スマホ最強カメラをさらに強化ファーウェイP40シリーズが登場

2020年春のスマホ新製品の「真打ち」が登場した。ライカカメラを搭載するファーウェイの「P40」シリーズだ。ここ数年カメラ性能でスマホ市場をけん引する同社のカメラフォンはさらなる進化を遂げ、メインカメラのみならずフロントカメラも最強の域に達した。3モデル揃ったP40シリーズは、デジカメ業界にとっても衝撃的な製品だ。

3モデル展開になったP40シリーズ
100倍ズームやデュアルフロントカメラを搭載

ファーウェイP40シリーズは「P40 Pro+」「P40 Pro」「P40」の3モデルが登場する。今や各メーカーは「無印」「Pro」という2モデルをリリースすることが通例となっているが、ファーウェイはさらに上位モデルを加えたわけだ。これはサムスンの「Galaxy S20」シリーズでも同様であり、性能を極限まで高めた高価格モデルをスマホ市場トップを争う2メーカーが用意しているわけだ。なお価格を抑えた低価格モデルとして「P40 lite」「P40 lite E」も登場。シリーズで5機種も展開するのはファーウェイのみならず他社を含めてもめずらしい。

シリーズ主力となるP40 Pro。P40 Pro+はカメラ以外の性能はほぼ同等

メイン3モデルのうち、P40 Pro+は望遠10倍のペリスコープカメラを業界初搭載。これによりデジタルで最大100倍ズームを実現する。さらに低倍率望遠をカバーするため3倍ズームレンズも搭載するなど望遠性能にこだわったカメラが自慢だ。P40は5倍ペリスコープカメラのみと望遠性能はやや落ちるが、他のスペックは両者同等だ。価格はP40 Pro+が1399ユーロとかなり高く、P40 Proは999ユーロと1000ユーロを切った。P40 Pro+はプロユースとしてあえて高価格とし、大々的に売り込むのはP40 Proということなのだろう。そしてP40はディスプレイ形状を変えペリスコープカメラ非搭載で799ユーロと、カメラ性能を抑えたハイスペックスマホという位置づけになる。

Quad- Curve Overflow Displayは上下もカーブ。ベゼル幅は少ない。

P40 Pro+とP40 Proは6.58インチ2640×1280ピクセル、90Hz駆動のディスプレイを搭載。「Quad- Curve Overflow Display」の採用で、左右のみならず上下のディスプレイも湾曲した形状となっている。ディスプレイ側面とディスプレイの間のベゼル幅を狭めているだけではなく、上下からの指先によるスワイプ操作もより快適に行えるというわけだ。またノッチを無くしディスプレイ内にフロントカメラを埋め込むパンチホールデザインを採用。しかもフロントカメラはデュアル仕様で4K録画に対応、片側は深度測定+生体認証用でボケの効いた撮影を可能にするとともに、顔認精度も高めた。

フロントカメラはパンチホールデザイン。やや目立つが性能は高い。

写真も動画も美しく撮れる
スマホ最強のカメラ性能

P40 Pro+の発売は6月予定で、まだ実機は出回っていない。一方P40 Proはすでに海外で発売済だ。今回はP40 Proのカメラ性能をじっくりと試してみた。まずカメラ部分は従来のPシリーズとは異なり、長方形の台座部分にカメラを2列に配置している。P40 Proは3つ+1つという並びだが、P40 Pro+は3+2、P40は3つだ。3モデルで背面デザインを揃え、さらにカメラ周りにはいったライカの文字を見れば一目でP40シリーズとわかるようにしている。

P40 Proのカメラは5000万画素の広角、800万画素のペリスコープ5倍望遠、4000万画素の超広角、深度測定(ToF)となる。広角カメラには1/2.8型RYYBセンサーを採用しており、暗所での撮影性能を大きく高めている。また超広角カメラはシネカメラとして動画撮影にもフォーカス。16個の画素をまとめて1画素として扱うことで、0.5ルクスという薄明かりのなかでもノイズの少ない動画撮影が可能だ。さらに動画撮影中にズームした方向の音を拾う指向性ズームマイク機能も搭載している。

P40 Proのクワッドカメラ。静止画も動画も美しく撮影できる

P40シリーズは3モデルともAI機能を強化した最新のチップセット「Kirin 990 5G」を採用。AI機能はカメラで大きく利用されており、撮影した画像はAI処理により人物や背景を個別に認識、それぞれに最適な処理を加えることで最高の仕上がりの写真を生み出すという。また写真に写りこんでしまった人物やガラスへの反射を除去できる「HUAWEI Golden Snap」により、撮影後の写真の加工も容易に行うことができる。

夜景の中のライトも綺麗に撮れるのはさすがだ

スマホのカメラは各社が多くの機能を追加しているものの、撮影そのものが失敗してしまえばせっかく写した写真も使い物にならなくなる。ファーウェイのカメラは感動の1シーンを確実に撮影できるだけではなく、撮影ミスしてしまったとしてもそれをリカバリして残せる写真に生まれ変わらせる、という思想で設計されているわけだ。写真のシーン判定にAIの活用を業界で早い時期から取り入れていたファーウェイだけに、P40 Proのカメラも手軽に被写体を撮影すればだれもが美しい写真を手に入れることができるはずだ。

ファーウェイスマホのカメラ進化は止まるところを知らない。

P40 Proのカメラで唯一不満に感じたのは、他社の最新スマホが対応する8Kビデオ撮影機能が無いことくらいだろうか。しかし8Kはまだ再生環境が整っておらず、撮影後の動画の加工も今のスマホではパワー不足だ。しかし静止画の撮影性能に関しては業界トップであり、カメラのベンチマークの1つであるDOXMarkでもP40 Proのスコアは128と1位(2020年4月10日現在)。フロントカメラも103とこちらも1位だ。P40 Proは現時点で業界トップのカメラスマホなのだ。

AI音声アシスタントも新搭載
弱点はグーグルサービスへの対応

P40シリーズには自社開発した新しいAI音声アシスタント「Celia(セリア)」を搭載する。Androidスマホはほぼ全社がグーグルの「Google Assistant」を搭載、アップルは「Siri」を採用しているが、サムスンは独自に自社の「Bixby」を採用。ファーウェイもついに独自路線への転換を図った格好だ。実はファーウェイは2018年10月、中国発売の傘下ブランド「Honor」のスマホに「YOYO」と呼ぶAI音声アシスタントを搭載したが、限定的に終わった。その後現在は「XiaoYi(小芸)」と呼ぶAI音声アシスタントを中国国内で展開している。CeliaはそのXiaoYiを改めてグローバル展開するものであり、チップセットや通信モデム、そしてスマホサービスと次々と独自開発を行い参入を進めてきた同社の新たな市場への参入を意味する。

AI音声アシスタントCeliaを新たに搭載。

ではなぜファーウィが独自にAI音声アシスタントを開発したのだろうか。最大の理由はアメリカとの経済摩擦による制裁を受け、グーグルサービスを2019年秋以降搭載できなくなったからだろう。スマホで検索や操作をする際、音声を使うことは当たり前になりつつある。「明日の天気は?」「タイマーを5分にセットして」といった簡単な操作は音声でスマホに語り掛けたほうが簡単だ。しかし制裁によりGoogle Assistantも搭載できないため、ファーウェイの海外向けスマホは音声操作ができなくなってしまう。

しかもファーウェイは中国国内でスマートスピーカーも発売しているが、海外で音声操作できないとなれば販路を広げることはできない。そして自社開発のシステムならばユーザーデータを取得し自社AIの精度を高めることができる。グーグルがダメならマイクロソフト(中国での制裁は解除されている)と組むこともできただろうが、将来を考えれば自社技術を開発する道が最適と判断したのだろう。

なおP40 Proは前述したようにグーグルサービスが搭載できないため、ファーウェイ独自のスマホ向けサービスが搭載されている。そのためグーグルの地図やメールソフトは搭載されず、アプリストアもファーウェイ独自のものとなる。アプリの数は増えているとはいえ、日本でメジャーなSNSアプリがまだ非対応など日常的にスマホを使うとなるとアプリ不足が大きな足かせとなってしまうのは事実だ。ファーウェイはアプリのデベロッパーに資金提供しファーウェイサービスへの対応を進めているが、アプリが自由に使えるようになるにはまだ時間がかかるかもしれない。最高のカメラで撮影した写真をすぐにSNSにアップできないのは残念だ。WEBブラウザ経由でログインできるSNSもあるが、一般的な消費者が使うにはやや敷居が高い。

 

ファーウェイ独自のアプリストアAppGellery。

P40 Proを試用してみると、とにかく写真を撮るのが楽しくなるスマホと感じられた。室内の暗い場所や、すやすやと寝ている猫の撮影、また道端で見かけた草花の撮影などあらゆるシーンで撮影ミスすることが無いのだ。一方209グラムという重量はやや重さを感じ、写真撮影時には片手持ちよりも両手持ちのほうが楽かもしれない。つまりP40 Proはカメラで言えばコンデジではなく一眼レフカメラに近い感覚なのだ。究極のカメラフォンと言えるP40 Pro、日本でもぜひ発売してほしいものである。

5Gはもちろん対応、eSIMも使える。日本発売が楽しみなスマホだ。

 


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