先日Techableでは、株式会社YE DIGITALと西鉄エム・テック株式会社が共同開発した「スマートバス停」について取り上げた。2021年4月から熊本駅白川口駅前広場にて本格運用が始まるというリリースについてだ。
今回はYE DIGITAL社にメールインタビューを行い、同社が考える従来のバス停の問題点やスマートバス停のメリットなどについて話を伺った。
スマートバス停にできること
ーーまずは、いまあるバス停の問題点について教えていただけますか。
高齢者の免許返納やコンパクトシティなどの政府が示すビジョンでは、公共交通の維持発展が欠かせず、マイカーを持っていない人たちにも移動の自由が担保される社会づくりが肝要となります。
しかしながらバス業界はいま、事業収益性の低下や労働力不足に喘いでおり、バス停の運営維持に対するバス事業者の負担は、人的資源の面でも金銭の面でも非常に大きくなっています。
近ごろ、赤字路線の廃線や減便などが話題になっていますが、今後更なる深刻な公共交通サービスのレベル低下を招きかねません。
ーーそういった問題に対する解決策が「スマートバス停」なのだと思いますが、この構想はどのようなきっかけで立ち上がったのでしょうか。
2017年、弊社と西鉄グループの1社である「西鉄エム・テック」との雑談の中からスマートバス停構想が誕生しました。
上述の課題を抱えるバス停の問題解決を図りたいが、全国に55万基あるバス停の80%以上がオフグリット環境にあり、手が付けられないとの相談を頂いたんです。
東日本大震災以降、日本国内では省電力技術の革新が進み、加えて、弊社のIoTを活用することでスマートバス停が開発可能な状況であることから、西日本鉄道、西鉄バス北九州の協力を得て、2018年より実証実験を開始しました。
ーーでは従来のバス停がスマートバス停に置き換わることで、どのようなことが可能になるのでしょうか。
スマートバス停のメリットはいくつかありますが、まずは乗客に伝えるべき情報をリアルタイムに見やすく伝えることができます。
既存のバス停は掲示物が溢れていたり剥がし忘れによる誤報なども発生していますが、スマートバス停ではこのようなことが起こりません。ダイヤ改正があったとしてもスムーズにその表示を変更することもできます。
これは遅延や運休などのトラブル時にも役立ちます。遅延情報やその理由、あるいは他交通機関への代替え輸送手段などを迅速に表示することで安心感が高まります。
また、拡大表示や多言語表示なども可能となり、多くの方にとって見やすいバス停をつくることができるんです。
ーーなるほど。ではバス事業者にとってのメリットという点ではいかがでしょうか。
従来のバス停がスマート化されると、遠隔操作により全てのバス停掲示物を一瞬で配布することが可能になるので、バス事業者の労働負担を大きく軽減できます。
対お客様サービスの最前線基地であるバス停が電子化されることで、バックオフィスから最前線までの一気通貫の電子化が可能となります。必然的に業務全体の最適化が促され、AIダイヤ編成や、自動運転技術、GTFS(公共交通オープンデータ)とも連動することで、DX化がバス業界の中で浸透していくと想定しています。
また、公共性の高く、メッシュの細く配備されるスマートバス停が新たな社会インフラと根付き、情報ステーション化することで、バス事業者や異業種事業者に、新たな収益機会が得られると考えています。
「Bus Stop as a Service」の重要性
ーースマートバス停の普及にあたりネックになっているのはどのような点でしょうか。
普及に向けた課題は大きく2つあります。
1つ目は規制緩和。バス停は公道上に配置することから、国・地方自治体・警察など、多方面で設置許可が必要となります。各所にスマートバス停を新型バス停として認知して頂きながらの展開を進めています。
国家戦略特区やスーパーシティ法の適用も視野に入れ、規制緩和に取り組んでいます。
2つ目は導入コストです。昨今のバス事業は輸送人員の減少により、収益力が低下しており、新規に投資するためには、国や地方自治体からの助成金を活用するケースも少なくなく、当スマートバス停においても行政支援をお願いしています。
また行政支援のみならず、民間活力の取り込みよる事業共創を図るため、MaaSを含めた異業種コラボレーションを仕掛けています。具体的には、伊藤園様、セブン・イレブン様、スピナ様、AicT様、タイミー様、スイッチスマイル様、各広告代理店様など、大手企業、スタートアップ企業を問わず、オープンイノベーション手法を活用して新たな収益源をつくり、バス事業者に還元可能なビジネスモデルの拡充を図っています。
ーーでは最後に今後の展望について、スマートバス停を通してどのような社会にしたいとお考えですか。
当社では、前述のスマートバス停を通じた異業種コラボを、「Bus Stop as a Service」と定義し、ビジネスモデル拡充を図っています。
狭い国土であるが故に発展してきた世界的にも類を見ない日本独自のバス文化(定時定刻運用)により、日本全国250m~500m間隔で、バス停というレガシーアセットが、現在でもしっかりと根付いてます。
この先人の築いてきた貴重な文化を尊重しつつ、ICTによるDXを推進することで、より活気あふれる次世代の街づくりと、それを支える公共交通ネットワークの発展が図れると考えています。
- Original:https://techable.jp/archives/138856
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:Techable編集部
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