透明テレビや巻き取り式スマホ 気になる最新のディスプレイ技術

 

普段何気なく使っているテレビに全く新しい技術を取り入れた製品が中国で販売になった。またスマホの世界でも折り畳み式デザインの製品が増えてくるなど、新しいディスプレイの採用が活発になっている。そこでちょっと気になる最新のディスプレイ技術の動向を見てみよう。

ついに登場したシースルーテレビ
シャオミが新しい体験を提案

低価格なスマホを次々と出しているシャオミだが、実はTV市場でもコスパ重視のモデルを出しておりインドや中国のみならず、ヨーロッパでもテレビブランドとしての存在感を年々高めている。そのシャオミがあっと驚くテレビを発売した。ディスプレイが透けて見える「透明テレビ」だ。もちろんこの透明テレビは試作品ではなく、中国のシャオミの販売店へ行けばその場で買えるという。透明テレビは様々なメーカーが開発しているが、一般消費者向けの製品としてはこれが世界初だろう。

シャオミの透明TV

ディスプレイサイズは55型で1920ⅹ1080ピクセル、本体サイズは1227.5x750x823.11mmで重量は24.96kgだ。最近はやりの4Kには対応しないものの、室内に置いても目立たない、いや、逆の意味で目立つ透明TVはその存在だけでも意義を見出せる製品に違いない。価格は49999元(約77万4000円)。これを高いと感じる人はスペックやブランド重視の大手メーカーのTVを買えばよい。一方、シースルーなテレビに未来を感じる人にとっては100万円出してもおつりがくる価格に安さを感じるのではないだろうか。

背面が透けるとどんな使い方ができるのだろうか?

シャオミがこんな製品を出すと聞くと「どうせ適当なものだろう」と思われるかもしれない。実際、ネット上でもシャオミの技術力を疑問視する声が聞かれた。そもそもシャオミが透明なテレビを作ることなんてできるわけはないのだ。この透明TVに使われる透明な有機ELディスプレイはLGが開発したものである。LGはサムスンと並びディスプレイメーカーとしても大手だ。すでにデジタルサイネージなどにもLGの透明ディスプレイは使われており、最近の例では中国・深センの地下鉄6号線は車両の窓に採用している。つまり地下鉄の窓に映像や広告が流れているのだ。

LGのデジタルサイネージ用透明ディスプレイ

透明スマホは早くても数年後
TCLは巻き取りスマホを開発中

透明TVが実現できるなら、透明スマホが出てきてもいいのかもしれない。実は透明なディスプレイを搭載したケータイはソニーが「XPERIA Pureness」として2009年に製品化している。だがスマホは本体内部に多数のパーツが埋め込まれているため、ディスプレイを透明にした製品を作ることは現時点では難しい。透明スマホの登場はまだ数年はかかりそうだ。

透明ディスプレイを搭載したソニーの「XPERIA Pureness」

スマホのディスプレイは透明化よりも、むしろGalaxy Z Fold2のような折り畳み式のほうに各メーカーが開発を進めている。その中でも全く新しいアイディアのディスプレイと言えるのがTCLが開発中のRoolable Display(巻き取り式ディスプレイ)だ。このディスプレイは自由に曲げることができるので、スマホ本体に巻き付けることができるのだ。

TCLが開発中の巻き取り式ディスプレイを使ったスマホ

巻き取り式ディスプレイのメリットは、スマホのサイズを自由に変えられること。普段は普通サイズのスマホとして使い、必要な時はスマホを横に引き出すことでタブレットの大きさにできる。折り畳み式スマホは開閉操作が必要なうえに閉じたときはスマホのサイズが厚くなってしまう。しかし巻き取り式ディスプレイなら厚みを変えずにスマホのディスプレイサイズを大きくできるのだ。

普通のスマホ(左)をスライドさせると、ディスプレイが伸びてタブレット(右)になる

TCLは子会社にディスプレイメーカーのチャイナスターを抱えている。新しいアイディアのディスプレイはスマホメーカーが開発するというよりも、ディスプレイメーカーが日々研究を行っているのだ。その最新のディスプレイを自社のスマホに搭載できるという点では、サムスン、LG、TCLは他社よりも優位な位置にいるといえる。たとえばサムスンは折り畳みスマホ「Galaxy Fold」を2019年4月にサンプル出荷したが不具合が発生、わずか4か月で改良にこぎつけた。

TCLのスマホ事業は実は長く、アルカテルブランドで日本を含む世界各国で展開を行っていた。しかし特徴ある製品を出すことができず販売量は激減。2019年9月から新たにTCLブランドでスマホを展開中だ。日本でも「TCL 10 Pro」などが販売されている。

TCLは2020年9月3日から5日までドイツ・ベルリンで開催されたIFA2020で、反射型ディスプレイ「NEXTPAPER」を搭載するタブレット「TCL 10 TABMAX」「TCL 10 TABMID」を発表した。この2つのタブレットは一般的な液晶とは異なり、バックライトを必要とせず自然光や室内の明かりを使って画面を表示する。目に優しい上に消費電力が低く、ディスプレイ部分の厚みも薄くできる。この2つのタブレットもTCLのディスプレイ技術を生かした製品と言える。

TCL 10 TABMAX。バックライト不要の新しいタイプのタブレットだ

TCLは他にもスマホの側面までを表示エリアにできるWaterfall Displayも開発中だ。ディスプレイを左右にスワイプすると、側面からまるで滝のように表示が浮き上がってくる様はスマホのディスプレイサイズをより大きく見せる効果がある。また側面にタッチボタンを配置できるので、ボタンレススマホも実現可能だ。すでにファーウェイやOPPOが同様のディスプレイを採用したスマホを発表しているが、数年後にはスマホからは電源ボタンなどの突起物は一切なくなっているかもしれない。

側面まで覆うWaterfall Display

積極的に新しい技術を採用
スマホの未来を考えるシャオミ

透明TVをLGから調達したシャオミは、積極的に最先端の部材を他社から購入して自社製品に組み込むことを得意としている。ベゼルレスをいち早く実現したスマホ「Mi MIX」シリーズの最新モデル「Mi MIX Alpha」は側面のみならず背面までもディスプレイが覆う世界初のスマホだった。残念ながら製品化はされなかったようだが、シャオミの先進性を世間に知らしめることに成功した。

裏面までもディスプレイが覆う「Mi MIX Alpha」

シャオミはもともとは既存のスマホの操作性を高めるカスタムROM、つまりAndroidスマホの標準のユーザーインターフェースを改良する「MIUI」を開発するソフトウェアメーカーだった。やがてスマホの基本構成がコモディティー化されると、一流メーカーの部材をふんだんに取り入れ、MIUIを乗せた爆速かつ低価格なスマホを次々と出していった。いまでこそ2万円台で買える「Redmi Note 9S」などを出しているが、初期のシャオミのスマホはiPhoneやGalaxyの上位機種に匹敵する、ハイエンドモデルばかりだったのだ。

Mi MIX Alphaはそんなシャオミの「世界最高のスマホを作る」という創業時の精神が生かされたスマホでもある。シャオミは部材は開発しないものの、新製品の設計には世の中に出てきた新しい技術を積極的に取り入れているのだ。その姿はシャオミが出している特許を見るとよくわかる。「ディスプレイ分離型スマホ」「カメラ可変型スマホ」などは他社もまだ出していないアイディアだ。折り畳みスマホの片側に欠き取りを入れ、閉じても開いても同じカメラを使えるようする特許など「目から鱗」的な研究も行っている。

シャオミの特許の一例。折り畳みスマホでカメラを共用できる

シャオミのスマホに対する取り組みを見ると、一方では誰もが使える低価格で性能のいいコスパスマホを生み出し、もう一方では先進的な技術を採用して次の世代のスマホを生み出そうとしている。そう考えると透明TVを出したのは、ポスト・スマホとして今度はTVの世界に新しい風を吹き込もうとしているのかもしれない。スマート家電も多数展開しているシャオミから、今後ますます目が離せなくなるだろう。

 


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