●What’s ビザールウォッチ?
<今月の時計>
Vol.22
HAUTLENCE
ラビリンス
これこそが「キング・オブ・ビザール」
時計の本質は、時間を知らせるための機械である。そしてビザールウォッチは、そこから逸脱したところが面白い。しかしこの時計は、“時計であること”さえも放棄している。
HAUTLENCE
ラビリンス
あなたはこの時計に何を感じるか。
スマートフォンの登場と共に、腕時計はどんどん自由になった。デザインやサイズ、カラーといった外見はもちろんのこと、最高峰の時計技術を駆使したメカニズムを使って、人形を動かしたり、ブラックジャックで遊んだりはたまた“悪魔の音階”を奏でたりと、徹底的に遊んでいる。それこそが時計を超えた「ビザールウォッチ」だった。しかしどの時計も、一つだけ揺ぎ無いルールがあった。それは時間がわかるということ。どれだけ奇妙な表示で、読みにくかったとしても、時間はわかる。だからビザール“ウォッチ”なのだ。
しかし時計の世界は、とにかく奥が深い。時計とは何か? という哲学的な問いを突き付けてくるのが、オートランスの「ラビリンス」である。“迷宮”と命名されたこの時計に出会ったのは2016年のこと。そのあまりにも衝撃的な姿を見て、私はこの「ビザールウォッチ」というテーマを思いついた。いうなればビザールウォッチの始祖といってもいいだろう。では、この「ラビリンス」の何が凄いのか? この時計は、時間さえも表示しない。腕につけるケースの中には金属製の迷路があり、腕を動かしながら金属玉をゴールへと導くというゲームである。たしかに3時位置には時計と同じようにリューズが存在しているが、これはゴール入った金属球をスタート位置に戻すための役目しかない。本当にゲームだけなのだ。
しかもとても高価である。ケース素材はグレード5のチタンを使用し、迷路はレッドゴールド製。そして金属球はプラチナ。しかも迷路は、ベース部分をサンドブラスト仕上げにしつつ、上面はヘアライン、そして斜面には綺麗な面取りを行っている。つまり高級時計と同等の素材と仕上げを施しているということ。ただのゲームではなく、超リッチなゲームなのだ。
この時計を作った「オートランス」は、2004年に創業した新進気鋭のブランドで、大胆な機構やデザインを得意としている。同社の創業者であり、共同CEOを務めるサンドロ・レジネッリは、スイスの実力派時計ブランドでプロダクト・ディレクターを務めていた人物。時計作りに精通しているからこそ、時計の常識を離れた大胆な挑戦が可能になったのだ。しかしいくらなんでも、時刻を示さない時計を“時計”と呼んでいいのだろうか?
一般社団法人 日本時計協会では、時計の定義を「時刻を指示する計時装置」としている。となれば、ラビリンスは時計ではないのかもしれない。
しかし現代の時計には、「人々に豊かな瞬間をもたらす」という役目もあるはずだ。美しい時計であれば、ダイヤルに目を落としただけでも心が休まるし、華やかな色ならファッションに合わせて使いたくなる。忙しい日々を送っているからこそ、追いかけてくる時間から切り離される瞬間も必要であり、それもまた時計の役割なのだ。
オートランス「ラビリンス」で遊んでいるとき、人は必ず笑顔になる。プラチナ製の球をレッドゴールド製の迷路の中で操る瞬間は、きっと無の境地にいるはずだ。それは普通の時計では得られない幸せの瞬間でもある。
時刻を示さないことで幸せの瞬間を作り出すラビリンスは、時間とは何か? 時計とは何か? という人類が何千年もかけて問い続けてきた時計文化という迷宮の、出口なのかもしれない。
HAUTLENCE
ラビリンス
Tiケース、ケース縦37×横42.5㎜。世界限定18本。1,800,000円
問ノーブルスタイリングギャラリー
☎03-6277-1600
http://noblestyling.com/
篠田哲生が断言するビザール度!
視認性★1
メカニズム★1
コンセプト★★★★★5
プライス★★★★★5
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000131074/
- Source:デジモノステーション
- Author:篠田哲生
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