1998年、スタートアップのIllumina(イルミナ)は、遺伝物質の特定とマッピングのコストを削減する技術を開発し、ライフサイエンス業界に革命を起こした。
それから20年少し経った今、Mammoth Biosciences(マンモスバイオサイエンス)が遺伝子編集ツールで同じことを目指している。
同社は4500万ドル(約49億円)を調達した。CRISPR(クリスパー)として知られる遺伝子編集酵素の発見に関して先駆的な業績を残したJennifer Doudna(ジェニファー・ドウドナ)氏が共同で創業した同社は、病気を発見できるだけでなく、遺伝物質をより正確に編集するツールを世に出そうとしている。
ドウドナ氏が発見し、Broad Institute(ブロード研究所)が臨床応用のために開発した最初のCRISPR酵素、Cas9の発明と所有権をめぐる特許紛争のような泥沼の事態を避けるため、Manmmothは他の多くのスタートアップ同様、より幅広い特性を持つ新しい酵素の発見を試みている。
「会社設立当初から、診断や編集のための新しい酵素に専念してきた」とMammoth Biosciencesの共同創業者兼最高経営責任者であるTrevor Martin(トレバー・マーティン)氏は述べた。
同社は主にCas14酵素を売り込んでいる。Cas14の多様なDNA配列を狙う能力、高い忠実度、小さなサイズが、プログラム可能な生物学の新しい可能性を開くと同社は主張する。Cas14のそうした特性が、酵素による編集が引き起こす予期せぬ副作用を抑える。Cas9では副作用が課題だった。
「あらゆるケースでベストとなるタンパク質があるわけではない」とマーティン氏は言う。「当社で開発している一つ一つの製品に関しては、幅広いツールボックスがある」。
Cas14酵素は生体内で遺伝子編集を行うことができるため、実験や治療法開発にかかる時間を短縮できる可能性がある。
「20年後にCRISPRと『Cas132013』を使った酵素が承認される頃には、人々はこの特許の戦いを振り返り、『ずいぶんと金の無駄遣いをしたものだ』と思うことだろう」とニューヨーク法律大学院の特許法学者であるJacob Sherkow(ジェイコブ・シェルコウ) 氏は、2018年にWiredに語った。
すでに、英国ケンブリッジを拠点として遺伝子編集技術を開発するHorizon Discoveryは、Mammoth Bioscienceが開発した新しいツールを利用して、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株編集用の新しいCRISPRツールの開発に取り掛かっている。この提携は、Mammothが新しいCas14酵素ラインの商業化と生物工学における役割についてどう考えているかを示す例だ。
「CRISPRタンパク質の完全なツールボックスが必要になる」とマーティン氏は言う。「そうしたツールボックスがあれば、ソフトウェアやコンピューターとやり取りするのと同じことが、生体とも可能になる。第一原理から、企業はプログラムに従って生体に修正を施して病気を治したり、病気のリスクを減らしたりするようになる。それは一種のターニングポイントになるはずだ」。
そのビジョン達成に向け、Mammothはライフサイエンス業界最高の人材を獲得した。Casebia(BayerとCRISPR Therapeuticsの合弁会社)の共同創業者で、Mammothに最高事業責任者として加わったPeter Nell(ピーター・ネル)氏、SynthegoとBio-Radの元経営幹部で、最高執行責任者として入社したTed Tisch(テッド・ティッシュ)氏などだ。
今回の4500万ドル(約49億円)の調達ラウンドはDecheng Capitalがリードし、Mayfield、NFX、Verily(Alphabetの子会社)、Brook Byersなどの投資会社が参加した。Decheng Capitalはこれまで7000万ドル(約76億円)以上の資金をMammothにもたらした。
「CRISPRで臨床開発中の製品は十数個ある」とMayfieldのパートナーであるUrsheet Parikh(アーシート・パリク)氏は言う。「おそらくその数はMammothなしでも5〜10は増えるが、Mammothが加われば1〜2桁増える」。
パリク氏にとって、MammothはCRISPR開発ツールの中でも最高の位置にいる。同社は、顧客が遺伝子編集による製品開発のためにライセンス使用できるプラットフォーム全体を構築しているからだ。
パリク氏の考え方こうだ。「この技術が様々な応用を後押しできるなら、基本的にはそれらが市場に出回るようにしたい。物事がそう運ぶなら『アプリストア』を始める」。
「Illuminaと似たビジネスだ」とパリク氏は言う。「ゲノムに関するイノベーションに関わる人なら誰でもシーケンシングを行いたいから、Illuminaのシーケンサーが必要だ。では、編集したい場合はどうか。当社のプラットフォームが適切な編集ツールへのアクセスを可能にする」。
画像クレジット:Bryce Durbin
[原文へ]
(翻訳:Mizoguchi)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/02/02/2020-01-30-mammoth-biosciences-aims-to-be-illumina-for-the-gene-editing-generation/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Jonathan Shieber
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