夏はもちろん、秋もますますウマいビール。しかしどうして、黒ビールとなると脇役扱いなのか。味の魅力が伝わってない? ならビール造りの張本人に聞こうじゃないの。改めて、秋の夜長は黒ビールで乾杯しませんか!
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▲キリン マスターブリュワー 田山智広さん。キリンのビール類や RTDなどの中味づくりを担う総責任者。その立場上、“味の番人”ともいわれる
「大昔は、黒っぽくないビールってなかったと思うのです」と田山さんは切り出した。
ビールの主原料である麦芽には焙燥が欠かせないが、その工程で機械による間接加熱ができるようになったのは、産業革命後。その前は直火だったため、乾燥させると必然的に黒っぽくなっていたはずという推察だ。
そもそも、今最も飲まれているクリアな黄金色の「ピルスナー」が生まれたのは19世紀。長いビール史のなかでは、黒や褐色がずっと主役だったのだ。ただ、推しのビールにキャスト交代が起きるほど、「ピルスナー」の美味しさは段違いだったのだろう。一方、黒ビールは脇役に…。やっぱり、ちょっとつらいような。
と はいえ黒ビールにも、独自の美味しさがある。特に焙煎された麦芽による甘香ばしさや、コク深い苦味は大きな魅力だ。そのうえで、シルキーな泡による至福の飲み口を体感できるのが、アイルランドの「ドラフトギネス」(実勢価格:355円前後)。
『ギネスブック』のルーツでもあり、商品自体も世界一飲まれている黒ビールのブランド(※「IWSR 2025」にもとづく販売数量)だ。
ホイップ状になる泡の秘密は、窒素を含んだ世界初のビアレシピにあり、缶の場合は封入されている球体「フローティング ウィジェット」に窒素が入っている。開栓すると圧力によってそのガスが放出され、一気に約300万もの微細な泡が生成される仕組みだ。飲めば濃密、だが味わいはすっきりしていてキレも爽快。
この飲みやすさも「ドラフトギネス」の魅力だが、実はアルコール度数が4.5%とやや低めであることもゴクゴク飲める理由なのだ。
▲これが元祖「一番搾り」黒生ビール。1998年発売
日本を代表する黒ビールといえば、キリンの名酒「キリン一番搾り」が誇る「キリン一番搾り <黒生>」(実勢価格:237円前後)。さかのぼれば、同ブランドが誕生した1990年以前から黒ビールは存在し、80年代には「キリン黒ビール」という商品が発売され「キリンシティ」では、その生ビールを提供していた。
こうしたDNAが「キリン一番搾り <黒生>」に受け継がれているが、「キリン一番搾り」ブランドでも一時期、上面発酵酵母によるどっしりとして華やかな「キリン一番搾り・スタウト」が発売されたことがあった。「スタウト」とは上面発酵黒ビールのいちスタイルを指すが、現在は下面発酵酵母によるすっきりした味にリファインされている。
▲1919年発売、1950年頃発売の「キリン黒ビール」と、1932年発売の「キリンスタウト」
そして、同社が東京と京都で運営するクラフトビアレストラン「スプリングバレーブルワリー」の名物黒ビールが「Afterdark」(ハーフ:700円~)だ。下面発酵酵母仕立ての爽快感をもちながら、乳糖による甘香ばしいコクが絶妙で、裏テーマは“黒ビールが苦手な人でも美味しく飲める黒ビール”。
▼黒ビールの個性を味わおう
▲左から、麦汁の贅沢なうまみを生かした「キリン一番搾り <黒生>」。超シルキーな泡も魅力の「ドラフトギネス」。乳糖の甘みがロースト香と調和した「スプリングバレーブルワリー」の代表的な黒ビール「Afterdark」
田山さん自身「ブラックコーヒーが苦手な人でも、砂糖を入れたら飲める。みたいな世界観」とはにかむ自信作だ。乳糖の甘みはスイーツとの相性もよく、同店ではケーキとのペアリングも積極的に推している。
では、黒ビール全体としてはどんな料理がよく合うのか。田山さんにフードペアリングのオススメを聞くと、カギは「ロースト」にあるとアドバイス。「黒ビールは麦を焙煎しているため、料理もローストされたものがより合うんです」とのこと。
例えば魚なら刺身より炙りが合うし、野菜も生や蒸しよりグリル。肉なら、炭火で仕上げた焼き鳥が最高ってな感じだ。また、飲み方としては「乾杯の1杯目もいいですが、お腹も落ち着いた2、3杯目からは黒ビールで趣向を変えるのもオススメですよ」とにっこり。
フードペアリングといえば、キリンビールが新たに始めた工場見学の特別ツアーも見逃せない。同社の工場見学は全国9カ所で実施されているが、今春からプレミアムな有料プラン「キリン一番搾りエクスペリエンスツアー」が新登場。
そこでは3種類の「キリン一番搾り」に合わせたフードが提供されるが、黒ビールには各地域の特色を活かしたスイーツをペアリング。「ほとんどの工場では、チョコやあんこ系など“黒いスイーツ”が選ばれています」とは田山さんの談だが、色を合わせる手法はフードペアリングの近道。参考にしてみよう。
▼黒ビールが「寅さん」なら、スイーツは「さくら」だよ
▲「特製焼きチョコレートケーキ」(800円)。2015年の開業時から「Afterdark」とのペアリングが絶賛されてきた傑作。チョコの濃厚なコクとビールの甘香ばしい風味がドンピシャで、フレークソルトもイイ
夏はビアガーデンも盛況だが、その多くで「ハーフ&ハーフ」が提供されている。これは基本的に「ピルスナー」と黒ビールをブレンドした飲み方であり、「ハーフ&ハーフなら飲む」という人も少なくないだろう。ならばぜひ、訪れていただきたいのが前述「キリンシティ」だ。
同店では全3種の「ハーフ&ハーフ」が用意され、なかでも「達人ブレンド」が人気。もちろん、ビール専門店ならではの「キリン一番搾り <黒生>」もご馳走レベルの美味しさだ。
▲「達人ブレンド」(レギュラー700円~)。「キリン一番搾り <黒生>」と「キリン ブラウマイスター」を合わせたコク深い一杯で、「キリンシティ」のブレンドビールでは人気No.1を誇る
▲バブル絶頂期1988年の意欲作「キリンハーフ&ハーフ」
いくつかトピックスを紹介したが、黒ビールの魅力をわかっていただけただろうか。「でも近所に売ってない」という声も聞こえてきそうだが、それを言っちゃあ、おしまいよ。シックでクールな黒モノとともに黒ビールも気に入っていただけたら、結構毛だらけ猫灰だらけである。
※2026年7月6日発売「GoodsPress」8・9月合併号「GoodsPress Premium」10-11ページの記事をもとに構成しています
<文/中山英明>
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- Original:https://www.goodspress.jp/features/746161/
- Source:GoodsPress Web
- Author:GoodsPress Web
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