なぜ、こんなにロレックスに惹かれるのか? 時計ライターが専門店を始めるほど惚れ込む、その魅力とは

腕時計の話をするうえで常に必ずと言っていいほど話題の中心として取り上げられるトップウォッチメーカーのひとつ、ロレックス。時計に興味がなかったとしても、その名前を聞いたことがないという人はいないのではないでしょうか。ただ、名前を知っているだけでなぜそこまで有名なのか、なぜここまで人々が追い求めているのか、不思議に思っている人もいるのでは? そこで今回はロレックスが人々を惹きつけ続ける、その理由を探っていきます。

■現行品もヴィンテージもどちらも人気沸騰中。時計通から愛されて止まないロレックス

腕時計は近年、市場全体として価格が右肩上がり。もちろん、為替相場や現代技術の発展など時代背景が大きな要因ではありますが、ロレックスの価格推移から市場全体の流れが語られるなど、ロレックスが腕時計の“ひとつの基準”となるほどに中心的存在として鎮座しています。そのうえ、現行の人気モデルはなかなか手に入らず、目当ての1本を求めて店舗を定期的に巡ることを“マラソン”と呼び、SNS等で情報交換が行われるほど熱を帯びています。

また、ロレックスについては二次市場も非常に活発で、ヴィンテージと呼ばれる1900年代半ばのモデルも求める人が後を絶えません。それほどまで時計通をはじめ人々を魅了するブランドなのです。

■ロレックス好きが高じて専門店を開くまでに。通に聞く、ロレックスの魅力とは?

今回ロレックスについて話を伺ったのは、編集・ライター業を経てヴィンテージロレックスを中心に扱う専門店を開いた異色の経歴を持つ日比崇幸さん。趣味で集め始めたロレックス収集だったはずが、いつの間にか販売店を営むほどのめり込んでいった日比さんに、ロレックスに惹かれたきっかけから現在の市場動向や購買傾向まで広く聞きました。

▼今回、ロレックスについて教えてくれたのは…

日比崇幸/時計雑誌をはじめとする男性向け雑誌や書籍、広告等の編集・ライター業と並行し、趣味でヴィンテージロレックスを集めるように。約10年前に一念発起し、ヴィンテージロレックスを主に扱う腕時計専門店「クラウン マニアックス トウキョウ」を表参道にオープン。編集者として世界の時計に精通し、ロレックスについても現行品からヴィンテージまで広い知識を持つ。なお、ロレックスの好きなモデルは「サブマリーナー」。

▼どうしてロレックスに人々は惹かれるのか

――はじめに、ロレックスの魅力を改めて教えていただけますか?

日比崇幸さん(以下、日比):大きな魅力としては、まず時計そのものがかっこいいからでしょうね。腕時計は嗜好品としての要素が強く、特に男性ファンが多いアイテムです。それだけに、男心をくすぐるデザインは人気を得るうえでとても重要だと思います。その点、ロレックスはどのモデルも男性に刺さりやすいデザインだということが最初に挙げられるのではないでしょうか。

――デザインであればほかのブランドでも似たものがあったりもしますが…。

日比:そうですね、確かに例えば「サブ(=サブマリーナー)」なんかはダイバーズウォッチの王道の見た目ですしね。ただ、同じようなデザインの中でなぜロレックスが選ばれるかというと、やはりロレックスというブランドへの強い憧れが世の中に浸透しているからだと思います。

▼「憧れのロレックス」と人々に思われるようになった理由とは?

――確かに憧れの象徴として認知している人は多いですよね。なぜこのようなイメージが付いたのでしょうか?

日比:正直、“運”の部分が大きいとは思います。ロレックスって今でこそトップの高級時計というイメージがありますが、元々は高級時計として打ち出してはいないんですよね。あくまで時計を誠実に作り続けてきて歴史を重ねてきた結果、ここまで上り詰めたと捉えています。

――“運”というのは?

日比:“憧れ”というのは腕時計の作りの良さだったり、デザイン性だったり、それらだけではなかなか得難いものだと思います。ロレックスは実直に時計作りを続ける中で、例えば「サブマリーナー」は映画『007』でショーン・コネリーが、「デイトナ」は『レーサー』でポール・ニューマンが、「エクスプローラー I」はドラマで木村拓哉さんが着用するなど、それぞれの時代を象徴する憧れの存在と結び付いてきました。そして、彼らや作品への強い憧れが、ロレックスそのものへの憧れにも繋がっていった。そう考えると、ロレックスは時代ごとに運命的ともいえる出会いを重ねてきたんですよね。

▲「デイトナ」“ポール・ニューマン”モデル。今では非常に希少な逸品

――日比さんもそのような憧れはありました?

日比:そうですね。それこそ、キムタクは世代ど真ん中ですし(笑)。僕らの時代は今のようにSNSはなく、ファッションは映画やドラマ、雑誌から学んでいて、俳優の格好に憧れたり、真似をしたりする文化がありました。身近なところだと地元の先輩だったり、服屋のスタッフさんだったり。日本において、特に同じ世代(4〜50代)はそうした中でロレックスを知った人も多かったのではないでしょうか。

――我々もそうです(笑)。

日比:そうでしょう?(笑) なので、ファッションアイテム的な流れというか。憧れの著名人が着用して、それを感度の高い人たちがいち早く注目して、やがて一般へと広がっていく。そして、その流れが次の世代へと引き継がれていく。そんなふうに男たちの憧れが紡がれていったこともロレックスがいつの時代も憧れの存在であり続ける理由なのかもしれません。

▼ロレックスは“プロフェッショナルツール”として常に進化を続けている

――ロレックスの時計自体の魅力としては、どのように考えていますか?

日比:プロダクトとして進化をし続けていることが1番の魅力でしょうね。僕は1950年代頃のヴィンテージロレックスを収集していましたが、当時のモデルからも“プロフェッショナルツール”として腕時計を作る、というコンセプトを感じます。実に質実剛健なメーカーで、時代に合わせて技術をアップデートしながら素材や機能を着実に進化させてきました。今は価格の高騰や資産としての価値に注目されがちですが、ロレックス自体にはモノ作りにおいて骨太で実直な、進化を続けようという意気込みを感じるんですよね。

――そうすると現行が頂点という認識になりますが、過去のモデルも人気なのはどうしてなのでしょうか?

日比:僕がヴィンテージロレックスに魅せられたのは、ロレックスの歴史や変遷を辿れるからでしょうね。元々古着が好きだったので時計も同じオーラを感じると言いますか、古いモノについての魅力を感じるタイプだったので。例えばライター業で海外に取材に行ったときも、空いている時間は趣味であるヴィンテージウォッチをずっと探したりしていました。それがいつの間にか海外サイトで収集するほどまでのめり込んで、結果、ライター業を辞めて趣味のロレックスが仕事になるという(笑)。

▼この10年間で大きく変わっていったロレックス市場

▲ショップに資料として置かれる、古くからのロレックスの雑誌。各年代によって掲載されるアイテムも異なるため、趣味の本としてだけでなく時計の買い付け時の参考にもなるそう

――約10年にわたってショップを営んできて、ロレックスはどのように変わってきたと感じますか?

日比:この10年で大きく変わったのは、やはり価格面でしょうね。純粋に為替だけでも10年前は1ドル90円台だったので、1.5倍以上の価格差があります。それに加えて、モノとしても進化をしているので、素材の高騰や技術の革新によって大きく価格が上がっていったのは自然な流れとも言えます。人によっては「ロレックスが時計の市場価値を押し上げている」と言っていたりしますが、それはロレックスが市場シェアの3割強を占めるだけに、その動向が意図せず世界の時計市場全体の流れを作ることに繋がっただけではないか、とも思います。

――ヴィンテージロレックスの相場も上がっていると聞きます。

日比:そうですね。全体的に上がっていますが、特に「デイトナ」はダントツですね。人気も相場も10年でうんと上がりました。ただ、モデルによっては現行品よりも手に取りやすいモノもあったりします。それがヴィンテージの面白さでもあるんですよね。

――ヴィンテージに価値を見出す人というのはどのような人なのでしょうか?

日比:お客さんを見ていると「昔欲しかったモデルを探している人」「古いモノにロマンを感じる人」「コレクター」が多い印象です。古い時計の価値という意味では、デニムに近いのかもしれません。同じモデルでも年代によって個性が異なりますし、機能面では新しいモノと比べるとどうしても見劣りします。一方で、その時代ならではの歴史的背景や自分の生まれ年という特別感、新品では出せない経年変化など年月を重ねたからこそ生まれる魅力がある。そうしたデニムに感じるような魅力は、ヴィンテージロレックスにも通じるところがあると思います。

▼今後のロレックスはどのように変わっていくのか

――これから先、ロレックスやヴィンテージ市場はどのようになっていくのでしょうか?

日比:価格面においては現行も中古もすぐに大きく下がることはないと思います。値崩れしにくいこともロレックスの大きな価値ではありますよね。ただ、現在は資産価値としてロレックスを見る人が多いように感じます。高価なモノなので仕方のない部分はありますが、個人的にはそれが少し残念ですかね。やがて価格や供給量は安定するとは思うので、そうした状況も落ち着いていくのではないでしょうか。

一方、ヴィンテージについては現存する本数は限られていますし、時間が経つほどどうしても劣化は進みます。状態の良いモノが減っていくのはロレックスだけではありませんが、それでも古いモノに価値を見出して憧れる人がいる限りヴィンテージの価値も受け継がれていくのではないかと考えています。

▲珍しい一品、金無垢のロレックス純正ブレスレット。今では決して作れないその時代だけのディテールがヴィンテージウォッチの魅力だ

――資産としてだけ見るのではなく、もっと時計自体の魅力を感じてほしいと。

日比:まさしく。今は特に価格が先行してしまっていますが、先程も話した通り、ロレックスの本質的な良さは実直なモノ作りの姿勢にあると思っています。そして、時代や人を通して憧れが受け継がれ、それがブランドの魅力にもなっている。個人的には、単なる資産としてではなく、ファッションの一部だったり自分を形成するアイデンティティのひとつだったり、そんなふうにロレックスを捉える人が増えてほしいですね。僕自身もそうですし。

▼初めてロレックスを選ぶときのポイントは?

――ちなみに、初めてロレックスを手に取る人が見るべきポイントはありますか?

日比:まずは、何でも良いので実物に触れてみてほしいですね。僕もそうでしたが、ロレックスは実際に触れることで惹かれ、高揚感を覚える時計だと思っています。そのうえで欲しいと感じたら、次にモデル選びです。ライフスタイルや装い、個性、予算に合わせて選ぶという意味では、本当にファッションに近い感覚で選んでOK。やっぱり長く使うものですし、最終的にはいかに自分が気に入るかが1番でしょうね。

価格については、現行の人気モデルだとなかなか手が出しにくいですし、中古もヴィンテージとなると不安に思う人もいるかもしれません。そんな人には2000年代頃の比較的新しい中古のモデルがおすすめです。なかでも「オイスターパーペチュアル」や「デイトジャスト」辺りは価格的にも手に取りやすく、日本人にも合いやすくてシーンも選ばず使えます。もし、お財布に余裕があれば僕自身も魅せられた「サブマリーナー」の世界にもぜひ(笑)。

■ロレックス通が教える“超偏愛”ロレックス5本とは?

最後に日比さんが持つロレックスの中から選りすぐりの5本を紹介。特に好きだと話す「サブマリーナー」は年代別に3本という偏愛ぶり。それぞれの魅力や出合った背景などさまざまな話を聞いたので、これからロレックスを手に取りたい人はぜひ参考にしてみてください。

1. 滅多にお目にかかれない、初代「サブマリーナー」

ROLEX
「サブマリーナー(Ref.6200)」

1950年代に製作された、初代「サブマリーナー」のひとつとされるリファレンスナンバー6200モデル。初めてロレックスが200m防水を実現した1本と言われています。本モデルの大きな特徴は以降では見られることのない“3・6・9”のアラビア数字のインデックス。また、分厚めに仕上げられた武骨なケースや時代を感じさせるぷっくりとした風防、そして歴史が刻まれた経年変化などヴィンテージをたっぷりと堪能できる1本。ちなみに超希少です。

初代についてはやっぱり“「サブ」が好き”と言っている以上、いつかは手に入れたいと思っていました。なかでも“3・6・9”は貴重で。どうしても欲しいと思っていて見つけたときは心が踊りました。もし、あのとき出合っていなかったら、もしかしたら手元に残せなかったかもしれないと思うので、とても愛着のある1本ですね

2. 時代の境目を感じさせる100m防水モデル

ROLEX
「サブマリーナー(Ref.6536)」

1950年代後半から60年代前半に見られた、所謂「サブマリーナー」の第2世代。同時期に発売していたRef.6538が200m防水なのに対して、この6536は100m防水というのも珍しいポイント。フェイスに赤字で表記された防水表記もほかにはないディテールです。また、Ref.6538は映画『007』でショーン・コネリーが着用していたことで一気に有名となったモデルなだけに、6536は影に隠れた名作としてロレックス通に知られる1本です。

初代に比べるとリューズが少し小さく設計されていて、200m防水のRef.6538のケースを使いながら100m防水という少しあべこべな感じが面白くて。しかも、ケースの6538という文字を6536に書き直していたりしますし。この後、6536にも専用ケースができるんですけど、そんなモデルの変遷というかロレックスの時代の境目が感じられるモデルとして愛着がありますね

3. 個体差の味わいを知るヴィンテージらしい風合い

ROLEX
「サブマリーナー(Ref.5512)」

今回紹介してもらった「サブマリーナー」の中で最も新しいのがこちら。とは言え製造は1950年代後半から1970年代後半と言われています。初期のモデルの中では長く製造されていたモノなので、ヴィンテージでもほかの2本に比べると見つけやすいモデルでもあります。この時期のものは「サブマリーナー」で初めてリューズガードを付随させた頃で、現行モデルとほぼ変わらない、デザインベースとされている1本です。

モノ自体の珍しさはそこまでではないのですが、ダイヤルの変色の仕方が凄く気に入っている1本です。当時のダイヤルに施された塗料があまり良くなかったのか、手にしたときからもどんどん変色していって気付いたら金色のようになっていましたね。個体差や保存状態でこうなっていったのかなと思うと、経年変化の魅力が感じられて良いなと。山形のコレクターに、持っていた「エクスプローラー II」と交換してもらったのも思い出深いです

4. 「サブマリーナー」と双璧を成す人気作の初期モデル

ROLEX
「エクスプローラー I(Ref.6610)」

「サブマリーナー」と並んでロレックスの定番ウォッチとして人気の「エクスプローラー I」。その初期モデルと言われる1950年代の製造されていたリファレンスナンバー6350です。現代においても「エクスプローラー I」のアイコニックな意匠として受け継がれている“3・6・9”のインデックスは当時から健在。このモデルは12時のインデックスが正三角形(以降は細長い二等辺三角形)で、秒針にロリポップ針(先にキャンディが付いているようなデザインのモノ)が使用されているのが特徴。

ちょうど会社を立ち上げる前なので10年程前に出合ったモノで、香港のディーラーから「サブマリーナー」と交換して手に入れた一品。この年代だとラジウムダスト(夜行塗料が劣化して飛び散ったもの)による汚れが酷かったりするのですが、とても綺麗なので気に入りました。バブルバックから変遷していくセミバブルバックなのも特徴で、当時にしか見られないようなディテールも感じられて、「エクスプローラー I」はこれがあればいいかな、と満足できる1本です

5. 色褪せたカラーが美しい名作パイロットウォッチ

ROLEX
「GMTマスター(Ref.1675)」

パン・アメリカン航空の国際線パイロットからのリクエストによって開発された「GMTマスター」は、ベゼルに表示された24時間計とGMT機能が特徴のパイロットウォッチです。プロフェッショナルツールを追い求めるロレックスの本質を肌で感じられるうえ、スポーティなルックスは「サブマリーナー」と似ていながらも“海と空”という確かな違いを味わえ、男ゴコロに刺さる逸品として今もなお君臨し続けています。

レファレンスナンバー1675の初期モデルですね。確か1963年か64年製だったと思います。ベゼルの褪せ方もいい具合になってきていて、それでいて文字盤は均一に残っているそのコントラストが好きです。「サブ」と似ていると良く言われますが、またちょっと違うイメージを演出してくれますよね。ただ、大きさや外観は確かに近い部分もあるので、「サブ」好きの僕がつい手に取ってしまうのも仕方がないかなと(笑)

▼初めてだったらこんなロレックスもおすすめ

ROLEX
「オイスターパーペチュアル(Ref.1500)」(53万9000円)

ロレックスのベーシックモデルである「オイスターパーペチュアル」。シンプルなルックスと小ぶりなケースサイズ、豊富なバリエーションで老若男女から長く愛され続けるロングセラーモデルです。日比さんのおすすめは1960〜80年代に製造されたRef.1500のブラックカラーだそう。

この時期の「オイパペ(オイスターパーペチュアル」は34mmと小ぶりなんです。トレンド的に見ても今どきですし、大人の男性がさりげなく着けてもちょうど良い、ファッション小物としてもおすすめしたい1本ですね。価格もほかのモデルと比べると手に取りやすいですし、ロレックスを初めて着けたいという人にもおすすめです

「クラウン マニアックス トウキョウ」
住:東京都港区南青山5-17-13
営:月~木アポイント制、金~日13:00~19:00
休:不定休

>> クラウン マニアックス トウキョウ

>> 【特集】個性を放つ1本がここに。腕時計は“語る”

<構成/手柴太一(GoodsPress Web) 取材・文/小林大甫 写真/坂下丈洋>

 

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