これからの時代はSNSではなく“DNS”。CXOバンクがビジネスマッチングに革命を起こす

新型コロナウイルスの影響を受けるビジネスシーンにおいて、実際に対面する形での商談が難しくなっている。オンライン上で新たな商機を見つけるべく、TwitterやFacebookなどのSNSを活用しているビジネスマンも多いだろう。

そんな中、株式会社CXOバンクによるB2B特化型のマッチングプラットフォームが人気を博している。”B2B版のFacebook”を目指す同社は、経営者向けの「CXOバンク」を昨年にローンチ。そして、今年5月には営業マンを対象に「セールスバンク」の提供を開始した。

どちらのサービスも、毎日3人のマッチング候補者をランダムで表示する「レコメンド機能」などを備えている点が特長だ。「興味あり」を選択すれば相手側にその旨が通知され、お互いに「興味あり」になるとマッチングが成立。その後はチャット機能によるコミュニケーションが可能になる。

今回は、同社代表の中村一之氏に取材を行い、サービスの特徴や開発背景はもちろん、あたらしく創り出そうとしている次世代のSNSの形について話を聞いてきた。

利益ではなく、社会貢献を追求したプラットフォームづくり

ーーTwitterやFacebookといった既存のSNSがある中で、あえて「CXOバンク」をリリースした意図を教えていただけますか。

中村:経営者だけを対象とした、B2B版の良質なマッチングアプリがなかったからです。TwitterやFacebookといったSNSは経営者以外のユーザーも多い上、そもそもマッチングをベースとしていないので使いづらかったんです。

かつてGoogleもSNSに注目し、「Google Friend Connect」や「Google+」などを展開していましたが、ほとんどがうまくいかず閉鎖してしまいました。その理由を分析したところ、特定のユーザー”だけ”を集める力が不足しているんじゃないかと。また、近年のインターネットユーザーの動向を見ていても、不特定多数よりも特定少数の質の高いコミュニティを求めていると感じました。

そこで、自分しか持たない独自の判断基準に基づいて、審査制のマッチングプラットフォームを作ったというわけです。

ーー独自の判断基準は、中村様自身のご経験に基づいたものでしょうか。

中村:はい。私はB2B業界の営業に15年間携わり、更にSNSマーケティングを熟知しています。

また、経営者が集うリアルの交流会やセミナーを主催してきました。これまでに累計1万人近くが集まる交流会やセミナーを開く中で、私自身も現場に立って様々な方を見てきており、場にそぐわないと思った方は途中退場してもらうこともよくありました。そんな現場で培ったノウハウが「CXOバンク」に詰め込まれているんです。

いわば秘伝のタレのようなもの。規模感、業種、事業内容、プロフィール、更にはSNSの写真や発信内容など10項目以上をチェックし厳格な審査を実施しています。

ーーそれだけ厳しい基準を設けていながら、完全無料な点もセールスポイントなんですよね。

中村:そうです。他社の類似サービスの場合、厳密には完全無料とは言えなくて。

たとえば、本業の人材紹介事業のための集客ツールになっていたり、フリーミアムプランはあるが有料プランの利用を前提としていて、無料で使えるのは一部分だけだったりします。完全にマネタイズポイントがないのは「CXOバンク」だけです。

ーーマネタイズはされないのでしょうか。

中村:しません。理由は、お金儲けが目的ではないから。世に残る、人のために役立つプロダクトを無料で提供したいという信念を持っています。

私がベンチマークとしているのはGoogleとFacebook。特にFacebookを意識しています。Facebookは、私たちユーザーからマネタイズしていません。そのようなプラットフォームを目指すため、ユーザー課金は考えておらず、その為に人を雇用をしない逆張り起業をした経緯もあります。人を雇用するから人件費が重くなりマネタイズが必要となってしまう。人を雇用しなければマネタイズせずに広めていけると。

ただ、今後はこのプラットフォームをグローバル展開していきたく、その場合は更に優秀なエンジニアや強力なサーバーなどが必要になるので、広告による収益モデルを考えています。このあたりもFacebookをベンチマークしています。

「バンク」シリーズを”次世代SNS”として育てていく取り組み

ーー先ほどの「CXOバンク」に続いて、今年5月には「セールスバンク」がローンチされました。このローンチの背景にあったものは何でしょうか。

中村:新型コロナウイルスの影響で、営業マンがアポ取りなどに苦労していたので、そういった方々を対象にローンチしました。「セールスバンク」は経営者も登録可能で、「CXOバンク」のユーザーの20%程度が「セールスバンク」も併用しています。

2019年の9月にはグループ会社から就活生向けの「ハントバンク」もローンチしましたし、今後は「エンジニアバンク」なども提供して、「バンク」シリーズによるエコシステムを形成していきたいと思っています。

ーーそのような「バンク」シリーズの構想において、中村様自身の原体験のようなものはあったのでしょうか。

中村:2004年に入社したベンチャー企業で、サイバーエージェントの藤田社長に憧れてローンチされたばかりのアメーバブログを始めたんです。そうしたら、ブログ経由で仕事が生まれたり、50人程の学生からインターン希望を受けたりということがありました。そういった経験を通してインターネットやSNSの力を実感しました。

ーーインターネットやSNSの有効性を実感したことが、「バンク」シリーズの開発につながったわけですね。

中村:そうです。私はB2Bの営業に携わってきましたが、アナログな営業スタイルが嫌いで。特に嫌だったのは、テレアポや飛び込み営業。私はニーズがあるところや問い合わせを受けたところに売りたい、そんなことをずっと思いながら社会人を15年やってきました。

一方で、ブログやFacebook経由で仕事が生まれることに対しては魅力を感じていたので、もっと簡単にアポが取れるインターネットサービスがあれば、世の中はもっと良くなると考えていました。

B2B業界では特に人同士が出会わないと仕事が生まれない。そこで、アポイントの取り方など、人が会うところの工数を削減してくれるものを作りたいと。

ーー確かに、「CXOバンク」や「セールスバンク」はビジネスパーソンの負担を軽減してくれるものになっています。

中村:アプリでは1日に3人、ユーザーがレコメンドされます。仮に毎日使ったとして1年間で約1,000人になりますが、交流会や名刺交換などのリアルな世界でこの人数と会おうと思ったら、かなりの労力が必要です。そういう意味では、私たちのサービスがこれまでの手段に取って代わる可能性があります。

さらに、お互い「興味あり」というステータスにならないとマッチングできない仕組みですから、一方的なコミュニケーションにならないこともポイントです。テレアポも飛び込み営業も一方的だから大変なのであって、そのようなスタイルを、私たちのアプリが良い意味で壊せるのではと考えています。

ーーまさに”会いたい人に会える”サービスというわけですね。

中村:その通り。SNSは「ソーシャルネットワーキングサービス」の略ですが、私たちは次世代のSNSを作ろうとしています。そこで、新たな言葉「ダイレクトネットワーキングサービス」を商標登録しました。文字通りダイレクトに実名でつながれるサービスとして、ゆくゆくは「DNS」と略されることになるかもしれません。

「CXOバンク」などのサービスを、あえてα版としているのにも理由があります。今はビッグデータを蓄積する段階。将来的にはそのデータを活用し、B2Bに関するあらゆることを無料で開放するというのが私たちのビジョンです。”会いたい人に会える世界”を早く実現させていきたいと思っています。

中村一之(なかむら・かずゆき)
B2Bダイレクトネットワーキングサービス『CXOバンク』を開発運営。これまでにThe CFO Consulting株式会社 取締役COOなどベンチャー企業4社で役員を務め2018年8月に起業。経営者×就活生の『ハントバンク』、営業マン同士の『セールスバンク』などバンク構想の中枢を担っている。SNSと口コミだけでバンク構想への登録者数はローンチから1年経たず4000名を超えている。

(取材・早川あさひ)


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