スマホのディスプレイを曲げることのできる折りたたみスマホがいくつかのメーカーから登場している。しかしディスプレイの製造コストが高いことからスマホの値段も20万円を超えるなど、誰もが買える製品ではない。とはいえ広いディスプレイを使えるメリットも大きい。「複数画面で価格は高くない」そんなユーザーの声にこたえるように、LGから回転式スマホが登場した。
回転式ディスプレイ搭載スマホ
LGから驚きのアイディアが登場
LGの「LG WING」はストレートスタイルのスマホだ。チップセットにクアルコムのSnapdragon 765Gを搭載、6400万画素カメラをメインに1300万、1200万を加えたトリプルカメラを搭載。ディスプレイは6.8インチというミッドハイレンジクラスの製品だ。まずは韓国で発売になり、価格は約10万円。この価格を出せばハイエンドスマホが買える値段でもある。LGのスマホの人気状況を見てもこの価格はかなり強気、割高と感じられてしまう。
ちょっと気になる点と言えば、フロントカメラが見えないこと。LG WINGはポップアップ式のフロントカメラを内蔵している。画素数は3200万画素とかなり高画質で、セルフィーを好むユーザーにはうれしいスペックだろう。一方で本体サイズは169.5x74.5x10.9mm。やや厚みがあるのが気になってしまう。しかも重量は260gと結構重い。
実はこの厚さと重みがLG WINGの秘密を解くカギとなるのだ。LG WINGを手に持ち、ディスプレイに指先をかけて右に動かすと、なんとその下にディスプレイが隠されているのだ。ディスプレイを回転させていくと90度の位置でちょうど止まる。外見上は「T」の字の形になるのである。まるで翼を広げたような形になることから、LGはこのモデルにWINGという名前を付けたのだ。
それにしてもこんな形のスマホが出てくるだなんて誰も予想もしていなかっただろう。折り畳みスマホはディスプレイを曲げられたら便利だろうなという発想から生まれたし、左右に2枚のディスプレイを並べて畳めるスマホも同じような発想から出てきた製品だ。またディスプレイが2枚あればいい、というアイディアから生まれた両画面スマホも、表も裏もカラーディスプレイの製品が中国メーカーから出てきている。
はるか昔、ガラケー時代にはLG WINGのようにディスプレイをTの字にできるケータイはいくつかあった。しかしディスプレイの下から出てくるのは10キーであり、横画面でコンテンツを見ながら必要な時は10キーで文字を打つためのデザインだった。ところがLG WINGは2つのディスプレイがどちらも表示領域にできるので、今までのスマホにはなかった新しい使い方ができるのだ。
1+1=3にも4にもなる
ウィングディスプレイの可能性
LG WINGの2枚のディスプレイはどのように使えばいいのだろうか。LGは公式でいくつかの使い方をアドバイスしてくれている。たとえば動画やストリーミングビデオを見る時、横向きにした大画面でコンテンツを表示しつつ、下のサブディスプレイに再生や次・前送りボタンなどのコントローラーを表示しておけば便利に操作できる。ちなみにサブディスプレイの大きさは3.9インチ、1240x1080ピクセル。かなり昔のスマホと同じ画面サイズといったところ。サブ的な表示用途なら十分使えそうだ。
ちょっと面白いのがLG WINGをアクションカメラとして使うスタイル。T字のグリップ部分を手で握り、サブディスプレイには動画撮影コントローラーを表示。LG WINGは6軸のスタビライザーを搭載するので手振れに強い。一般的なスマホのようにスマホ本体を横向きに手で持って撮影すると、手振れするだけではなく手のひらの動きで本体が上下左右に動いてしまう。しかしT字スタイルで握れば安定したビデオ撮影が可能になる。スマホに外付けのジンバルを付ける人も多いが、装備が大掛かりになってしまう上にジンバルの充電も必要だ。LG WINGは最近はやりのVlogにも単体で使えるなど、ビデオカメラとしても優れた性能を持つのだ。
このようにLG WINGはT字型にして使うことのできるスマホだが、LGはもっと先を行く使い方を提唱している。それは本体を逆Tの字型にしたり、トの形にする使い方だ。LG WINGをトの字型にして車のダッシュボードに固定すれば、メインディスプレイにナビゲーションアプリを表示しつつ、サブディスプレイでかかってきた電話を受けることもできる。目的地付近についた時に、訪問先と電話しながら地図を確認する、なんて時もこのスタイルで使うと便利だろう。
また逆トの字型の例ではフォトフレームのように、サブディスプレイに写真プレビューを表示しながら、メインディスプレイ側に1枚の写真を表示できる。スマホで撮った縦長の写真もこのスタイルなら見やすいだろう。
そしてゲームをするとき、レースゲームならサーキットの全体像を、ダンジョンゲームならマップを、逆T字にして上になるサブディスプレイに表示すればゲーム進行もはかどる。これまた2つのディスプレイをうまく使い分けるアイディアだ。
なおゲームのように2つのディスプレイに1つのアプリで別々のコンテンツを表示するためにはアプリ側の対応が必要だ。しかし最近はYouTubeのように折りたたみスマートフォン向けに2画面表示できるアプリも増えている。LGもWINGに搭載するAndroid標準アプリの2画面対応化を自社で進めていくだろう。
LGの新スマホ開発プロジェクト
あっと驚くスマホが出てくる
LGはスマホにもう1枚のディスプレイを追加し左右に開閉して使えるスマホを「V60 ThinQ」などすでに複数販売している。また数年前にはディスプレイを強く押しても割れないようにと、画面がたわむ「Flex」シリーズを展開。さらには本体下部にカメラコントローラーやHi-Fi音楽再生アンプを搭載したモジュールを交換できる「LG G5」を出すなどなど、ちょっと変わったスマホを数多く出してきた。一方では最近注目を集めている、ディスプレイそのものが曲がる折りたたみスマホには手を出していない。LGのスマホ開発戦略は最先端の技術であっても他社が先にやっているものはすぐさま手を出さず、別のアプローチから新たなモデルを開発しようとしているのだろう。
LG WINGはLGの新しいスマートフォン開発プロジェクト「Explorer Project」から生まれた製品だという。従来の常識にとらわれず、消費者の新しい生活行動を見直してスマートフォンのデザインを一から見直すことで全く新しい製品を生み出すのが同社のこのプロジェクトの目的だ。LG WINGはディスプレイが1枚というスマホの常識を打ち破ることで生まれた製品なのだ。
Explore Projectでは早くも次の新しいスマートフォンのデザインが示唆されている。それはローラブルディスプレイ・スマホだ。スマホを手に持ち、左右に引っ張ると、ディスプレイが伸びてタブレットになるというデザインである。ディスプレイは普段は本体内に巻き取られる形で収納されており、本体をスライドさせるとディスプレイが自由に伸びて大きいサイズになるのだ。折り畳みスマホのように畳んだ時に本体が厚みを増すこともないこの形状は、もしかすると将来のスマホの標準的な形状になるかもしれない。
もちろん巻き取ることのできるディスプレイの開発は大変だろう。とはいえLGはすでに大型TVに巻き取り式のディスプレイを採用した「OLED TV RX」を開発すみだ。サイズは違えど世界初のローラブルディスプレイ・TVを開発したLGなら、巻き取り式ディスプレイを搭載したスマホを必ずや世に送り出してくれるだろう。果たしていつごろ出てくるのか楽しみだ。
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000130339/
- Source:デジモノステーション
- Author:山根康宏
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