テクノロジーを活用して食品の調達と宅配に関するサービスをより使いやすくしてきた企業が今年、急成長を遂げている。新型コロナウイルスのせいでソーシャルディスタンスを確保するよう求められた(または強制された)数百万人の消費者が、ショッピングや外食を控えて人混みを避けるようにしているからだ。
そのような企業の1つであるGrubMarket(グラブマーケット)が本日、次のステップであるIPOを見据えた新たな資金調達ラウンドについて発表した。同社は、農産物やその他の商品を、消費者およびその他の食品再販サービス業者に供給している企業だ。
グラブマーケットは、消費者から農産物やその他の食品および家庭用品などの注文を受けて配達も行うB2Cプラットフォームであり、食料品店やキット食品会社、その他の食品系テックスタートアップ向けに再販用の農産物を供給するB2Bサービスでもある。同社は本日、シリーズD資金調達ラウンドで6000万ドル(約63億5800万円)を調達したと発表した。
グラブマーケットに詳しい筋からの情報によると、同社は利益を出しており、当初は2000万ドル(約21億1900万円)以上調達する計画はなかったが、その評価額は現在、前回ラウンドの2倍に相当する4億ドル~5億ドル(423億円~529億円)に達しているという。
調達資金の出資元は、BlackRock(ブラックロック)、Reimagined Ventures(リイマジンド・ベンチャー)、Trinity Capital Investment(トリニティ・キャピタル・インベストメント)、Celtic House Venture Partners(セルティック・ハウス・ベンチャー・パートナーズ)、Marubeni Ventures(マルベニ・ベンチャーズ)、Sixty Degree Capital(シックスティ・ディグリー・キャピタル)、およびMojo Partners(モジョ・パートナーズ)によって管理されているファンドとアカウント、および以前の投資会社であるGGV Capital(GGVキャピタル)、WI Harper Group(WIハーパー・グループ)、Digital Garage(デジタル・ガレージ)、CentreGold Capital(センターゴールド・キャピタル)、Scrum Ventures(スクラム・ベンチャー)、その他非公開の参加者だ。以前の投資会社にはY Combinator(ワイ・コンビネーター)も含まれている。グラブマーケットはワイ・コンビネーター主催の2015年冬季クラスに参加している。ちなみに、グラブマーケットの前回の資金調達は2019年4月で、評価額は2億2800万ドル(約241億6800万円)、調達額は2800万ドル(約29億6700万円)だった。
創業者兼CEOのMike Xu(マイク・シェイ)氏は次のように語る。「以前話した上場する計画は変わっていない。ただ、民間市場から問題なく資金を調達できていること、昨年から100%の成長を達成していること、現在(コロナ禍の影響で)IPO市場が不安定であることなどを考えると、正確な上場時期については明言できない」。とはいえ、同氏が近い将来の上場を見据えていることは明らかだ。
同氏は電話とメールの両方で「私の起業経歴において唯一の成功判定基準は、最終的に年商1000億ドル(約10兆5900億円)を達成できるかどうかだ」と話してくれた。「この目標を達成するためなら、粛々とハードワーキングを続ける。15年かかろうと50年かかろうと関係ない」。
この言葉に嘘はないと思う。今回同氏に電話をしたのもカリフォルニアでは深夜の時間帯だった。もう少し早い日中で都合のよい時間はないかと何度も尋ねたが無駄だった(食品ビジネスに忙殺されているため、朝の4時半くらいが最も頭が冴えるのだという)。同氏は落ち着いた振る舞いの大変穏やかな人物だが、この見かけに騙されてはいけない。仕事に対する集中力と意欲はすさまじい。
最近は、食品の購入、従来型の食料品店や実店舗の食品市場の話をするときに、食料品配達企業、レストラン配達プラットフォーム、キット食品サービスなど、アプリを使って利用者に食品や調理を届ける企業が話題にのぼることが多くなっている。利益は上げているもののあまり知られていないグラブマーケットは、こうしたあらゆるカテゴリーに属する食品関連企業を下支えする大手企業としての地位を築き上げてきた。今や、食糧生産者と対消費者企業との間の橋渡し役として重要な企業の1つとなっている。
同社は、市場のディスラプション(破壊的創造)と隙間という形のビジネスチャンスを見出した。食糧生産の世界では、配送業をはじめとする昔からの非テック系産業と同じく、昔ながらのやり方で大量の取引が行われている。そこでグラブマーケットは、食糧サプライチェーンのさまざまなセグメントを高速にかつ効率よく接続するソフトウェアを構築し、それを実行するための物流を提供し始めた。
もちろん、この分野はコロナ禍による健康被害がなくても進化しただろうと思われるが、コロナウイルスの発生と感染拡大によって、食料品宅配の需要が増大しただけでなく、食糧サプライチェーンを構成する各業者が、少ない接触頻度で、なおかつテクノロジーの導入によって効率よくやり取りできるようになったことが、グラブマーケットにとって追い風となったのは確かだ。
グラブマーケットのプラットフォームWholesaleWareによる売上高は、昨年の8倍以上に拡大しており、年間「数億ドル(数百億円)の食糧品卸売取引」を管理するまでになっている。
グラブマーケットのテクノロジーを支えているのはその莫大な取引量だ。まさに「規模の経済性」が機能している。同社は、サンフランシスコのベイエリア、ロサンゼルス、サンディエゴ、シアトル、テキサス州、ミシガン州、ボストン、ニューヨークなどで事業を展開しており、全米で21の倉庫を運営しているという。シェイ氏はグラブマーケットをベイアリアとカリフォルニアのその他の地域における「巨大食料品プロバイダー」と呼んでおり、サンフランシスコベイアリア東部の倉庫には226万キログラム以上の冷凍肉が保存されている。
同社の顧客には、500以上の食料品店、8000件のレストラン、2000社のオフィスが含まれており、Whole Foods(ホールフーズ)、Kroger(クローガー)、Albertson(アルバートソン)、Safeway(セイフウェイ)、Sprouts Farmers Market(スプラウツ・ファーマーズ・マーケット)、Raley’s Market(レイリーズ・マーケット)、99 Ranch Market(99ランチ・マーケット)、Blue Apron(ブルーエプロン)、Hello Fresh(ハローフレッシュ)、Fresh Direct(フレッシュダイレクト)、 Imperfect Foods(インパーフェクトフーズ)、Misfit Market(ミスフィットマーケット)、Sun Basket(サンバスケット)、GoodEggs(グッドエッグス)などの有名企業が名を連ねている。こうした企業は、グラブマーケットから供給された食料品をそのまま再販したり、キット食品などの自社製品に加工して販売したりしている。
グラブマーケットの成長の大部分は同社が扱う農産物と同様に有機的な(M&Aに頼らない自律的な)成長だが、その高い収益性を資金源としてM&Aにより成長した部分もある。同社は今年買収したBoston Organics(ボストン・オーガにクス)とEJ Food Distributor(EJフーズ・ディストリビューター)も含め、過去2年で15社ほどを買収している。
とはいえ、グラブマーケットにも成長期の苦しみがなかったわけではない。シェイ氏によると、食糧品配達業界の他社と同様、今年3月から4月にかけてのパンデミック発生時には大いに困惑したという。「一部の地域では1日あたりの配達量を制限する必要があった。また、新規の顧客は対応できるまで順番待ち状態になった」。それでも、B2Cビジネスは、市場によって差はあるが、3~5倍の成長を達成した。5月までには状況が落ち着きを取り戻し、B2B顧客の一部は各都市がロックダウンされた後も戻ってこなかったが、B2Bカテゴリー全体としては概ね回復したという。
グラブマーケットが企業として従量員と顧客の新型コロナウイルス感染を防ぐため非常に積極的な対策を講じている点は興味深い。ウイルス検査の実施がまったく追いついていない状況で、できるかぎり検査を実施するとともに、ソーシャルディスタンスや消毒なども徹底して行った。
「マスクに関しては強制はされていなかったが、広くマスクを配布した」とシェイ氏はいう。
これまでのところ、それが功を奏しているようだ。同氏によると、今年、検査結果が陽性だった従量員は数人だけだったという。4月に見つかった感染者は、検査ではなく(ミシガン州では検査は実施されていなかった)、毎日のチェックによって判明した。ある従業員に感染の兆候があることがわかったのだ。対応は迅速だった。同社創業以来、また食糧品サプライ業界全体で、最も忙しい時期だったにもかかわらず、施設は2週間閉鎖され消毒が行われた。
このような対応は、不正行為によって多くのリーダーたちに対する信頼が失墜しているように思われる時期において特筆すべきリーダーシップであり、グラブマーケットの力強い成長を後押しするものになる。
「急成長と純利益を継続している確かな実績があるグラブマーケットは、食糧品テクノロジーとeコマース分野のシリコンバレースタートアップとしては極めてまれなケースだ」とセルティックハウスベンチャーパートナーの管理パートナーJay Chen(ジェイ・チェン)氏は言う。「4年間で15倍の規模に成長した同社の創造性と資本効率性は、この分野では他社の追随を許さない。マイクは会社を慎重にかつ持続的に成長させるという素晴らしい仕事をした。同社が全米規模で急成長を遂げる時期にパートナーであることを誇りに思うと同時に、同社のSaaSスイートWholesaleWareの衰えを知らぬ勢いにわくわくしている。この分野では最高のSaaSスイートだ」。
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カテゴリー:フードテック
タグ:食品配達 資金調達 GrubMarket
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(翻訳:Dragonfly)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/10/19/2020-10-05-grubmarket-raises-60m-at-a-500m-valuation-as-food-delivery-stays-center-stage/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Ingrid Lunden
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