前から気になっているあのソファは、うちのリビングに合うのだろうか?
10年前のキャッチフレーズを引っ張り出せば、「そのためのアプリがあります」(There’ an app for that)。今なら山ほどそんなアプリがある。家具を部屋に置くとどんな風になるかをこの目で見ることは、拡張現実の典型的な利用例であり、専用アプリでそれをやっている小売店は少なくない。
しかし買いたいと思っても、例えばSafariであちこち見て回っている人に、その場でアプリをダウンロードさせるというのは大きな障壁だ。
そんなケースを想定して、Apple(アップル)は去る2018年に、「これを見ましょう、ただしあなたの部屋で!」のコンセプトをiOSとiPadOSに直接組み込む機能を導入した。
それはQuick Lookと呼ばれ、ユーザーはすでに持っているSafari、メッセージ、メールなどのアプリの中でインスタント/ワンタッチAR体験ができるようになる。小売店が3DモデルをPixarと共同開発したUSDZファイルフォーマットで提供すると、アップルがARKitを使ってレンダリングし、現実世界に重ねる。スケーリンク、ライティング、シャドウなどはすべてアップルが処理してくれる。
ただし、当初Quick Lookはほんとうにそれだけの見るためだけの機能だった。ARで商品を見ることはできるが、それがすべてだったのだ。そこで同社はコンセプトを少し拡大し、デベロッパーはカスタマイズ可能なボタンを載せられるようにした。たとえば購入ボタンなら、Apple Payのプロンプトをその場でポップアップさせる。ほかにも店がやりたいどんなシングルアクションとも結び付けられる。例えば、カスタマーサポートとのチャットを起動して、顧客が色の選択について質問する、あるいは、在庫のある実店舗を紹介して実際に見に行かせることなどができる。
さらに同社は、Quick Lookでスペーシャルオーディオをサポートして、iOS、iPadOSの最新デベロッパービルドで密かに公開し、3Dモデルから音を発せられるようになった。オモチャからピッピー、ブーブー音が聞こえたり、スピーカーから音楽が聞こえてくるなど、部屋にバーチャルに置かれたあらゆるものから音が聞こえてくる。部屋を歩き回ると音も合わせて変わっていく。
内蔵ARツール自身にユーザー体験を直接追加することは、小さなことに思えるかもしれないが、実はこれが興味深い。2018年にHouzzのCEOであるAdi Tatarko(アディ・タタルコ)氏は、彼らのARツールのユーザーは、購入する可能性が11倍高いと発言した。またBuild.comは、ARで商品をチェックアウトした人は返品率が22%低いことを発見した。
ARはモバイル購入プロセスにおいて明白な利点をもっている。しかし、これを活用するには簡単に使えて、素早く自然に動作しなければならない。手順に障壁があればあるほど、購入前に脱落する人が多くなるからだ。
アップルは昨年のWWDC(世界開発者会議)でこの機能のプレビューを公開した。そして今週、Home Depot(ホーム・デポ)、Wayfair(ウェイフェア)、Band & Olufsen(バングアンドオルフセン)、1-800-Flowersといった大手小売業者がそれぞれの実装を公開する。もし売上や返品の数字が改善されるという上の話が本当なら、今後は主要小売業者の間でかなり一般的になると私は予想する。それと同時に、ARもメインストリームへの大きな一歩を踏むことになる。
[原文へ]
(翻訳:Nob Takahashi / facebook )
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/02/14/2020-02-13-apple-expands-quick-look-to-let-retailers-sell-things-directly-in-augmented-reality/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Greg Kumparak
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