健康はニオイでわかる時代へ!? 京セラ、AuBが便のニオイで腸内フローラの状態を判別するデバイスの開発を発表

あと3年くらいしたら「健康はニオイでわかる時代」になるかもしれません。

京セラと京都サンガF.C、サッカー元日本代表の鈴木啓太さんが社長を務めるAuBの3社は、人の健康維持やアスリートのパフォーマンス向上を目的とした共同研究契約を締結したと発表しました。2月25日に都内で開催された記者会見では、「便のニオイによって腸内フローラ(腸内環境)の状態がわかる」デバイスとシステムを開発していることが明かされています。

便のニオイを測定してスマホで健康管理

開発中のデバイスとシステムは「便のニオイを計測して腸の状態を把握する」ことで健康管理に繋げます。使い方は簡単です。家のトイレにデバイスを設置してスマホアプリをダウンロードするだけ。普段の生活と変わらず、トイレに行って便をするだけで腸内の状態がわかるようになります。

スマホアプリでは、栄養状態、太りやすさ、免疫力、ストレス負荷などがパラメーターで表示されます。「ビジネスパーソンモード」「美容・健康モード」「アスリートモード」などのモードがいくつか搭載されており、利用者に適した食事、運動、睡眠などのアドバイスもフィードバックしてくれるとのこと。

注目したいのは、「日常に溶け込んでいる」ことと「リアルタイム性」です。健康管理に役立つものとしてウェアラブルデバイスが一般的になってきましたが、身につけていないとデータが取れないという問題もあります。その点、「トイレに行って便をする」という当たり前の行為で無意識にデータを取ってくれるので日常に溶け込んでいて、めんどくささもありません。

また、これまではお腹の調子を把握しようと思うと、お医者さんに行ったり、便を送って検査してもらうなど手間がかかるものでした。このデバイスとシステムであれば、スマホアプリでリアルタイムに把握でき、かつ、「今日は何を食べたほうが良い」といった食事の提案などまでしてくれます。

京セラのセンシング技術とAI技術

このデバイスとシステムの要になっているのが、京セラの「センシング技術」と「AI技術」です。便のニオイを解析するには、便臭に含まれるさまざまなガス(混合ガス)の測定と情報の抽出・分析が重要になります。そもそもニオイを感じさせる物質は40万種あると言われており、特定のニオイや香りを判別するには高い技術が必要です。

京セラは、ニオイや香りの判別が可能なセンシング技術の開発を行っており、この技術の応用と、クラウド上でガスを分析することで、腸に住んでいる細菌「腸内フローラ」の情報を抽出するとのこと。AI技術で腸内フローラの傾向を予測することで、健康管理をサポートします。

ここで出てくる「腸内フローラ」とは、人間の主に大腸に生息する細菌のこと。その数は1,000種類、100兆~500兆個以上とも言われていて、顕微鏡で腸をのぞくと「お花畑」(フローラ)のように見えることから腸内フローラと呼ばれています。腸内フローラは、食べ物を身体に良い栄養物質に変えたり、腸内の免疫細胞を活性化させたり、病原菌などから身体を守るなど、健康でいるための重要な役割を果たしている細菌です。

この腸内フローラや、腸内環境の解析事業をしているのがAuB(オーブ)です。

世界も注目するアスリートの腸内環境データ

AuBは、サッカー元日本代表の鈴木啓太さんが社長を務めるスタートアップ企業です。鈴木さんはプロサッカー選手になる前から、アスリートとして100%のコンディションを保つために常に便の状態を意識するなど、腸内環境を重要視していたそうで、サッカー界を引退したタイミングでAuBを設立します。

AuBの特徴は、28競技のトップアスリート500人、1,000検体以上の便(腸内環境)の情報を保有していること。トップアスリートの腸内環境を解析することで、腸内フローラと太りやすさや筋肉のつきやすさ、免疫力、コンディションなどとの関係を研究しています。健康のお手本のようなアスリートの腸内環境データをこれだけ保有していることは世界的にも例がなく注目を集めている企業です。

今回のデバイスとシステムは、AuBが蓄積したトップアスリートの検体から導き出した腸内フローラの状態との解明データを活用します。

腸内環境を把握して選手のパフォーマンスを向上に繋げる

記者会見では、京都サンガF.C.に所属するU-18のサッカー選手を対象にしたプロジェクトも発表されました。内容は「U-18研究対象選手29人の腸内環境を把握することでパフォーマンスの向上に繋げる」というもの。

具体的には選手の便検体を解析して腸内環境の把握し、食生活や選手の課題意識、目指す理想像などをインタビューすることで、それぞれの選手に合わせた食事のアドバイスや、食品の提供などを個別に実施するとのこと。

京都サンガF.C.は2019Jリーグ「最優秀育成クラブ賞」を受賞しているほどの育成熱心なクラブであり、かつ、全寮制のため食事や生活習慣の改善が行いやすいとのことで、このプロジェクトにも期待が集まっています。

ニオイで健康がわかる時代はもうすぐ

京セラ、京都サンガF.C、AuBの共同研究はデバイスやシステムの開発や、アスリートのパフォーマンス向上など多岐にわたった内容でした。特に便のニオイを測定してスマホで健康管理できるデバイスとシステムは、未来のライフスタイルが変わる予感もします。

2~3年後を目処に発売ということですので、今から楽しみですね。

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