日本屈指のアウトドアブランドとして名を馳せるスノーピーク。そのブランドロゴを冠した、フィッシング用「プライヤー」があるって知ってました? いくつもの失敗を経て、錆びないプライヤーを探してたどり着いたこの1本。作りの良さと美しさ、そして快適な使用感のトリコになり、他のプライヤーが使えなくなりました。今回はそんな”スノーピーク印”のプライヤーについて、3年間、主に海の釣場や船で使った結果をレポートします。
■そもそも「プライヤー」ってなに?
釣り道具の中でも、安物を買ったがゆえにストレスになってしまう3大金属系ギアと言えば、「ハサミ」(PEラインが切れない!)、「ナイフ」(魚が締められない!)、そしてノーズの長い「プライヤー」(錆びて動かない!)あたりでしょうか。
そもそもフィッシングプライヤーとは、魚の針を外したり、ラインを切ったりするのに特化した道具です。心地よく釣りを楽しむためにも、こういった道具こそいいモノを使いたいところ。なかでもルアー釣りでよく使うのは、二重に巻かれたリング状の金具・スプリットリングを扱える特殊なプライヤーです。1日の中でも登場する頻度がかなり高いですよね。
魚とファイトしてる時間は1日の中でもわずかな時間。ほとんどはロッドを握ってリールを巻いているか、釣るための準備をしているか。その準備の時間の多くの場面でプライヤーが登場します。そのため、とにかく使い心地がいいものを持っておきたいもの。
しかし釣具屋さんにいくと、マルチな機能を持つもの、ノーズの長短、握りやすさ…など、いろんな選択肢があるので迷ってしまいます。釣りものやスタイルで選びのポイントがありますが、共通するのは、なんといっても「錆びにくい」という点です。
これまでの釣り人生で20本以上のプライヤーを使ってきましたが、素材的に錆びリスクが少なく、使い勝手も抜群だったのが、あのスノーピークのマークが入った「ステンボーンプライヤー190」でした!
■使用3年で買い替えなし! スノーピーク印の「ステンボーンプライヤー190」
このプライヤー、購入当時の商品紹介では、航空機で使われる高耐久ステンレスを使い、1本ずつ職人が手作業で加工・生産するプライヤーと書かれていました。釣り用のプライヤーは錆びたり水中に落としたりするので、一般的には消耗品的な存在。価格で2000円とか3000円とかが普及帯で、とりあえず使えりゃいいって感じの商品も少なくないです。
そんななか、こちらなんと税込みで1万円超え! ところが使い始めると、もうこれが使いやすいのひとこと。それまでは錆びたり不満があったりで、半年~年1で買い替えていましたが、こちらは3年使用して、錆びに悩まされることもなく、今のところ絶好調。そんな体験と私的調査を踏まえ、このステンボーンプライヤー190が極上品だと言える、理由を語ってみたいと思います!
■精巧なのに頑強!粗野な使い方でも切れ味変わらず
まず見た目のデザインの美しさが所有欲を高めてくれます。8.5mmという厚手のステン無垢を使いながら、ホールに肉抜きされたブランクは美しいだけでなく、落下防止のコードが装着できる機能性も併せ持っています。全体に細身にシェイプされながら、絶妙な重量感もここでバランスがとられているのかもしれません。
全体を構成するのは2本の金属(ステンレス)パーツ。しかも厚みのあるステンレス(カタログに)先端部、2本のパーツをスムーズに動くよう連結している金具「カシメ」、グリップ部と3か所を別々の加工と仕上げにしています。
グリップ部の側面はサンドブラストっぽい加工を力の入る箇所に部分的に入れており、滑りにくく、ギュっと握り込んだときの力の入り具合がたまらなく心地良いです。この緻密な計算と丁寧な加工を、すべて燕三条の職人さんが手作業で行っているそうです。
まったく隙間のないカシメは、最初はやや硬めかなぁ、と思ってましたが、3年間使っているうちになじんで柔らかくなってきました。なにより開け閉めにブレのない剛性感には安心します。
また魚の口からフックを外す際、例えばタイの硬い口や大型青物の口に刺さったりすると、はさんでねじるというプライヤー独特の動きが発生します。そんな動作にもカシメ部分は全く動じず。
ちなみに2回ほど海水落下&ボックス放置で、やや動きが悪くなったことがありましたが、そのたびにカシメ部分を流水洗浄し、潤滑油をわずかに入れただけで動きが完全復活しました。すごすぎる…。
先端部根元にあるラインカッターの精度も抜群。ルアーではおもにPEラインという、細く強靭だけど腰のない糸が主流です。うまく持っていないとハサミでもうまく切れないときがあるんですが、文句なしにスッパリ切れていきます。ここの刃の合わせも、3年ハードに使っても隙間がなくぴったり。工作精度はかなり高いです。
先端部分のメッシュが細かいから、ラインをつかんでも傷みにくく、しっかりとホールドできます。見た感じ幅が細かすぎで、たぶんプレスじゃできないから、ちゃんと1本ずつ溝を削らねば作れないんじゃないだろうか…。仕事が細かい!
ルアーやフックの接続に使う、二重に巻かれたリング状の金具・スプリットリングを空けるため、片側の先端が曲がっています。リングは小さいモノ(#8程度)から大きなモノ(#3程度)まで開くことが可能。シーバス用ミノーから、ジギング、青物キャスティング用の中型ルアーまでカバーでき、汎用性も高いです。
年ごとに愛着が湧いてきて手放せません。落としたらショックで立ち直れなさそうなので、必ずランヤード着用。肉抜きホールの穴に、接続リングをいれてつなぎます。ランヤードも適当なのを選ぶと、すぐに錆びたり使いにくくなりますが、先日いいものに出合ってテスト中。別の記事でご紹介予定です。
■飛行機のランディングギアに使われる高級ステンレス
素材はオールステンレスです。そもそもステンレスとは、鋼にクロムを11%以上含んだ金属。耐食性=さびにくさと、高強度、高温にも低温にも強い特性があることから、航空機の離着陸装置の素材としても使われるそうです。
ちなみにステンレスは「不動態被膜」というものに覆われており、例えば傷が入ってそこから錆が始まっても、被膜が自己修復して傷口をふさぐため、表面だけ錆があっても深くまで浸食しにくい、という原理みたいです。ステンレスも錆がでますが、拭けば割とすぐにきれいになるのはそういうことなんですね。
ただしこの素材、硬いので、加工難易度は高め。だから職人の手仕事が不可欠でしょう。加工コストの高いステンレスを、燕三条の職人が、手作業で一本ずつ作り上げているから、精度が高い逸品に仕上がっているんですね。この価格にも納得です。
あー説明している間に、もう一本欲しくなってきた…。
■なぜにスノーピーク? 1本のプライヤーが背負った数奇なストーリー
さて、最後にブランド名の秘密について。スノーピークとダイワそれぞれのお客様センターに問い合わせしてみました。大人の事情でこのあたり答えてくれないかと思いきや…両ブランドのお客様センターの方が快く答えてくれました。
スノーピークは、かつてフィッシング事業を手掛けたことがありましたが、のちに撤退。そのときに釣り具の販路ならダイワに…ということで、スノーピークの釣具商品を、ブランドごとダイワ(現・グローブライド)に事業譲渡したのだそうです。このプライヤーを含め、その後もいくつかの商品はブランドとして継続。しかし、スノーピークから受け継いだ、日本製の高品質な金属加工系の釣具を「CARP」として再ブランドしました。
なんと、偶然にもこの原稿を書いていた2020年春から、このプライヤーもCARPブランドにロゴが変更され、WEBカタログに登場しました。ただし「ブランドだけの変更で、素材や製法などは一切変わりません」(ダイワ)とのことだったので、ひと安心ですね。
1本ずつ、職人が仕上げているから、歩留まりが悪い。素材と作りにこだわれば、効率良く作れない。どうしてもコストがあがる。しかし、3年間使っての満足感はとても高かったのは紛れもない事実です。
フィールドでの1日をどこまで心地よく楽しめるか否かは、道具が左右します。できれば、使って満足できる逸品に囲まれて釣りを楽しみたいものですね!
>> CARP「PSE-002ステンボーンプライヤー190」
(取材・文/ナオ・サクライ)
子供の頃、九州で、渓流から海まで、さまざまな釣りを経験したのち上京。学生時代から東京湾奥のシーバス釣りにハマったのを皮切りに、ありとあらゆる海のルアー釣りへとのめり込み、離島のショアGTや怪魚釣りなど、エクストリームな釣りを経験。今は家族や友人への食料提供を兼ね、東京湾の美味しい魚を船釣りで追いかける。現在のメインの釣りモノは、タイラバで釣るマダイ。
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/286559/
- Source:&GP
- Author:&GP
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