力強くて大きな音を奏でられる。世の中には本当にまだまだ知らない楽器ばかりだし、出合うたびに発見と驚きがある。今はお囃子も練習しているし、やっぱり音楽や楽器が好きなんです。

――先程、スピーカーの話が出ましたが制作しているときに音楽を流しながら飲むことも?

石渕:仕事が終わってから飲むって感じかな。1年くらい前からバンド(それにゅい)を始めて、毎月配信しているんです。毎月新曲を出し続けていて。3か月に1回くらい3曲レコーディングしてっていう感じなんですけど、レコーディングが終わって出来上がったラフミックスを皆で聴いているじゃないですか、お酒を飲みながら。それで気付いたら1本空いていて、しかも飲みすぎて寝ちゃっていた、とか。もちろん、レコーディング中とかは仕事モードであーでもないこーでもないって意見を言い合うんですけど、お酒を飲みながら聴いていると、意外なところで「あれ? これってもっとシンプルでいいじゃん」とかなるわけですよ。脳が良い具合にリセットできるというか。多分、文章を書くのも似たようなところがあると思うんですよね。

▲イボドラムを叩く石渕さん。トランクの中にもいろいろな国の楽器がぎっしり

――お酒が脳をリセットする装置なんですね。

石渕:そう、次の日メンバーに「あそこをこうしたほうが良い」とかって話すとやっぱりそいつも飲みながら聴いているから「俺もそう思った!」とかなる(笑)。要するに、聞き手の耳になっているんだと思います。お酒は音楽を楽しむ“お供”としての役割もあるけど、我々にとっては言わばオンの状態からリセットしてくれる装置の側面もある。だから、お酒も音楽もやめられないというよりはワンセット。どちらも楽しい、なくてはならないものです。

>> 石渕 聡(コンドルズ)

■誰かが流した音楽がお酒のアテとして心地良かったりする

▲小宮山雄飛/2ピースPOPグループ・ホフディランのVo.&Key.担当。渋谷区観光大使、美味しい渋谷区プロジェクトCEO(Chief Eat Officer)を務める。音楽活動に留まらず、テレビやラジオへの出演、コラム執筆などその活躍は多岐にわたる。お酒や食に造詣が深く、Webサイト「食楽」でも「小宮山雄飛 蕎麦呑みの名店」を連載中。

1996年に「スマイル」でデビューし、FUJI ROCK FESTIVALへの出演や日本武道館でのワンマンライブを成功させるなど日本のPOPシーンを牽引してきたホフディランのボーカル&キーボード担当、小宮山雄飛さん。グルメサイト「食楽」でも連載を持つほどお酒と食を愛する小宮山さんにとって「お酒」と「音楽」はどのようなモノなのか、インタビューを実施しました。

――今回、渋谷にある「THE MUSIC BAR CAVE SHIBUYA」を取材場所に選ばれたわけですが、よく来られるのですか?

小宮山雄飛(以下、小宮山):はい、ひとりでフラッと来ることもありますし、誰かと一緒に音楽とお酒を楽しむために来ることも。いろいろなお酒が味わえますし、何より音響設備がすごく良いんです。

――こちらではいつも何を飲まれますか?

小宮山:ウイスキーのハイボールをよく頼みます。家ではもっぱら焼酎なんですが、こういった“洋”のお店では“洋”のものを頼むようにしていて。

――それは空間ごと楽しみたいというお気持ちもあったり?

小宮山:それももちろんありますけど、家だと何も気にせず焼酎をガンガン飲んでしまっていますが、誰かといたり、あるいはひとりでお店に入って飲むとなると良い意味で少し緊張するというか。その適度な緊張がある場所だとベロベロに酔わないようにしますし、ちょびちょびと嗜む感じにしています。それこそ知り合いと食事に行ってワインとかを飲むときもある程度自制して、ゆっくりと飲むようにしていますし。ウイスキー・ハイボールも同じで、その緊張感を楽しみながら飲んでいるという感じですね。

――確かに家と出先では飲み方は変わってきますよね。小宮山さんがこの「THE MUSIC BAR CAVE SHIBUYA」を好きな理由はどういうところですか?

小宮山:やはり家とは全然違うというか、自分が選んでいない曲や知らない音楽を流してくれるじゃないですか。それが1番面白いですね。基本的に家で毎日飲んでいるんですけど、そうなるといつも同じ音楽を聴いたり、YouTubeで好きなアーティストのライブを観たりする。それはそれでいつもの感じなので安心できるところはあるんですけど、ふと「何回同じ曲を聴いたり、同じライブを観たりしているんだろう」と我に返るときがあって。でも、外は違う。ミュージシャンは全員そうだと思いますけど、BGMを結構気にして聴いているんですよ。それで「あ、この曲の次はこの曲を流すんだ」とか「これ、1990年代のオルタナのチャンネルになっているな」とか、そのお店の人が選んでいる曲を聴くのが楽しいんです。

▲「THE MUSIC BAR CAVE SHIBUYA」。壁にはびっしりとレコードが並ぶ

――ご自身とは違う発想を楽しむと言いますか。

小宮山:そうなんです。自分が思いもしない曲の繋がりや、逆に「こういう曲がかかるといいな」と思っていたらかかったり。そういうシチュエーション含めて外でお酒と一緒に音楽を聴くのは楽しさがありますね。

――ちなみに、今日はご自宅で使用されているオーディオもお持ちだとか。

小宮山:はい。「BALMUDA The Speaker」を普段は使っています。ランプも兼ねていて、音楽に合わせて光り方が変わったり。4、5年くらい前に買ったのかな? 家で昼間から飲むときによく使うんですけど、ベランダに持ち込んで近所迷惑にならない程度の音量で音楽を流しながら飲むのが好きで。室内で自分ひとり爆音で楽しむというよりも、外に向かって音を出しているのが好きなんですよね。世界と繋がっていると言いますか。

▲「BALMUDA The Speaker」とウイスキー・ハイボール

――その楽しみ方をするようになったきっかけってあったりしますか?

小宮山:実はふたつ思い出があって。ひとつめは、アメリカのサンタモニカに行ったとき。あちらに住んでいる方々って結構そういう楽しみ方をしているんですよね。滞在していたところはビーチが近くにあるすごく心地良いところだったんですけど、どこかのベランダからドアーズのものすごく暗い曲が流れていたんです。それが不思議ととても気持ちが良かった。やっぱりサンタモニカの人たちってベランダから音楽を流したりするんだなと興味深さも相まって、何だか憧れにも似た気持ちを抱きましたね。

――ちょっと古めの映画とかでもそういうシーン、ありますよね。

小宮山:そう、それがかっこいいなと。あとひとつは日本でのエピソード。前に住んでいた家がマンションの3階だったんですけど、知り合いのデザイナーが2階に住んでいて。それで、ぼくはミュージシャンのプリンスがとても好きなんですけど、彼が亡くなった日にものすごい悲しみに浸っていたんですよ、家で。そしたら、下の階からプリンスの音楽が聴こえてきて。そのデザイナーもプリンスが好きだったから流していたみたいなんですけど、その窓の外から流れてくるプリンスがすごくグッと来て。こういう繋がりって良いなと。上の家からとか隣の家から、何か音楽がうっすら流れてきて「この曲は何だろう?」と思って聴いて、「意外と隣の家の人、これ好きなんだ」とか「自分と音楽の趣味が同じだ」とか、そういうのを感じるって何だか素敵じゃないですか。

――音楽を通じて思いを共有するというか。繋がりですよね。

小宮山:そういう音楽を介した人との繋がりって良いですよね。もちろん、近所に迷惑になるような爆音で、とかって話ではなく。夕方とかお昼とか心地良い時間帯にお酒でも飲みながら好きな曲をかけて、街を歩く人や隣や上に住んでいる人が「ちょっといいな」と思ってもらえたら楽しいし嬉しいなと。夜は部屋で大人しくひとりで音楽を聴いていますけど、皆で音楽を分かち合うのも良いものです。

――小宮山さんは音楽も、そして人もお好きなんですね。ところで、ハイボールはなぜお好きなのでしょうか?

小宮山:基本的に濃い味のお酒や甘いお酒はあまり飲まないんです。となると、ウイスキーや焼酎のハイボールが甘くもないしスッキリしているし、味も濃くないですし。だからソーダやお茶で割ったりして飲むのが好みですね。日本酒をちびちびやる、というよりはゴクゴクも飲めるうえに甘くないハイボールが。

――そんなハイボールはどんな音楽を合わせますか?

小宮山:それこそ、さっき話しにも出たドアーズの「The End」とか。割と暗めの曲が実はお酒の場に合うと思っていて。別に飲んでいるときに暗くなろうと思って選んでいるわけではないですよ? 何と言うか、足し算・引き算の関係とでも言いましょうか。自分自身は明るく楽しむつもりなので、自分の気持ちをコントロールするために暗い音楽を流す感じですかね。盛り上がり過ぎないように。ワイワイとパーティソングを流して「イェーイ!」みたいなノリがあまり得意ではないので、本当は自分も騒ぎたいんですけどあえて暗い音楽で抑えています(笑)。お酒ってちょっとタガが外れるというか、開放的になるものなので。セーブさせるための音楽。

――それでは、お酒を飲んで普段の自分からガラッと変わることもあまりないんですね。

小宮山:ほとんどないですね。お酒を飲んでパーッと開放的になりたいというよりも、普段の生活の一部としてお酒と音楽があるので。そして、そのお酒と音楽のどちらも楽しみたいからいつも通りでいる、そんな感じです。

――なるほど。もう本当にお酒も音楽も小宮山さんの生活に根ざしているんですね。最後に、お酒と音楽のカップリングと言いますか、合わせるとどんな素敵な相乗効果が生まれると思いますか?

小宮山:うーん、それが僕にとってはその両方があるのが当たり前なんですよね(笑)。でも、最近ライブ会場で飲まない人って結構いるんです。僕はある程度飲めるようになったらライブ会場とか音楽がある場所ではお酒も一緒に楽しむんですけど、もっとその雰囲気ごと皆には楽しんでほしいって思います。それこそ、音楽があるのとないのとでは味も変わるじゃないですか。せっかくこの場所にいるんだから、両方を楽しもうよ? って。海外に比べると、特に日本人ってその楽しみ方がなかなか上手じゃないというか。もっとお酒も音楽も一緒に楽しんでほしいって本当に思います。最高な組み合わせですから。

>> 小宮山雄飛(ホフディラン)

■自宅で「お酒と音楽」を楽しむなら。編集部おすすめの“マリアージュ”

家で気軽にお酒と音楽を楽しみたいのであれば、やはりこだわりたいのはオーディオ機器。ここではそのカップリング例を紹介します。自分ひとり、気ままな趣味の音楽タイム。そしてその片手にはお酒。ちょっぴり贅沢で優雅なひとときを過ごしてみませんか?

■ クラシックな装いの高音質アンプと、ライチのように香る革新的な芋焼酎。音楽に身を委ねる夜

こだわりの高音質に身を任せながら、香り高い美酒をじっくり味わう。そんな贅沢な音楽体験ができるのも、誰にも邪魔されない自分だけの空間ならではの喜びです。レトロで温かみのあるアンプが奏でる豊潤なサウンドと、フルーティな芋焼酎が織りなす至高のひとときが、リビングを特別なリスニングルームへと変えてくれます。

濵田酒造
「本格芋焼酎 だいやめ~DAIYAME~」(900ml 1408円)

独自の“香熟芋”を使用した本格芋焼酎。グラスに注いでも芋焼酎特有の匂いやクセが全くなく、まるでライチのような華やかでフルーティな香りが広がります。芋焼酎の概念を覆すようなすっきりと飲みやすい味わいで、4対6のソーダ割りにするのが特におすすめ。初心者でもスイッと飲める入門編にぴったりの一杯が、心地良い音楽の時間をより豊かに演出してくれます。

>> 濵田酒造「本格芋焼酎 だいやめ~DAIYAME~」

JBL
「SA550 Classic」(25万3000円)

1960年代の名機にインスパイアされた、ウォールナット突板仕上げのレトロなデザインが目を引くアンプです。クラシックな外観ながら内部は最先端で、最新のBluetooth技術や高解像度DACを搭載しています。スマートフォンとペアリングするだけで、いつもの音楽サービスから完璧な高音質サウンドを手軽に楽しめます。温かみのある佇まいと極上の音楽性が、リビングを特別なリスニングルームへと変貌させるはず。

>> JBL「SA550 Classic」

■ 空間を彩る迫力のサウンドと、爽快な南国チューハイ。音楽に身を委ねる至福タイム

大迫力のサウンドを全身で浴びながら爽快なお酒で気分をリフレッシュできるのは、気兼ねない自宅だからこそ叶う過ごし方です。お気に入りのビートを響かせるスピーカーと、南国気分のチューハイが織りなす心躍る体験。こだわりのオーディオと美味しいお酒が、いつもの部屋を最高のエンタメ空間に変えてくれるでしょう。

オリオンビール
「WATTA トロピカルファジーネーブル」(実勢価格:190円前後)

沖縄県産のタンカンとピーチがブレンドされた数量限定のチューハイ。口に含むとまず柑橘系の爽やかな香りが広がり、続いてネクターのような桃の甘みが追ってくる絶妙なバランスが特徴です。甘すぎずくどさもないため、フルーティな味わいをしっかりと感じられつつ、後味は驚くほどさっぱりとしています。明るくアップテンポな音楽をかけながら、気心知れた友人たちと心地良く過ごすひとときにうってつけの一杯です。夜はもちろん、休日の昼下がりからリラックスして味わうのにもおすすめ。

>> オリオンビール「WATTA」

AUREX(オーレックス)
「AX-WSP60」(実勢価格:2万680円)

自宅での音楽体験を大迫力へと変貌させるのが、最大出力60Wのパワフルなサウンドを誇るこちらのワイヤレススピーカー。低音を強調する「BASS」ボタンを搭載しており、お気に入りの曲のビートをしっかりと響かせられます。さらに、場の雰囲気を彩る7色のLEDライトや、時間を忘れて楽しめる最大約10時間のバッテリー再生機能も完備。日常を忘れて音楽に身を委ね、心身を解き放つ極上のリラックス空間を作り出してくれます。

>> オーレックス「AX-WSP60」

■たまにはラムを片手に、レコードをゆっくりと楽しむ夜があっても良い

サブスク配信などが盛んになり、音楽はとても気軽に楽しめるコンテンツになりました。しかし、夜などのひとり時間にラムを呷る、そんなシーンであればアナログなルックスのレコードプレーヤのほうがサマになります。スローなジャズなんかを聴きながら、香しいラムをロックで。何だかそれだけで上質な時間を過ごせそうではありませんか?

バカルディ
「バカルディ スペリオール」(750ml 実勢価格:1800円前後)

ラムと聞くと真っ先に思い浮かぶのがバカルディ、そう思う人も多いのではないでしょうか? 王道とも言うべきそのスッキリと清涼感のある味わいとほんのりとフルーティでバランスの良い香りは、誰もが一度は味わったことがあるはず。クセも少ないためそのままストレートやロックで飲むのも良いですし、これからの時季であればモヒートなどさっぱりとしたカクテルで楽しむのもおすすめ。もちろん、音楽のお供としても主張過ぎずにそっと寄り添ってくれます。

>> バカルディ「バカルディ スペリオール」

オーディオテクニカ
「AT-LP120XBT-USB」(5万5000円)

音楽を趣味として楽しむのであれば、一度は持ちたいレコードプレーヤー。「AT-LP120XBT-USB」はアナログレコードをそのまま流すのはもちろん、USB経由でレコード音源をデジタルデータに変換して持ち運べるスグレモノ。さらに、Bluetooth接続もできるためヘッドホンやイヤホン、スピーカーと接続すれば違う部屋でもレコードの音源が楽しめます。ターゲットライトやストロボプラッターなどDJ用ターンテーブルとしても優秀です。

>> オーディオテクニカ

>> 特集【酒と泪と男とカルチャー】

<取材・文/山口健壱、手柴太一(GoodsPress Web編集部) 写真/坂下丈洋>

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