【もうすぐ出ますよ!注目の日本車】新型「レヴォーグ」から始まるスバルの超革新

スバル「レヴォーグ」が初のフルモデルチェンジで2代目へと進化する。正式発表は10月15日の予定だが、すでに多くの情報が公開されるとともに先行予約がスタートしている。

先日、新型のプロトタイプに試乗することできたので、今回はその概要を紹介するとともに、実車に触れて感じたいくつかのポイントについて解説したい。

■誕生から6年でスバルを代表する車種に成長

レヴォーグは2014年春、スバルの新規モデルとして誕生した。最大の特徴はステーションワゴン専用車種であること、そして、ボディサイズなどが日本市場向けに最適化されていたことだ。

ステーションワゴンは現在人気のSUVより低重心で、セダンと同等の乗り味を実現。それでいながら、多くの荷物を積み込めるという美点も兼備する。しかし今では、日本や北米での人気は以前と比べて下火となり、かつての勢いは失われている。

しかしそんな日本にも、根強いワゴンファンは存在する。特にスバル車オーナーの中には、かつて大ヒットを記録した「レガシィ ツーリングワゴン」からのワゴン愛好者が少なくない。とはいえレガシィ ツーリングワゴンは、北米市場を重視したクルマ作りを導入するようになって以降、ボディサイズがモデルチェンジのたびに大型化。そして今では、車高を高くして大径タイヤを履かせたクロスオーバー仕様「アウトバック」のみとなり、純粋なステーションワゴンではなくなった。

そうした背景などもあり、スバルは純粋なステーションワゴン専用車であるレヴォーグを世に送り出したのである。さらに、元々は日本市場向けに設計されたモデルでありながら、そのコンセプトが評価され、現在では欧州市場などでも発売。デビューから6年たった今では、スバルを代表するモデルへと成長した。

■コックピットはかつてないインターフェースを構築

間もなく登場する新型レヴォーグも、日本市場を第一に開発されたモデルであることは間違いない。その理由はボディの大きさにある。

新型レヴォーグのボディサイズは、全長4755mm、全幅1795mm、全高1500mm(社内測定値)で、ホイールベースは2670mmとなっている。このうち注目したいのが全幅だ。「1800mmを超えると駐車場などで扱いにくくなる」という日本のユーザーの声を反映した設定になっていて、従来モデルと比べて15mm拡大されているものの、それでも1800mm以下に収められている。

エクステリアデザインは、従来モデルの精悍さを継承しながら、新たにダイナミックさをプラス。エッジを強調したディテールがとても印象的だ。全長は従来モデル比で65mm、ホイールベースは同20mm拡大されているが、それらはこの伸びやかなデザインと、25mm拡大された前後シートの間隔などに充てられている。

ステーションワゴンとして気になるラゲッジスペースは、従来モデル比39Lアップの561Lを確保。荷室の奥行きこそ数値は同じだが、荷室の幅が広がっている。中でも驚いたのは、フロア下に設けられるサブトランク。思わず二度見してしまうほどの大容量で、従来モデル比29Lアップの69Lを確保する。洗車道具はもちろんのこと、ちょっとした旅行カバンなども収められそうな広さだ。

一方、インテリアで象徴的なのは、斬新なデザインのコックピットだ。上級仕様ではメーターがフル液晶化されるのに加え、インパネの中央部分に11.6インチという特大のインフォメーションディスプレイを縦にインストールする。これは、見た目的にも操作性的にも新たなチャレンジで、これまでにないインターフェースを構築している。

また、前方へいくに連れて高くなる、スロープ状のセンターコンソールの採用により、シフトレバーが高い位置にレイアウトされているのも新型レヴォーグの特徴。これは、ポルシェなどのスポーツカーではトレンドとなっているカタチで、シフトレバー操作時にハンドルから手を移動させる距離が短くて済むというメリットがある。

ちなみに新型レヴォーグのトランスミッションは全グレードともAT(CVT)で、走行中、シフトレバーを動かすことはほぼなくことから、こうした構造によるメリットを感じにくい。恐らくこのレイアウトは、同様の構造を継承するであろう次期「WRX」の大きなアピールポイントとなるはずだ。

■ついにスバルも“ハンズオフ”ドライブを実現

レヴォーグ史上初となる今回のフルモデルチェンジでは、メカニズムのほぼすべてが刷新された。

新型は、アッパーボディはもちろんプラットフォームも新しくなり、“SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)”と呼ばれる最新バージョンが採用されている。

エンジンは、177馬力/30.6kgf-mを発生する新設計の1.8リッター水平対向4気筒直噴ターボ(追って、排気量の大きい高出力エンジンが追加されるとのウワサもある)で、トランスミッションも“リニアトロニック”という名称こそ同じものの、中身は一新。ちなみに駆動方式には、スバル自慢の電子制御式4WDシステム“アクティブトルクスプリットAWD”が採用されている。

このほかスポーティグレードの「STIスポーツ」に、スバル車初となる減衰力可変ダンパーが採用されるのも見逃せない。こちらはドイツのZF社製で、走行モードを5段階に切り替えられる“ドライブモードセレクト”に合わせて減衰力が変化する。

これら新メカニズムの積極採用を見ても、スバルにとってレヴォーグがどれだけ重要な車種であるかがうかがえる。それだけに伝えるべきネタは数多あるが、中でもホットトピックといえるのが、スバルが得意とする先進運転支援機能の進化だろう。ついにスバル車も“ハンズオフ”ドライブを実現したのである。

ちなみにハンズオフとは、運転中にハンドルから手を離すことができる機能で、すでに日産自動車やBMWが製品化済み。一定の条件下という制約はあるが、ハンドルから手を離していてもクルマが車線の間をキープしながら走行するよう、ハンドルを制御してくれる。

スバルが“ハンズオフアシスト”と呼ぶ同機能は、同社が長年磨き続けている運転支援システム“アイサイト”の進化バージョン“アイサイトX”搭載グレードに採用されている。フロントウインドウ上部のステレオカメラで、車線や周囲を走る他車など前方の状況を把握し、加えて“3D高精度地図”という従来のナビ用マップとは比べものにならないほど詳細な地図データと、GPSや準天頂衛星“みちびき”の活用で自車位置を正確に把握することにより、ハンズオフドライブを実現した。

ちなみにハンズオフドライブが可能なのは、自動車専用道路を走行中にアダプティブクルーズコントロールを使用している場合で、かつ、50km/hを上限とする“渋滞時”に限定される。また自動運転ではないため、作動中にハンドルから手を離した状態でも、ドライバーは周囲の状況を把握し、すぐにハンドル操作が行える状態でなければならない(これは先行する日産自動車やBMWの各車と同じ)。

今回、そんな新型レヴォーグのアイサイトXをテストコースで試したが、カーブや料金所を模した区間の手前ではしっかりと減速。ウインカー操作による車線変更も確実にアシストしてくれた。さらにハンズオフアシストで印象的だったのは、スムーズなハンドル制御。旋回中は運転経験の豊富なドライバーがそうするように、車線内の少し内側のラインをトレースするなど、人間の感覚を重視したセッティングが施されていて、安心して乗っていられた。

アイサイトXのハンズオフアシストを使えるのは渋滞時のみとはいえ、ドライバーの負担と疲労を大幅に軽減してくれることは間違いない。日々渋滞する都市高速を走る機会の多い人はもちろん、行楽帰りのクルマで混み合う週末や休日の高速道路などでは、メリットを実感できる機会が多そうだ。

一方、今回は路面がフラットなテストコースでの試乗だったため、刷新されたエンジンやプラットフォームによる乗り味の評価は、また別の機会にお届けすることにしたい。それでも、パイロンスラロームではフットワークの軽快さを垣間見ることができたし、発進加速では低速域からの力強さも感じられた。こうした走りの良さは、やはりステーションワゴンならではの美点といえるだろう。

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。


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