錆びにくく、切れ味バツグン!魚をさばくなら「骨スキ包丁」から始めよう

釣った魚を、自分の手でさばくスキルは、釣り人が会得しておきたい基本技術。そうなると、家庭で万能な三徳包丁ではなく、魚を美しく、心地よくさばける「いい包丁」にこだわってみたいところです。

そこで今回は、釣り好きの料理屋にアドバイスをいただきながら、「メンテフリー」「よく切れる」「使いやすいサイズ」の3つがそろった「初めての釣り人包丁」をご紹介します!

魚をさばく包丁と言えば、寿司屋や和食の料理人が使用する、本格的な「出刃」や「柳刃」に憧れてしまいます。筆者も初めて購入したのは、ホームセンターで買った1本2000円の鋼の出刃&柳刃でした。

しかし、家庭用のステンレス包丁と同じように濡れたままで放置していると、1時間くらいで茶色がうっすら。放って置くと錆がガンガン出ます。少しの水分に気づかずそのまま仕舞おうものなら、内部まで錆が食い込む始末。使うたびに必死に研ぐのがとても大変でした。何より切れ味も落ちるのが早いんです…。

そんな経験から何本かの和包丁を試しましたが、釣り人用の包丁選びの重要ポイントは3つに絞りました。それは上から順番に、

①サイズ ②素材 ③コスパ

です。今回は、毎日いくつもの魚をさばいて提供するプロの意見も伺いつつ、初めての本格包丁選びの“コツ”をご紹介したいと思います!

■自分が釣る魚の大きさに包丁は合わせるべき!

お話を伺ったのは、大船にある刺身居酒屋「魚男」の店長・秋山純さん。自ら相模湾のキハダマグロやブリを船で釣りに行って、お店で刺身にして振る舞ってくれるという、釣りが好きすぎる料理人さんです。

 

ポイント①「サイズ」

実は魚をさばく包丁を選ぶにあたって、もっとも重要なファクターと思われるのが、包丁自体のサイズです。刃渡りで選ぶのですが、例えば25㎝くらいのアジをさばくのに、刃渡り25cmの大きな包丁は、小回りが利かずとてもさばきにくいものです。まずは自分の手にあった小回りのきくサイズがベターです。

また、包丁の刃渡りサイズは「年間通して釣ってくる魚のアベレージサイズ」に合わせるということも重要。そのうえで、魚体の大きさに合う適切な刃渡り長の包丁を選びましょう。

※妄想釣果の魚体サイズで、包丁のサイズを選んでいけませんよ……。ここは現実的に!

「基本の三枚おろしでさばくことが多いと思いますが、背中から切り開くとき、魚体の背骨まで刃が届けば事足ります。つまりいつも釣りに行って持って帰る魚の体高の半分くらいの長さがあれば十分ということですね」(秋山さん)

秋山さんの場合、狭いスペースの厨房で使いやすく、細かい細工もできる取り回さを重視。合わせて、柄が太く力を入れやすいものを選んでいるそうです。

 

ポイント②「素材」

包丁は素材で切れ味、メンテナンスしやすさ、価格が大きく変わります。

ものすごくざっくりと分類すると、まず錆びやすく鋭く研ぐことを前提とした「鋼」と、錆びにくくメンテナンスしやすい「ステンレス」の2種類に分類できます。そのうえで、それぞれの素材もいくつかの種類があり特性が異なります。主なものでは下記のような分け方です。

<鋼>
研ぎやすく、鋭い切れ味を出しやすいが、手入れを怠るとすぐに錆びる。素材の切り口の美しさにこだわる鮨職人や和食のプロなどが多く使う。ピンキリではあるが、比較的安価なものも多い。

<ステンレス>
とにかく錆びにくく、切れ味も上場だが、コストはやや高め。近年のステンレス系の材質は素材研究も進み、「銀三」のように高級な鋼に匹敵する切れ味と切れの持続性を持たせながら、錆びにくいという特質を持ったものもある。

初めての一本として選ぶならば、やはり「メンテナンスフリーで切れ味抜群のもの」となるので、ステンレス系の素材をおすすめしたいところ。秋山さんがメインで使用する包丁は、刃渡り15cmのモリブデン素材の骨スキ包丁を使っています。

「とにかく錆びないのと、切れ味が持続するのがいいですね。ステンレスは研ぎにくいイメージですが、業務用で使うのでガシガシ研いで使ってますよ」(秋山さん)

▲1年研いで使うと、幅が半分ほどのペティナイフのような状態に! そうなってもAmazonで5000円ほどで購入でき、調達しやすく、コスパは抜群なのだそうです

 

ポイント③「包丁の形状」

魚をさばく際に使う包丁は、形状ごとに得意とするアクションや、切るものが少し変わってきます。メジャーなものだと下記の3種類でしょうか。

▲「出刃」…刃が厚く、骨を叩き切るなど、力を入れたアクションがしやすい。1尾を三枚におろすところまで使う片刃の「解体用」

▲「柳刃」…出刃で解体した後、長い刀身で“引き切り”しておろした身を刺身用に切ったり、皮を引くアクションがしやすい。美しく身を切りつけるための片刃の「刺身用」

▲「牛刀」…両刃の洋包丁で、骨があまり硬くない魚であれば、解体から刺身の切りつけまで、1本でこなせる

取り回しを重視すると、実は刃渡り15cmほどがベスト。そうなると、牛刀が1本あればいいようにも思えます。

ちなみに秋山さんは厨房では主に3本を使いまわしをしているそうです。

・出刃 刃渡り27cmくらい
……ブリやカンパチ、マグロなどの大きい魚、鯛などの硬い魚を、力入れてさばく時に使う。骨を叩く、頭を割るのに重宝。

・牛刀 刃渡り27cmくらい
……解体&柳刃的な使い方などマルチで活躍。ステンレスで錆びなくて使いやすい。両刃は力を入れるさばきにも向く。

▲「骨スキ包丁」…刃渡り15㎝。50cmまでの魚であれば、これ一本で解体からサク切りまでこなすため、もっとも使用頻度が高い

ちなみに骨スキ包丁とは、スペアリブなどの肉を骨から外すときに使用するものです。刃こぼれしないよう厚みのある刀身なので、出刃のように魚の解体にも使えます。また先端が尖っているため細かい作業にも向きます。

■モリブデンの骨スキ包丁15cmを試してみた!

ちなみに筆者の場合、歴代で鋼の出刃を3本所有していて、魚のサイズに合わせて使い分けていました。研ぐのは、ややサボりがちでした。

今回、秋山さんの骨スキ包丁15cmを触らせてもらったら、とても使い心地がよさそうだったので、まったく同じものをAmazonで購入。早速30cmほどの大アジ相手に使ってみました。

ちょうどよい柄の太さ&形状で、力が入りやすく握りこんだ時の心地も上々。買ったばかりなので切れ味抜群なのは当然でしたが、それから何度か使っても切れ味が持続。洗って吹き上げて雑に乾かしてるだけですが、まったく錆びる気配もありません。

なんといっても取り回しが抜群にいい! このサイズくらいなら、なんなく刺身までいけました。本当に50cmくらいまでの魚であれば一本で勝負できそうです。買っててよかった骨スキ15cm!

*  *  *

結論:「15㎝骨スキ包丁」があれば、家庭でも立派で美しい釣魚の刺身がつくれる!

すべての包丁をステン系に変えてからというもの、あんまり砥石を使ってません。やっぱり家庭では錆びにくい素材がメンテしやすく、断然おすすめですね。

まずは15cmの骨スキ包丁を1本買ってみてください。出刃にもなるし刺身も切れて、普通の家庭用包丁としても使いやすく、クセになる使い心地です。

また大き目のサクを釣って(買って…)刺身をつくることが多いようであれば、ぜひ銀三の「先丸蛸引」というワンランク上の刺身包丁をおすすめ。これはこれでスパッとしたキレイな切り口の刺身が素人でも簡単に作れるのですが、また別の機会にでもご紹介します!

 

取材・文/ナオ・サクライ

ナオ・サクライ|子供のころ、九州で渓流から海まで、さまざまな釣りを経験したのち上京。学生時代から東京湾奥のシーバス釣りにハマったのを皮切りに、ありとあらゆる海のルアー釣りへとのめり込み、離島のショアGTや怪魚釣りなど、エクストリームな釣りを経験。現在のメインの釣りモノは、タイラバで釣るマダイ。


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