見る者をアッと言わせる華麗なプレーで観客を魅了し、バスケットボールの神様と言われた男、マイケル・ジョーダン。そんな彼を足元から支え続けた「エア ジョーダン」もまた、そのプレー同様、後世まで語り継がれる大人気のプロダクトである。
Netflixのオリジナル番組『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』で再び注目を集めている今、あらためて“ジョーダン”の魅力を振り返る。
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Netflixオリジナルシリーズ
『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』独占配信中
NBA史上最高の選手と謳われるマイケル・ジ ョーダンが、シカゴ・ブルズを2度目の3連覇に導いた伝説の1997-98シーズンにスポットを当て、当時の選手や関係者たちの証言、当時の試合映像、オフショットや未公開映像などをもとに構成された、話題のドキュメンタリー番組。
▼本人着用シューズがなんと約6500万円で落札
MJ本人が試合で着用した「エア ジョーダン 1」が、オークションに出品されると報じられたのは今年8月。結果は驚愕の約 6500万円で落札! これによりスニーカー落札価格の最高記録も大きく塗り替えられ、変わらぬ人気を示す形となった。
▼AIR JORDANを探すならここ!
「KICKS LAB.」
国内外からファンがひっきりなしに訪れる人気スニーカーセレクトショップ。ジョーダン・シリーズの品揃えはエリア随一で、中には30万円近くする激レアモデルも。知識豊富なスタッフによる丁寧な接客はビギナーにも嬉しい。
▲KICKS LAB.マネージャー柿沼裕太さん「ジョーダンシリーズの品揃えには自信があります!」
○住所:東京都渋谷区神宮前 4-28-18 ピノ原宿1 階
○営業時間:12:00〜20:00(月曜~土曜日)12:00〜19:30(日曜日)
○休日:年中無休
www.kickslab.com
■1985年、伝説が始まる
まずはマイケル・ジョーダン(以降MJ)が歩んできた栄光のヒストリーを、彼の足元を支え続けてきた歴代AJと共にプレイバック。
その歴史の出発点は1984年。米国の名門ノースカロライナ大学を卒業し、NBAドラフトでシカゴ・ブルズに全体3位で指名された彼は、プロ・バスケットボール選手の仲間入りを果たすやいなや、早速、ロサンゼルス五輪にアメリカ代表チームの一員として参加して頭角を現す。
▲“世界一美しい”とも称されたMJのダンクシュ ート。宙を歩くかのようなその足元には、やはり「 AJ1」の姿があった
翌1985年、入団1年目にして、レギュラーの座を射止めたこの超大型ルーキーに対して、ナイキはシグネチャーシューズを開発する。“まるで空中を歩いているかのよう” と喩えられるほど、対空時間の長い超人的ジャンプ力を誇る彼に相応しく、当時最先端の “エアクッション” が搭載された。そのモデルの名は「エアジョーダン(以降AJ)1」。伝説的シリーズの幕開けである。
当時は白以外のシューズがNBA規定で認められていなかった中、罰金を払ってでも黒×赤のチームカラーをまとったAJ1を履き続けるMJ。その反骨精神と1試合で63得点を記録するなどの活躍もあって、同モデルは大ヒット作となった。
▲当時の広告に添えられたコピーは “WHO SAID MAN WAS NOT MEANT TO FLY(人間は飛べないと言ったのは誰だろう)”
2年後の1987年、チームの得点王となった彼の2代目シグネチャー「AJ2」がデビュー。先シーズンを怪我で泣かされたことを受けて、クッショニングとアンクルサポートを強化。高級志向のデザイン&唯一のイタリア製という異色のモデルとしても知られる。
続く1988年は、ナイキにとってMJの去就を賭けた年となる。AJのデザイナーが、これまでのピーター・ムーアから変わることで移籍話が持ち上がったのだ。
▲肩に掛けられたのは通称 “つま黒カラー ”をまとった「 AJ1」。実際に試合で着用されていたカラーとしても知られる
新たにバトンを託されたティンカー・ハットフィールドは、最新技術〝ビジブルエア”を搭載した3/4カットの「AJ3」を開発。その天才的クリエイティビティはMJを魅了し、契約更新と相なった。1989年には先進素材を使用した「AJ4」が登場。こうして“ジョーダン”は次なるフェーズへと移行する。
■ジョーダン伝説の幕開けを告げる“キング・オブ・バッシュ”
「AIR JORDAN 1」(1985年)
MJ初のシグネチャーモデル。黒×赤の通称 “ブルズカラー” がNBAから規約違反を告げられるも、ナイキが罰金を肩代わりして試合で着用させ続けたという話は、あまりにも有名。カラバリはオリジナル版でも20色以上存在。「近年はミッドやローカットも人気です」(KICKS LAB. 柿沼さん)。キックスラボ販売価格:7万8980円(NIKE AIRJORDAN 1 RETRO HIGHOG【ROYAL】)
▲数あるカラーリングのなかでも屈指の人気のを誇るのが黒×青の通称“ロイヤル”。復刻版もまた高額で取り引きされている
■スウッシュが姿を消したイタリアンメイドの2代目
「AIR JORDAN 2」(1986年)
イタリアンメイドで高級路線へとシフトしたシリーズ第2弾。ナイキの象徴であるスウッシュを排し、ウィングロゴを目立つシュータンに配置。19世紀の女性用ブーツから着想を得たという流線的でミニマルなフォルムが、初期シリーズのなかでも一際、異彩を放っている。
■3/4カット&ビジブルエアジャンプマンと要素山盛り
「AIR JORDAN 3」(1988年)
MJ自身の要望を受けた3/4カットのフォルムに、「エア マックス」で初搭載されたビジブルエアを採用。さらにウィングロゴに替わってジャンプマンマークが登場。「オリジナル仕様のディテールが人気です」(KICKS LAB. 柿沼さん)。後のシリーズに欠かせない要素が凝縮された名作だ。キックスラボ販売価格:4万7080円(NIKE AIR JORDAN3 RETRO OG【 BLACK CEMENT】)
■先進的マテリアルを大胆に採用。 “FLIGHT” を冠する第4世代
「AIR JORDAN 4」(1989年)
引き続き3/4カットを採用。柔軟かつ耐久性に優れたプラスチックラバーやTPUを用いたパーツが、随所に配備された次世代モデル。シュータンには、軽量ハイスペックを示す“FLIGHT”の文字が。「この辺りまではシニア世代でも探している方が多いですね」(KICKS LAB. 柿沼さん)。キックスラボ販売価格:4万5980円(NIKE AIR JORDAN 4 RETRO【BRED】)
■NBA初制覇とドリームチーム結成
90年代に入るとMJそしてAJの進化は、さらに加速度的にスピードを増していく。1990年に5代目としてリリースされた「AJ5」では、MJのプレースタイルと第二次大戦中の戦闘機「P-51」の戦闘シーンを重ね合わせ、デザインに落とし込まれた。
クリアラバーを、アウトソールやアッパー側面に配されたメッシュパネルなど随所に用いることで、近未来的なビジュアルを作りだした同モデルは、強敵たちに苦戦を強いられるブルズを尻目に、折からのスニーカー・ブームに乗って大ブレイク。
アメリカでは、このモデルを巡って殺人事件まで発生したというエピソードからも、当時の熱狂ぶりが窺い知れる。また、シリーズにおいて初めて背番号23を背負ったというのも人気に火を点けた一因。このモデルの登場こそ、のちの“ジョーダン”快進撃の狼煙といえよう。
翌1991年、MJ率いるブルズは悲願のNBA初制覇を達成! 自身もファイナルMVPを受賞し、着用モデル「AJ6」にスポットが当たった。“素足感覚”をテーマに開発された同モデルは、優れたフィット感を実現するインナーブーツ・システムを初採用。さらにこれまでのモデルで培われた技術とディテールを結集した集大成的モデルとして、フェイバリットに挙げるファンも多い。
▲バルセロナ五輪ドリームチームでの1コマ。足元にはオリンピックカラーをまとった「AJ7」が履かれている
続く「AJ7」がリリースされた1992年は、スペインでバルセロナ五輪が開催された年。MJも、もう1人のMJことマジック・ジョンソンと共にアメリカ代表“ドリームチーム”を率いて参加。オリンピックカラーに彩られた「AJ7」を履いてチームを優勝へと導き、自身2度目の金メダルを獲得。
▲シカゴ・ブルズ入団7年目にして初のNBA連覇を達成。トロフィーを手に取材陣に囲まれる姿にも歓喜の表情が滲む
ブルズの選手としては、チーム史上最多勝を挙げ、ファイナル2連覇。さらにワーナー・ブラザーズの人気キャラクター、バッグス・バニーとプロモーションを展開。これまで表に出してこなかったコミカルで親しみやすい一面を見せて、“ジョーダン” のファン層はさらなる広がりを見せる。
■シリーズ初のナンバリング!熱狂的人気は社会現象にも
「AIR JORDAN 5」(1990年)
第二次大戦時代の戦闘機「P-51」にインスピレーションを得て制作されたシリーズ第5弾。アウトソールのクリアラバーや、アッパー側面のメッシュパネル、さらにはクリア樹脂成形のシューレースストッパーなど、これまでになく革新的な素材使いで近未来感を演出。キックスラボ販売価格:5万8080円(NIKE AIR JORDAN 5 RETRO OG)
▲オリジナル版のヒールサイドにはMJの背番号23を刺繍。 中でも黒×銀カラーは、1番人気でマニア垂涎の的に
■悲願のNBA初優勝を支えた初期シリーズの集大成
「AIR JORDAN 6」(1991年)
MJからの要望に基づき “素足感覚” をテーマに開発。低重心に設計されたアッパ ーにはインナーブーツを搭載し、パンチング加工で通気性も確保。ビジブルエアやプラパーツなど過去作の要素に、ラバー製のシュータンやヒールタブなど最新のディテールが融合。キックスラボ販売価格:5万8080円(NIKE AIR JORDAN 6 RETRO【BLACK INFRARED】)
▲漫画『スラムダンク』の作中で主人公・桜木花道が着用。「完全版コミックスの発売によって人気再燃中!」(KICKS LAB. 柿沼さん)
■オリンピックカラーがシリーズ初登場。進化する素足感覚
「AIR JORDAN 7」(1992年)
同時期に発売された「エア ハラチ」シリーズに搭載されていたインナーブーツシステムを採用。ネオプレン素材による優れたフィット感は、前作の素足感覚をさらに追求した結果である。また、このシリーズから新たにジョーダンラインが立ち上がり、現在に至る。キックスラボ販売価格:4万8180円(NIKE AIR JORDAN 7 RETRO【 PATTA】)
▲「オランダ・アムステルダム発のストリートブランド、パタとのコラボモデルは入手困難のレアもの」(KICKS LAB. 柿沼さん)
■引退、MLB挑戦、電撃復帰
▲1993年10月6日、MJは「バスケットボールでやり残したことはない」と引退表明会見を行い、 幼き日に憧れた野球選手に転身。新たなキャリアは1年以上続いたが、最終的にはブルズに復帰して幕を閉じる。こうして引退劇からのメジャーリーグへの挑戦は、彼のヒストリーを語る上で外すことのできないトピックのひとつとなった
1993年、クロスストラップが印象的な「AJ8」を履き、NBA3連覇を達成。自身もチームも順風満帆と思われた矢先、不慮の事件で父親を失う。これが引き金となりMJは突如、引退を表明する。その後、自身の幼少期からの夢であり、亡き父親との約束だったメジャーリーガーに挑戦。野球用スパイクにカスタマイズされた「AJ9」を履き、新たなキャリアを歩み始める。翌1994年、MJが駆け抜けてきた10年間を総括する「AJ10」が登場し、5都市限定モデルの枯渇化が話題となる。
そして1995年3月、MJのNBA電撃復帰で、ジョーダン・ヒストリーの第2章が幕を開ける。そのトップバッターとなったのが、バッシュとしては初となるエナメル×ナイロンの切り替えが印象的な「AJ11」。翌年は“ズームエア”を初搭載し、素足感覚に磨きをかけた「AJ12」を履いてNBA2連覇を達成。
「AJ13」で挑んだ1997年、ブルズ時代の最後のシーズンを6度目の優勝で飾り、1998年プレーオフ・ファイナルの第6戦では、次作の「AJ14」を着用。2度目のNBA3連覇を達成。以降は、復帰と引退を繰り返す。
かくしてMJが実際に着用してプレーしたのは2003年の「AJ18」までだが、今でもシリーズは継続中。素材やデザインを刷新しながら、常に進化の歩みを止めずバッシュ界に多大な影響を与え続けている。
KICKSLAB・マネージャーの柿沼さんは、取材の最後にこんな言葉を残した。「1986年にAJ1が発売されて以来、35年以上に渡って世界中のファンを魅了し続けているという事実。これはもうリスペクトの一言に尽きます」と。
バスケットボール史に燦然と輝く記録の数々を樹立し、世界中の人々の記憶にいつまでも残り続ける男、マイケル・ジョーダン。「エアジョーダン」シリーズとともに、偉大なる“ジョーダン”伝説はこれからも続いていく。
■90年代ナイキの技術を過積載したハイテク機
「AIR JORDAN 8」(1993年)
アッパー中央部のクロスストラップは、ストリートバスケ用シューズ「エア レイド」から。「AJ7」譲りのフィット感をさらに一歩押し進め、激しい左右の動きにも対応する当時最高峰のフィット&サポート力を実現。だがその前衛的な姿は賛否両論を呼んだ。キックスラボ販売価格:2万9480円(NIKE AIR JORDAN 8 RETRO SP)
▲「当時の空気感が反映されたディテールが魅力ですが、通常よりもタイトなのでサイズ選びには要注意!」(KICKS LAB. 柿沼さん)
■MLB挑戦によりコート未踏。むしろ活躍の場はグラウンド
「AIR JORDAN 9」(1993年)
▲前作とは趣きの異なる、アウドアブーツのような質実剛健なデザインに。ヒールには23のナンバリングが記された
■偉大なる10年間の記録を刻んだメモリアルモデル
「AIR JORDAN 10」(1994年)
1995年3月のNBA電撃復帰を待たずにリリースされた10作目。全体的には「AJ9」のシンプルなデザインを継承しつつ、アウトソールにMJが1985年〜94年までの10年間で達成した偉大なる記録を記載。シカゴをはじめとする5都市限定モデルも登場して話題となった。
■エナメル×ナイロン使いは同社のバッシュ史上初
「AIR JORDAN 11」(1995年)
“フォーマルシューズのようなAJ” という要望に従い、堅牢かつ軽やかなナイロン製メッシュと上品なエナメルのトリムをコンビ使いしたことで、これまでになく洗練された佇まいに。ハイとローカットの両方が存在するが、後者は全くの別デザインという点も面白い。キックスラボ販売価格:5万6980 円( NIKE AIR JORDAN 11 RETRO 【CONCORD】)
▲白×黒は通称 “コンコルド”。「圧倒的な人気を誇り、今も復刻されるたびに争奪戦が巻き起こっています」(KICKS LAB. 柿沼さん)
■機能性とデザイン性を高次元でマッシュアップ
「AIR JORDAN 12」(1996年)
NBA2連覇を達成した1996年シーズンに着用。旭日旗をモチーフにしたともいわれる放射状のステッチ、トゥから大胆に伸びるサポートパーツが印象深い。また本作ではシリーズ初となるズームエアを搭載。主にプレーヤーたちから機能性、耐久性ともに高評価を得た。キックスラボ販売価格:4万6200円(NIKE AIR JORDAN 12 RETRO 【INTERNATIONAL FLIGHT】)
▲「発売当時の評価はイマイチでしたが、現在は “シンプルなのに存在感がある” とユース世代に人気です」(KICKS LAB. 柿沼さん)
■デザインモチーフは黒豹。“LAST DANCE”の立役者
「AIR JORDAN 13」(1997年)
体表部分の斑点模様を想起させるアッパーや、足裏の肉球の如きアウトソール、暗闇に光る目玉のようなホログラムエンブレムなど、そのモチーフは“黒豹”。「随所から漂うラグジュアリーな雰囲気もあってか、海外、特にアメリカからのお客さんに人気が高いです」(KICKS LAB. 柿沼さん)。キックスラボ販売価格:6万4680円(NIKE AIR JORDAN 13 RETRO【HE GOT GAME】)
▲俊敏でしなやかなスタイルが “獲物を狩る黒豹” のようだと喩えられたMJ。本作のデザインはそこに起因する
▲このシューズを着用したシーズンに自身2度目となるNBA3連覇を達成。シャンパンシャワーにMJもご機嫌
「AIR JORDAN 14」(1998年)
▲MJの愛車である「フェラーリ550」がデザインモチーフ。写真はキルティングをあしらった現行アレンジ種
「AIR JORDAN 15」(1999年)
▲アメリカ軍の超高速爆撃機「X-15」のプロトタイプをモチーフとした斬新なルックス。本人未着用は「AJ9」以来
「AIR JORDAN 16」(2001年)
▲「AJ5」「AJ6」「AJ11」など歴代モデルの細部や素材をミックスし、脱着可能なシュラウドを装着した2WAY仕様
「AIR JORDAN 17」(2002年)
▲2度目の現役復帰時に着用。アルミ製アタッシ ュケース&CD-ROM付属のユニークな仕様で、大きな話題を集めた
「AIR JORDAN 18」(2003年)
▲F1カーの意匠が落とし込まれたシュラウド一体型のアッパーに、上質な革靴の要素を融合させた高級志向の1足
※2020年9月6日発売「GoodsPress」10月号掲載記事をもとに構成しています
ここで紹介しているエア・ジョーダンは、復刻モデルも含みます。また、価格が記載されているものは店頭およびWebでも販売しているため、在庫がない場合もあります
<取材・文/富永 “トミー ” 修朗 写真/園田昭彦>
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◆これは大アリ!「エアジョーダン3」×「エアマックス1」が誕生!
◆さすがエアジョーダン!新作も復刻も魅惑的すぎ!
◆箱も当時と同じ!エア ジョーダン4が黒赤で復刻!
- Original:https://www.goodspress.jp/features/325314/
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