近年、自律移動ロボットの開発や導入が活発化し、国内でもモビリティ領域をはじめ、配送業、ホテル業などでもロボットを活用した実証実験が増えている。そんな中、本来動かないものを自律的に動かす実証実験が実施されるようだ。
株式会社電通国際情報サービス(ISID)のオープンイノベーションラボ(イノラボ)が実施する、高精度の自己位置推定技術を用いた自律移動ロボットの公開実証実験である。
「動く植栽」が創る展示会場
同実験は、株式会社グリーンディスプレイの協力を得て、イノラボ開発のロボットアプリケーションを搭載した「動く植栽」が展示会場内を自律的に移動するというものだ。2020年2月18日~21日まで、東京・新木場で開催される植栽展示会「CONNECT」にて公開実験を行う。
緑化アイテムによる空間演出が施された展示会場内は、展示エリアとセミナーエリアに分かれており、その境界を「動く植栽」が自律的に往来することで緩やかに区切り、自然に来場者の動線を確保できるかを試みるという。また、時間とともに変わる光に合わせて「動く植栽」が移動し、一定時間留まるといった演出も行うとのことだ。
このたび、植栽プランターに搭載したロボットアプリケーションは、不可視マーカーとタイヤの回転数によって自己位置を高精度に推定することができる。人の肉眼では見えないマーカーを用いて、赤外光を出力する専用装置に映しだされた画像を「動く植栽」に搭載したカメラが認識することで自己位置を推定。また、「動く植栽」に取り付けられたモーターセンサーで測定するタイヤの回転数から移動距離を把握することで、自己位置推定の精度をより高めている。
同実験では、「動く植栽」が人が往来する会場内で目的に応じて正確に移動・停止ができるか、会場の雰囲気を損なうことなく来場者の動線を確保できるか、さらに来場者に与える印象について検証するとのこと。
生活密着型のロボット開発
ISIDイノラボは、静物とサービスロボットの融合をテーマに、本来動かないものが自律的に動くことで、生活空間や景観に好ましい変化をもたらす可能性に着目した研究開発を進めている。
2019年7月に、ロボットアプリケーション作成を支援するオープンソースソフトウエアであるROSを活用した、家具を動かすシステムの開発プロジェクトを始動。複数のロボットを協調制御しやすいROS2を使用して、自動で整列する机と椅子のプロトタイプを開発し、多くのロボット専門家の意見をもらうべく、2019年9月24日・25日開催の「ROSCon JP 2019」に出展した。
204名、24社のスポンサーが参加し、各展示企業ブースでは先鋭的なロボットシステムが展示されるなか、同社の「動く家具」は「生活者が利用するロボット」という意味で、ほかの展示ロボットとは一線を画していたという。専門家からは「机や椅子は人がよく使う家具なので、危険がないように動かす必要がある」などの今後の課題や、「今までとは違った領域でのチャレンジである」などの賛同を得られたようだ。
同社は今後も、モノが動く価値を探求し、これまでになかったサービス領域を築くべく検討を進めていくとしている。
本来、動かないが動くと便利なものは意外とありそうだ。例えば気温や湿度、花粉などを測定する機能を搭載した窓が、室内を快適にあるいは清潔に保つよう自動で開閉してくれると、助かる人は少ないないのではないだろうか。
- Original:https://techable.jp/archives/117367
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口
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