Xperiaが台湾より香港で人気?デジカメユーザーにも訴求できるか

ソニーのスマホXperiaシリーズは日本を代表するスマホだ。しかし海外では苦戦が続いている。筆者の居住する香港ではXperia最新製品が他国よりも安く売られており、人気回復を目指そうとしている。
ツァイスレンズカメラでXperia人気復活を目指す。

日本が大好きな香港人
ソニー製品が売れている

日本の周辺国は日本が大好きだ。政治的なニュースで対立があおられているが、2019年に日本を訪れた外国人で最も多かったのは中国、次は韓国だった(日本政府観光局)。どちらの国でも日本のアニメは大人気だし、日本の製品に対する信頼性は揺るがない。そしてこの2国に次ぐのが台湾、香港となっている。

この訪日客数を人口当たりで比較すると面白い結果になる。香港は人口わずか734万人(外務省データ、以下同様)にも拘わらず、訪日数は229万人もいるのだ。つまり人口の3人に1人が日本を訪れた計算となり、訪日客数の割合ではトップとなる。台湾は人口2360万人で訪日客489万人なので5人に1人。親日国と言われる台湾だが、実は香港人のほうがはるかに日本を訪れているのである。香港人の日本好きは筆者の周りでも常に感じるところであり、お店で店員と立ち話をしながらこちらが日本人と知ると「そういえば去年は日本に3回行ったなあ」とか「今度の休みは日本にまた行きたいと思っている」なんて会話がはずむ。「日本は行ったことないんだよ」という香港人に筆者は会ったことが無いほどだ。

香港人が日本を好きな理由はホスピタリティーや日本製品のブランド力など様々な要因がある。ソニーのデジカメを使っている香港人の数も多い。香港にはソニーストアが2店舗あるが、カメラコーナーは常に来客がいるほどの人気だ。しかしスマホコーナーはあまり人が集まっていない。香港人の使っているスマホはアップルかサムスンが多く、日本好きが多いにもかかわらずソニーのXperiaを使っている人は少ないのだ。

香港のソニーストア。ウォークマン40周年がアピールされている。

ところが台湾へ行くとXperiaユーザーも結構見かける。台湾では地元のHTCやASUSのスマホも人気が高い。地下鉄に乗ればiPhoneをよく見かけるのはどこの国でも同じだろうが、よく見ると古いHTCのスマホを使い続けている人も見るし、ASUSのゲーミングスマホでゲームに没頭する若者を見つけることもある。そしてXperiaユーザーも女性を中心によく見かける。2019年にフルモデルチェンジしたXperiaは21:9のワイドディスプレイを採用したことによりスリムな形状となり、より持ちやすくスタイリッシュな形状になった。他社にはないデザインが受けているのだろう。

台湾のソニーストアはXperiaを大々的に押している。

世界で一番安く販売
Xperiaは香港がお得

この春夏シーズンの新製品、「Xperia 1 II」「Xperia 10 II」は日本ではキャリアから販売される。ドコモの価格ではXperia 1 IIが12万3552円(税込み)、Xperia 10 IIがKDDIでは4万9990円となる。5Gに対応しカールツアイスレンズを搭載したXperia 1 IIは高価だし、コスパ重視したXperia 10 IIは安さが感じられる。

ソニーの春夏フラッグシップモデル「Xperia 1 II」。

さて、ソニー人気の高い台湾ではこの2機種はいくらで売られているだろうか。Xperia 1 IIは3万5990台湾ドル、約13万2500円、Xperia 10 IIは11490台湾ドル、約4万2000円だ。日本の価格を考えると妥当なところだろう。なお、台湾で売られるスマホはすべてSIMフリー、通信キャリアとの契約はいらない。日本人がソニーストアへ行ってその場でXperiaを買うことも可能だ。

台湾以外の価格も調べてみたが、ほぼ同じような価格で売られている。ところが香港ではXperia 1 IIが7999香港ドル、約11万3000円、Xperia 1 IIが2599香港ドル、約3万6700円。他国に比べてもかなり安く、Xperiaの最新モデルを買うなら世界で一番お得な国になっているのだ。なお、iPhoneやGalaxyの値段は他の国と同等であり、Xperiaだけが香港で安く売られているのである。もちろん香港もキャリア契約は不要、この金額は単体販売価格だ。

香港でもXperia 1 IIが発売された。

香港や台湾のXperia 1 II、Xperia 10 IIはSIMスロットを2つ搭載したDSDV(デュアルSIM、デュアルVoLTE)対応だ。日本ではキャリアが販売するためSIMは1枚しか利用できないのが残念である。また海外販売であるが日本語ロケールも入っているので日本語で使うこともできる。ただし技適は無いため、日本で使う場合は総務省への180日間テスト申請を行うか、海外居住者で日本入国後90日間利用するなど制限があるので注意が必要だ。

Xperia 10 IIは3万円台と、他国よりさらに安い。DSDVモデルだ。

しかし香港でどうしてXperiaが安いのだろうか。香港の人口は少ないためたとえ販売シェア1位を取ったとしても数は知れている。だが、香港の立地を考えると中国に面しており、中国からのスマホの買い物客の数も多い。今は新型コロナウィルスの影響で買い物客は香港に入国するのは困難だが、通販を利用すれば中国国内からも香港のものを簡単に入手することができる。中国でもXperiaファンは一定数いるが、ソニーはまだ最新のXperiaを中国では販売していない。

中国のスマホ市場は急激な5Gシフトと低価格シフトが進んでいる。ソニーのXperia販売価格は他国とあまり変わらず、そのまま最新モデルを販売すると価格競争で負けてしまう。香港からの輸入なら多少は安くなるので、国内メーカーと対抗できるかもしれない。中国のXperiaファンが香港から輸入して買うことを狙い、香港の価格を下げているなんて考えるのは話が飛躍しすぎているだろうか。

Xperia 1 IIの売りはカメラ
デジカメユーザーを取り込め

Xperiaのハイエンドモデルはカメラ機能も強化してきた。Xperia 1 IIでは「Photography Pro」というカメラアプリも入っている。これはソニーのデジタルカメラ「α」シリーズ、デジタルスチルカメラ「RXシリーズ」などプロ向けカメラのユーザーインターフェースを搭載したマニュアル設定可能なカメラアプリだ。通常のカメラアプリとは異なり、画面デザインはまさしくαシリーズを操作しているような感覚だ。各社のスマホのカメラもプロモードを備えマニュアル設定ができるもののがあるが、使い勝手はデジカメのUIには勝てないだろう。ソニーはカメラの性能をフルに生かせるようにデジカメのように操作できるアプリを搭載したのだ。

デジカメのように操作できるPhotography Pro

香港のソニーストアでもXperia 1 IIの体験機を触っていたところ、スタッフが真っ先に説明してくれたのはこのPhotography Proの使い方だ。デジカメコーナーのすぐ横にあるスマホコーナーでPhotography Proを使って写真を撮っていると、それまでカメラを物色していた客がやってきて興味深そうに操作性をのぞき込んできた。デジカメユーザーにはスマホのカメラは物足りないものだろうが、デジカメのような操作ができるとなれば「スマホならではの凝った1枚を撮ろう」というモチベーションも沸くのではないだろうか。

ソニーはデジカメ用のカメラセンサーで業界トップシェアを誇っている。OPPOなどはソニーと提携して新型センサーを開発し、優先的に自社スマホに搭載するほどだ。ところがスマホのカメラ性能では常にファーウェイやサムスンのスマホがソニーのスマホを上回っている。いいセンサーを搭載しながら、それを生かし切れていないのが今のソニーのスマホなのだ。

Photography ProはXperiaのカメラをハード面からではなくソフト面で魅力あるものに引き上げてくれる。「ハイスペックで何でもできるスマホ」ではなく、「デジカメユーザーも納得できるカメラスマホ」という売り方ができるかどうか。香港での売れ行きが気になるところだ。


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