キャリアスクールのSHEがいまミレニアル女性に届けたいこと、コロナ禍で体験申し込みは2倍に

SHElikes

ミレニアル世代の女性をターゲットにデザインやライティングなどクリエイティブやビジネススキルのレッスンを学べる定額制キャリアスクール「SHElikes」を運営するSHE。受講生は2万人を突破し、新たに名古屋に拠点を構えるなど、順調に事業を拡大している。

しかし現在に至るまでには事業のピボットやリブランディング、代表の交代など数々の苦難が。創業ストーリーや、世界が大きく変化しているなかでSHEはミレニアル世代の女性に何を届けていきたいのかなど、現代表の福田恵里氏に話を聞いた。

福田恵里(@eri_razapii)
1990年生まれ。大阪大学在学中、米国・韓国に留学する。2015年、リクルートホールディングスに新卒入社。ゼクシィやリクナビのアプリのUXデザインを担当する。2017年4月にSHE株式会社を設立し取締役COO。2020年4月にCEOに就任する。

リクルートで修行を経て共同創業者と起業

福田氏がビジネスに興味を持ったのは2012年、在学中に米国へ留学したときのこと。年齢がほとんど変わらない同世代の起業家がゼロイチでアプリやウェブサービスを開発していることに衝撃を受けたという。帰国後、さっそく自身もスキルを身につけるべくデザインスクールに通い始める。そこで彼女はある課題に直面した。

「自分も含め女性は『作りたいもののアイデアは持っているけれど、実際に形にするにはどうしたらいいのかわからない』という人が多い印象を持ちました。当時はプログラミング学習が浸透し始めていたものの、女性で学んでいる人はごくわずか。この課題を解決するために、在学中から初心者女性向けのウェブスクールを主宰していて、それが今のSHEの原型になっています」。

大学卒業後はすぐに起業せず、ビジネスを学ぶためにリクルートへ入社する。最終的に起業を決断したのは、新卒3年目に差し掛かった春だった。

「リクルートで働きながらも、自身が立ち上げたウェブスクールを並行して運営していて『いつかは起業したい』という悶々とした思いを抱えていました。2年目のときに同じビジョンを持つ同僚の女性と出会い意気投合し、『いつか”なんて自分が決断しないと一生こないから、やるなら今しかない!』と思い切って2年でリクルートを卒業しました。

初めての登記や投資家へのプレゼンなど連日徹夜、休日も返上して起業準備に没頭し、SHEが誕生しました」。

盛況なのに熱量は上がらない、2年目にリブランディングを決断

2017年4月に創業。見切り発車ではあったものの学生時代やリクルートで知り合った起業家や投資家にヒアリングを重ね、事業計画を作成。最初に始めたのが女性向けコワーキングスペース事業だ。

「創業当時、ニューヨークで『The Wing』という女性専用コワーキングスペースが誕生し、10億円の大型資金調達をしていました。私たちもそこをベンチマークし事業を運営していたのですが、いくら待ってもお客さんは来ない……。日本の場合、米国のようにフリーランス人口が多くありません。女性に絞るとさらに母数が小さくなるので、スケールさせることは現状難しいと判断しました」。

「そこで、コワーキングスペースというハード面を売りにするのではなく、『自分らしく自由に働きたい女性』を支援するためのソフトコンテンツ面をより拡充したいと思ったんです。そうして新たに始めたのが、現在の事業の柱となるキャリア&ライフコーチングスクール事業のSHElikesです」。

当時のSHElikesはウェブデザインやウェブマーケティングなどのITスキルだけでなく、ヨガや料理教室など、さまざまなレッスンを開講していた。連日たくさんの女性が集まり賑わいを見せていたが、福田氏はサービスの価値提供に違和感を持ち始めたという。

「SHElikesでは、未経験の方にも心理的障壁なく気軽にサービスを利用してほしいという思いから、あえてキラキラした女性らしいやわらかい雰囲気のブランディングをしていました。しかし、いつからか、そのふわふわした雰囲気から、『SHElikesに参加するだけで自分も変われる』という受け身の考え方の方も増えてくるようになりました」。

「自分の理想の生き方・働き方に近づくためには、覚悟と努力が絶対的に必要です。夢は誰かに叶えてもらうものではなく、自分自身で掴むもの。その思想を伝えるためには、今のままではダメだと思い、3年目で大きくリブランディングすることに決めました」。

リブランディングによって大きく変化した事業と組織

まず取りかかったのは、CIの見直し。「一人ひとりが自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中をつくる」という変わらないビジョンの下、直近のカスタマーや環境の変化を踏まえ、自分たちの存在価値(Value)を、「固定概念を壊し、自分らしい生き方を勝ち得る『解放の伴走者』」と定義し直した。今までのゆるふわなイメージとは違い、熱狂・力強さ・カオスなどの要素を追加し、ロゴやステートメントも刷新した。

次に、事業内容。従来は通学型で、通えるエリア・時間共に制約があったが、リブランディング後は、場所や時間に捉われず学べるオンライン受講形式に変更。ただオンラインで学ぶだけでなく、コーチングや就職支援など、学習モチベーションを継続できる仕組みも整えた。

同時に組織の立て直しも実施した。創業当初は副業人材や業務委託のみで運営していたが、スポットでの稼働では責任感が発生しづらく、組織に対してのエンゲージメントも上がらないという課題があった。このままでは現場の熱狂度も上がらないと判断し、正社員採用を強化することに。

採用を進めた後は、役員だけでなく社内の全員を巻き込んだCREDO制定合宿を実施。トップダウンではなく、メンバー全員で自分たちのあるべき姿を議論することで、SHEの目指す世界観を共通認識できるようになった。

「私には、SHEに携わっている関係者全員をサステナブルに幸せにしたいという思いがあります。時代はもう令和。『お客様のために、会社の成長のために、自分たちの幸せを犠牲にしなければいけない』という今までの価値観はもう古いと思うんです」。

「例えば、最近話題のお笑い第7世代も、旧来の『人を叩いたりイジったりする笑い』ではなくて、見ている人も演じている人も幸せになるような新しいスタイルのお笑いを提供していますよね。SHEもお笑い第7世代のように、旧来の手法や常識に囚われず、働いている自分達も幸せであると感じられる組織にしたい」。

「だから、メンバーには仕事もプライベートも両立して自分らしく生きてほしいですし、それが実現できる環境を整えたいと思っています。彼、彼女らがロールモデルになることで『私もこういう生き方をしたい』とユーザーの皆様に思っていただければうれしいです」。

福田氏がユーザー第一の目線でいられるのは、自身も現場に立っていることと日々チェックしているハッシュタグの存在が大きい。

「自らデザイナー講座の講師として現場に立っていたので、会員さんの考えや温度感などを肌で感じることができました。また、毎日欠かさず『#シーライクス』のハッシュタグを見ることも大切にしています。会員の方が月に4000件ほどこのハッシュタグで意見や感想を投稿してくれていて。厳しい意見にも目を通すことで、私たちが今何を求められているのか把握することができています」。

コロナ禍で申込者数は2倍に、キャリアと真剣に向き合う女性にSHEという選択肢

2020年9月、7カ月におよぶリブランディングプロジェクトが完了。2020年4月には大きく体制を変え、福田氏がCEOに就任する。共同創業をして3年。今年から、代表取締役として新たな挑戦が始まった。

「コロナ禍による経済への不安と在宅時間の増加により、この機会に自身のキャリアを見つめ直す女性も多く、直近の体験レッスン申込者数はコロナ拡大前の2倍以上に増えました。世の中が大きく変化する今、自分の本当にやりたいことや、自分の本音と向き合って、SHEという選択肢を持ってくれたのだと思います。その人たちの人生に寄り添うための最善のあり方を模索しながら、時代の変化に合わせて柔軟に進化をし続けていきたいです」。


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