世界初のスマホを次々発表 ハイセンスの新製品に注目

世界のスマホ市場でも存在感を増している中国メーカー。だが、ファーウェイやシャオミなど大手のメーカー以外は中国国内でも苦戦が続いている。そんな中国で家電メーカーのハイセンスが驚きの新型スマホを発表した。他社にはないニッチ路線で存在感アップを図ろうとしている。

世界初のカラー電子ペーパー搭載
これは格安電子コミックスマホだ

ハイセンスは今年1月にラスベガスで開催されたCES2020で世界初となるカラー電子ペーパーを搭載したスマホを発表した。製品化時期は未定とのことだったが、市場での予想よりも早く、この4月に2つのモデルが登場した。「A5C」と「A5 Pro CC」、どちらも同じ5.84インチのカラー電子ペーパーを採用したモデルだ。

世界初のカラー電子ペーパー搭載スマホをハイセンスが発売する。

カラー電子ペーパーは一般的なスマホで使用されている液晶や有機ELと異なり、動画や写真の表示はあまり得意とはしていない。しかしバックライトが無いため目が疲れにくく、長時間画面を見るのに適している。A5C、A5 Pro CCどちらもカメラを搭載してはいるものの、ハイセンスとしては内蔵された電子書籍リーダーを使った電子ブックとしての使い方を推奨しようとしている。カラー表示は4096色に留まるが、カラーの電子コミックを読む分には十分実用的だろう。

4096色カラーで電子コミックの表示にも向いている。

ところで、なぜハイセンスは2つのカラー電子ペーパー搭載スマホを出したのだろうか。どちらも見た目は同じで、背面カラーが異なるくらいの差しかない。実はこの2機種、スマホの心臓部であるSoC(統合チップ)に違いがあるのだ。A5Cは多くのスマホが採用するクアルコムのSnapdragon 439を採用している。低価格スマホではよく使われるSoCだ。一方A5 Pro CCはUNISOCのT610を採用している。このUNISOCとは中国の企業で、ハイセンスは「国産」のSoCの搭載に踏み切ったのだ。おそらくまだ実績のないSoCを採用することを恐れ、Snapdragonを搭載した製品と2つを作り分けたのだろう。

価格が安いのも大きな魅力だ。

さて、世界初の電子ペーパーを搭載したスマホ、値段はさぞかし高くなると思うかもしれない。ところがA5Cは1699元(約26,000円)、A5 Pro CCは1799元(約27,000円)といずれも日本円で3万円を切る価格となっている。WEBや地図検索、SNSで小さい写真を見る程度なら、この価格のスマホでも十分ではないだろうか。しかも長時間見ていても目が疲れにくいのだ。格安スマホを求める中国の消費者にとって、魅力的な存在となるだろう。

5Gスマホも世界初を実現
ハイセンスが5Gでも勝負

カラー電子ペーパースマホの2日前に発表された「F50」は、ハイセンス初の5Gスマホだ。このF50もCES2020で参考モデルが展示されており、価格や発売時期は未定だった。カメラは4800万画素を含む4眼で、5100mAhの大型バッテリーも搭載する。ディスプレイは6.57インチと大きいが解像度は1600×720ピクセルと若干低い。しかし価格は2199元(約3万3000円)と5Gスマホにしてはかなり格安だ。中国国内でもここまで安い5GスマホはシャオミやOPPOの製品がわずかにあるくらいだ。

UNISOCの5G SoCを世界で初めて搭載したハイセンスF50。

F50のSoCはUNISOCのT7510を採用している。そう、カラー電子ペーパースマホと同じメーカーのSoCを採用しているのだ。この国産5G対応SoCの採用は世界初で、UNISOCにとっても今後5Gスマホを開発するメーカーから受注を受けるため、F50の販売数動向や実性能のフィードバックには大きな期待を寄せているだろう。

UNISOCの前身は格安タブレットなどにSoCを提供している中国のSpreadtrum。すでに数年前から低価格な端末向けのSoCを中国企業は商用化しているのだ。しかし高性能なCPUや高速通信モデムの搭載ではクアルコムや台湾のメディアテックに出遅れていた。だがここ数年でそれを一気に挽回し、ついに5G対応のSoCを開発するほどの技術力をつけたのだ。ちなみにあのインテルと一時は5Gで協業したこともあったほどで、UNISOCの技術力は世界が認めている。

SoCにはCPUやモデムを内蔵。UNISOC T7510は5Gモデムを搭載している。

ところで中国の5Gは2019年11月に開始されて以来、急激に加入者を増やしている。日本ではまだ使える場所を探すのも一苦労だが、中国では北京や上海、深センの繁華街を中心に5Gのエリアは大きく広がっている。2020年末には5G加入者は2億人に達するとみられ、世界一の5G大国になろうとしている。

つまり、2020年は中国の消費者が5Gスマホに殺到する年でもあるのだ。ここで格安な5Gスマホを出せば人気に火が付くのは当然のこと。ハイセンスとしてもこのおいしい市場を黙って指をくわえてみているのではなく、国産SoCメーカーと協業することで参入を決めたというわけだ。UNISOCと二人三脚でで5Gスマホの開発を進めていけば、他社製品にはない優位性を自社製品にもたらすこともできるだろう。

中国5Gの加入者は年末に2億人に達する見込み。

一方、UNISOCのSoCが海外の5Gネットワークでどの程度の性能を出せるかはわからない。しかしハイセンスの今の能力では海外市場でスマホを売るほどの余力はない。中国国内に特化し、5Gのノウハウを得てから数年後に海外に出る、という戦略も十分ありうるだろう。

あえて投入するモノクロタブレット
スマホメーカー対抗は急務だ

カラー電子ペーパーの採用や国産SoCの搭載だけでも思い切った製品を出してきたハイセンス。だがハイセンスの冒険はこれだけにとどまらないのだ。スマホ3機種に加えタブレットも1機種を発表している。それが反射式液晶をディスプレイに搭載した「Q5」だ。10.5インチサイズとカバンにも楽に入る大きさで、電子ペーパー同様バックライトが無い反射式液晶は目に優しい。またモノクロでやや見にくいものの、動画や写真の表示もある程度できそうだ。

10.5インチの大きさがあれば雑誌サイズの電子書籍の表示も楽に行える。また指先を使って画面に文字を書き込むことも苦にならないだろう。これらの特性を考えると、Q5は中国の教育市場を狙ったタブレットと考えることができる。何よりも子供たちの目に負担が無い点は高い評価を受けるだろうし、カラーではないことから勉強の合間にゲームをすることも防げるだろう。もしかするとすでに中国のどこかの省や市の教育委員会と端末導入の動きを進めているかもしれない。

反射式液晶を採用したQ5。

それにしても他社とは全く異なるスマホやタブレットを出してくるなんて、ハイセンスはまだまだモバイル端末市場をあきらめていないということなのだろう。中国の他の家電メーカーでは、ハイアールやコンカなどがスマホも手掛けている。しかし販売数はかなり限られており苦戦しているのが実情だ。すでにシャオミなどが1万円を切る低価格スマホを出して価格競争力を強めているだけではなく、逆にシャオミが家電を次々と出すなど家電メーカーの領域を浸食している。

ハイセンスが得意とするテレビ市場でもスマホメーカーの勢いが増している。

テレビ市場でもシャオミはすでにトップグループ入りを果たしている。しかもスマホとの連携も可能で、スマート機能は家電メーカーを大きく上回っている。スマートテレビはファーウェイも参入するなど、このままでは家電メーカーはスマホ進出どころか逆に家電でスマホメーカーに駆逐されてしまう日がくるかもしれない。家電メーカー自らがスマホを強化することで、スマホメーカーに総合的に対抗しなくてはならない時代になっているのだ。

スマホで成功しなくては家電も生きのこれない。

 


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