LEDが特盛りになった東京スカイツリー、上から見るか? 横から見るか?

首都圏のランドマーク「東京スカイツリー」のライティングが新しくなっているのをご存じでしょうか? この2月に視認性向上を目的とした照明機器の増設工事が完了し、より美しく表現豊かに、そして約18km離れた羽田空港からもハッキリ見えるようになっているのです。一体どんな機器が使われているのか。展望台のさらに上、地上497mの現場に上って確認してきました。

フジヤマ!ゲイシャ!スカイツリー!

今回上ることになったのは、497mのこの部分。

海外から帰国した際、成田空港から東京に近づくにつれて見えてくる東京スカイツリー。日本人にとっても、日本を感じさせるランドマークとなりました。とくにライティングされているのを見ると「東京、カッコイイ都市だな」と思うのは私だけでしょうか。フォルムもスマートですが、LEDのライティングも白や寒色基調でクールなんですよね。

東京に住んでいてもそう感じるのですから、海外からのお客さんにとっても、シンボリックな建造物に違いありません。フジヤマ!ゲイシャ!スカイツリー!

そんな東京スカイツリーの照明機器増強が完了し、新しいライトアップがスタートしています。筆者が住んでいるのは23区も西の方なので、気づきませんでしたが。

このリニューアルは、訪日外国人旅行客の増加を見据えて実施されたもので、約18km離れた羽田空港からの視認性向上も目的としています。照明器具を担当したのはパナソニック。計357台の照明器具を増設することで、トップのゲイン塔を明るく、さらに中間部(250m、150m)に生じていた暗がりを解消することで、より連続性のあるライティング演出を実現したそうです。

正直、数字だけ聞いてもイメージが湧きません。というわけで報道陣向けの現場見学会に参加してきましたよ。

落下の被害を防ぐため階段は1人ずつ上る。

東京スカイツリーの高さは634m。ムサシ(634)と覚えやすいのでご存じの方も多いでしょう。登山で人気の高尾山(599m)をも超えています。なぜ、こんな高さが必要かといえば、テレビの電波を関東一円に届けるためです。電波塔が基本の役割ですが、もちろん観光名所になっています。

一般の人が登れる展望台は2種類あります。高さ350mの「展望デッキ」と、450mの「展望回廊」。下の方の展望デッキですら東京タワーの333mを超えているんです。

今回の見学会の現場は、展望回廊のさらに上、テレビなど放送のアンテナ設備が設置されたゲイン塔の根本です。

天望回廊の屋上部分まではエレベーターで上り、そこからほぼ垂直の階段を上っていきます。狭いし急だし、風はそれなりに吹いているし、緊張感が走ります。高所恐怖症にはツラいシチュエーション。自分も、小学生時代、山の上に立っていた鉄塔に上って恐怖で足が動かなくなった経験があるので、緊張しまくりでしたが、なるべく下は見ないようにして上りました。意識はステップを踏む足裏と、手すりを握る手のひらに全集中の呼吸です。

中心には三角形の空洞があり、機材はここを使って吊り上げた(一部画像処理しています)。

高所恐怖症も吹き飛ぶ眺望

497m地点。縁に並んでいるのがライトアップのためのLED照明。

そして497m地点に到達。自分の足で上ったのは50mにも満たないですが、緊張感が強かったせいでしょうか、達成感があります。地上から階段で上ったら1日かかったかもしれません。悟空でも上るのに1日かかったドラゴンボールの「カリン塔」を思い出しました。

下からだと497m地点は小さく見えますが、意外に広いです。ここからさらにそびえるゲイン塔がなければヘリポートになるぐらいのスペースです。この日はあいにくガスっていて(もやが多い)、関東一円を見通せませんでしたが、眺望はそりゃあいいですよ。裾野がないので、山頂からの眺めともまた異なりますし。タワマンなんて、スカイツリーに比べたら子どもですよ。

上ったどー! ヘルメットに反射ベルト、安全帯という完全装備。落下防止でカメラやメガネ、スマホもストラップで固定しています。
さいたま方面を望む。下を流れるのは隅田川。
浅草を見下ろす。川面が反射していてキレイ。
足元はグレーチングと呼ばれる格子状の鉄板。つまり、下が透け透け。
足元にGoogleマップの航空写真のような風景が。

ここだけで60台の照明器具を設置

放送用のアンテナが設置されるゲイン塔を見上げる(一部画像処理しています)。

スカイツリーのライティングは、本体に向けた間接光(ライトアップやライトダウン)と、直接外に向ける輝度光を組み合わせています。

この497m地点には、既存の器具を置き換える形で新しく60台の照明器具が設置されましたが、ゲイン塔をライトアップするためです。間近で見ると、このゲイン塔ですら巨塔ですよ。白い巨塔。

器具は2種類。超広角にも対応する「ダイナペインター」と、ピンスポット配光の「ダイナシューター」。すべてスカイツリー仕様にカスタマイズされ、必要な光量や角度に応じて配置されました。

ゲイン塔自体も輝度光とライトダウンで計119台が増設。トータルでは2075台から2362台へになっています。

冒頭に書いたように、今回のリニューアルは羽田空港からの視認性向上を目的としています。しかし、スカイツリーに機器を設置して検証するのは難しため、まずはスカイツリー横の「イーストタワー」屋上に機器を設置し、19km離れた埼玉県の越谷レイクタウンから見え方を確認し、出力や台数を決定したそうです。

新たに設置された照明器具「ダイナペインター」。
輝度光にも用いられる「ダイナシューター」。
ライティングの演出プログラムには、作成したイメージ動画から自動的にLEDの制御に変換する「ピクセルマッピング」という手法を採用。複雑な表現も忠実に再現できるようになったとか。

夜のスカイツリーはもう1本の隅田川!

手前の隅田川橋梁も2018年4月からライトアップが行われている。

どんなに明るい星も夜でないと見えないように、ライティングは暗くならないと輝けない。というわけで、見学会の終了後、浅草ホッピー通りで飲みながら待機。ほどよく気分が良くなったところで、隅田川へGO!

東京スカイツリーの通常ライティングは、「粋(いき)」「雅(みやび)」「幟(のぼり)」の3種類。この日は、隅田川の水をモチーフとした淡いブルーが特徴の「粋」でした。以前よりも全体的に明るく、アクティブな動きのある演出が追加されています。

写真を撮ったのは、浅草駅から東京スカイツリーを結ぶ、東武伊勢崎線の鉄橋(隅田川橋梁)。この鉄橋自体もブルーにライトアップされていました。後から知ったのですが、これもパナソニックの照明器具を使用したもので、東京スカイツリーのライティングと同系色になるよう演出されています。これも粋です。

“灯台もと暗し”ではなく、遠くから見るもよし、近寄っても美しく迫力ある東京スカイツリーのライティング。建造物のライトアップは世界中にありますが、その鮮やかさには日本らしさを感じてもらえるのではないでしょうか。早く多くの外国の方にも見ていただきたいですね。

ゲイン塔も以前よりも明るい。高さがある分、遠くからの視認性も向上しているだろう。
通常点灯の前にはレインボーなどの演出も。

せっかくのWebですから、動画も貼っておきますね。3種類の新ライティングの動きをお楽しみください。


Amazonベストセラー

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA