目に優しい「電子ペーパー」が大きく進化!カラー画面スマホや2画面ノートPCが登場

スマホやノートPCのディスプレイに使われている液晶や有機ELは長時間見ていると目が疲れてしまう。最近はブルーライトカット機能を搭載したディスプレイも登場しているが、そもそも目が疲れないディスプレイもあるのだ。それが電子ペーパーである。今まではモノクロ表示しかできなかった電子ペーパーもついに小型・カラー化され、スマホへの搭載が始まろうとしている。

世界初のカラー電子ペーパースマホ
ディスプレイで差別化を図るハイセンス

一見すると普通のスマホだが、長時間ディスプレイを見ていても疲れない。そんな夢のようなスマホを開発したのが中国のハイセンスだ。ディスプレイはもちろんカラー表示されている。ところがそのディスプレイには電子ペーパーが使われているのだ。電子ペーパーと言えばアマゾンのKindleに代表される、モノクロ画面の電子ブックリーダーが有名だろう。消費電力が少なく、本物の紙の上に印字したような文字表示の出来る電子ペーパーはブックリーダーには最適なディスプレイだ。しかしモノクロ表示のため写真やWEBページを見るのには適していない。画面の書き換え速度も遅いため、スマホとして使うのは難しいのだ。

しかしハイセンスはその電子ペーパーにカラーフィルターを搭載したカラー電子ペーパーを採用し、普通のスマホのように使えるカラー画面の端末を開発したのである。カラーの電子ペーパーは過去に4色表示の電子ブックリーダーがロシアあたりで出ていたことがあった。またスマートウォッチの画面に採用されたこともある。だがハイセンスのカラー電子ペーパーはそれらに比べて表示できる色数が多く、スマホに使える大型サイズのものを採用しているのだ。

普通のスマホに見えるハイセンスのカラー電子ペーパースマホ。

電子ペーパーはディスプレイそのものは発色せず、紙と同様に光が当たることで目で見ることができる。そのためカラー電子ペーパースマホも色がついていとはいえ全体的な色合いは暗めだ。また写真の表示は細かい表現が難しく、カラーとはいえ液晶や有機ELとはその表現力はかなり異なる。動画を見るのも現時点ではちょっと難しい。

だがコミックやイラストの表示なら十分な表現力を持つ。ハイセンスが世界で初めてこの端末を公開したCES 2020では子供向けの教育アプリが表示のデモとして使われた。目に優しいことからカラー電子ペーパーと教育アプリの組み合わせは最適と言えるだろう。しかもゲームや動画視聴には適していないため、子供が親の目を盗んでスマホで遊んでしまうことも防げる。教育分野に特化すれば学校からの大量発注も見込めるなど、カラー電子ペーパースマホは意外と需要があるかもしれない。

教育アプリのイラストなどの表示に適している。

ハイセンスはTVや家電メーカーとしても有名で、ワールドカップサッカーのスポンサーになるなど止まらぬ勢いで新興国を中心に数多くの製品を展開している。そんなハインセンスもスマホをいくつか出しているが、中国以外ではまだまだマイナーな存在だ。家電の勢いそのままにハイスペックなスマホで勝負をかけたいところだが、世界を見ると大手スマホメーカーがシェアを寡占しておりハイセンスの入り込む余地は少ないのが実情だ。

新しいビジネスモデルも期待できる。

しかしカラー電子ペーパースマホなら教育向けのスマホという新しい市場を自ら開拓することができる。教育アプリとのバンドル販売、学習データの取得や解析といったサービス展開も可能になるだろう。他社がやらない製品を出すことで、新たなビジネスモデルの構築が期待できる。電子コミックのサブスクリプションサービスとの組み合わせなど、応用展開に期待したいものだ。

モノクロ画面に特化した
Onyxの電子ペーパースマホ

CES 2020ではほかの会社も電子ペーパー搭載スマホを出していた。すでに多数の電子ペーパータブレットを出しているOnyxだ。Onyxの電子ペーパースマホはモノクロディスプレイであり、Kindleのように電子ブックリーダーとしての使い方が主な用途となる。

実はモノクロ電子ペーパーを搭載したスマホはこれまでに何社かが製品化している。しかしそのほとんどは片側がカラー液晶か有機EL、もう片側がモノクロ電子ペーパーという表裏2画面スマホだ。前述のハイセンスもここ数年毎年のように2画面スマホを出している。2019年9月には電子ペーパーのみを搭載したスマホ「A5」もリリースしたが、スマホとしての性能は低い。

Onyxのモノクロ電子ペーパースマホ。

ではOnyxの製品はハイセンスのA5とどう違のだろうか?まずはディスプレイのコントラストを4段階に変えることができる。モノクロの電子ペーパーは濃淡の表現は難しく、写真などの表示は不得意だ。電子書籍の挿絵として写真が入っていると、きれいに表示できないのである。しかしOnyxはこれまで長年の電子ペーパータブレットの経験がある。Onyxのタブレットはディスプレイの書き換えモードを4種類から切り替えできるため、WEBページを高速に表示したり、写真をグレースケールで判別できるように表示することもできるのだ。

表示するコンテンツごとに最適な画面モード設定ができる。

Onyxの電子ペーパースマートフォンにも同じ4つの書き換えモードが搭載されている。「ノーマル」「スピード」「A2」「X」という4つのモードを指先で軽快に切り替えていけば、電子ブックでもWEBページでも写真でも、あるいは地図や動画の表示を一番見やすい状態で表示できるのである。ここまで微調整できる電子ペーパー搭載スマホは他にはない。

電子ブックリーダーとちょっとしたSNSの利用、なんて使い方もよさそうだ。

しかしタブレットならば「スマホのお供」としてもう1台買う人もいるだろうが、モノクロ画面だけのスマホを買う人はどれくらいいるのだろうか?Onyxの電子ペーパースマホはまだ詳細なスペックは決まっていないものの、触った限りでは動作は遅くなく軽快だった。写真や動画を楽しむのではなく、スマホはSNSのメッセージと電話ができれば十分、そんな消費者をターゲットにしているのかもしれない。

ノートPCにも電子ペーパー
いつでもかける電子メモを搭載

これまでタブレットに使われていた電子ペーパーが小型サイズになりスマホに搭載されるようになった一方で、今度はノートPCにも電子ペーパーが搭載されるようになろうとしている。レノボがCES 2020で発表した「ThinkBook Plus」はノートPCの天板、すなわちカラーディスプレイの裏側に大型の電子ペーパーを搭載している。つまりノートPCの背面に電子ペーパータブレットを埋め込んだようなスタイルとなっているのだ。

天板に電子ペーパーを搭載した「ThinkBook Plus」。開いた状態では普通のノートPCだ。

レノボはすでに2018年秋にノートPCのキーボードを廃止し、その代わり電子ペーパーを搭載してキーボードをソフトウェア的に表示できる「Yoga Book C930」を販売している。本体を開くとキーボードのある部分がフラットで、キーボードを表示するだけではなくこの部分をメモ帳のようにしてスタイラスペンで手書きできるという製品だった。しかしその後後継機が出てこなかったことからわかるように、この機構はあまり消費者受けしなかった。文字入力をしたいユーザーはキーボードを求めるだろうし、手書きをしたいのならばiPad Proなどのタブレットのほうが使いやすい。「キーボードも手書きパッドも」と欲張ったがために、どっちつかずの製品になってしまったのだろう。

キーボード部分を電子ペーパーにしたYoga Book C930。

ThinkBook Plusはその失敗を生かし、ノートPCとして使うときは開いてキーボードを利用でき、閉じたときだけ電子ペーパー画面を使う製品として出てきた。この電子ペーパー部分にWindowsの画面を出して操作することもできるそうだが、ThinkBook Plusの使いやすさはそこにあるのではない。ThinkBook Plusは閉じた状態で電子ペーパー画面をスタイラスペンでタップし、すぐさまメモを書くことができるのだ。つまりメモ帳として使えるのである。

ThinkBook Plusの天板はメモの書ける電子ペーパーなのだ。

しかも書いたメモは即座にOneNoteに保存される。アイディアを思いついた時にノートPCの画面を開く必要は無く、ほぼA4サイズの広い画面にペンで自由に書き込みができるのだ。似たようなことはもちろんスタイラスペンを持つスマホでもできるが、スマホの画面は大きいイラストを描く用途などには狭すぎる。

背面に思いついたことをどんどん書き込める。

カフェでノートPCで作業をしつつ、一服したいときはThinkBook Plusの画面を閉じてスマホに手をやり、何かしらアイディアが思いついたらその閉じた天板にペンで書き込む。こんな使い方が最も理想的だろうか。そもそもノートPCの天板にペタペタとステッカーを張っておくだなんて、スペースの無駄遣いなのではないだろうか。ThinBook PlusはノートPCを極限まで使い込める全く新しい製品なのである。

 


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