人類を遠い星に連れて行く新推進システム開発のMagdriveが約2億円を確保

新しいタイプの宇宙船推進システムを開発するスタートアップが、スタートレックのような惑星間旅行を現実のものにするかもしれない。Magdrive(マグドライブ)は140万ポンド(約2億円)のシードラウンドを完了した。SpaceXの初期の投資家であるFounders Fundがリードし、Luminous Ventures、7%Ventures、Entrepreneur Firstが参加した。

Magdriveは小型衛星用の次世代の宇宙船推進装置を開発している。同社のエンジンの推力と効率は「ジェネレーショナルリープ(世代を超える飛躍)」であり、他のどんな電気推進装置をも寄せ付けないと同社は述べる。これにより、これまで不可能だった全く新しいタイプのミッションに宇宙産業を開放するという。このエンジンは、より大型かつ高価で、より重い化学推進装置には頼らない。同社は、このエンジンが超低軌道での運用だけでなく、手頃な高速惑星間宇宙旅行を可能にすると述べている。このエンジンはまた、軌道上での製造活動を以前よりはるかに現実的にする。

既存の電気ソリューションは非常に効率的だが推力はかなり低い。化学推進は推力が高いが効率が悪く、取り扱いに危険を伴うため費用がかかる。Magdriveは、同社のエンジンが1つのシステムで高推力と高効率の両方を実現すると言う。

Magdriveのプロトタイプレンダリング。画像:Magdrive

これが機能するなら、Magdriveエンジンは宇宙船をより長く、より速く動かせる。これにより、燃料の節約を心配することなく、複数の高速操縦が可能な衛星(またはXウイング戦闘機?)などの新しい宇宙ミッションに業界を開放できる。現在これを達成するためには衛星に化学推進装置が要るが、打ち上げの際、燃料にかなりのペイロードを必要とする。200kgの衛星は50kgのヒドラジン燃料を必要とし、発射重量だけで135万ポンド(約2億円)のコストがかかる。

共同創業者(およびスタートレックのファン)であるThomas Clayson(トーマス・クレイソン)氏は、プラズマ物理学の博士号を取得し、高度な電磁場の分野に取り組んでいる。同氏は、この分野が惑星間宇宙旅行に必要とされる加速を実現するプラズマ推進開発の基礎になる可能性があることに気づいた。 ロンドンのインペリアルカレッジで、同じように宇宙旅行の夢を持っていた機械エンジニアのMark Stokes(マーク・ストークス)に出会った後、彼らは衛星用の小規模推進装置を作ることに決めた。

だがMagdriveだけではない。他の企業はいわゆる「ホール効果スラスター(推進装置)」を開発している。これは1960年代から存在する技術だ。開発の多くは小型化と重量削減を目的としているが、推力と効率は同じままだ。Busek、Exotrail、Apollo Fusion、Enpusion、Nanoavionicsといった企業が取り組んでいる。一方、Aerojet RocketdyneやMoog ISPなどの豊富な技術ポートフォリオを持つ大規模な多国籍企業は、化学物質の推進力を改善し毒性をなくすことに取り組んでいる。

彼らは技術の適用範囲を拡げて、月や火星など遠距離の目的地に向け、(まずは軌道上の)より大型の有人宇宙船に動力を供給する計画だ。Magdriveのシステムでは燃料費が大幅に削減され再利用も可能なため、化学または原子力ソリューションよりもはるかに手頃な価格で利用できる。

7%Venturesの創業パートナーであるAndrew J Scott(アンドリュー・J・スコット)氏はこう述べる。「7%では『ムーンショット』の野心を持つ創業チームを目指しています。Magdriveを前にすれば、これはもはや単なる比喩ではありません。彼らの革新的なプラズマ推進は間もなく衛星に動力を供給することになりますが、将来的には私たちをより遠い宇宙に連れて行ってくれると思います。衛星の開発に関する英国の知見は世界的に有名ですが、推進力への注目はまだまだ少ないといえます。実際、英国は独自の衛星打ち上げ能力の開発に成功したものの、1970年代に諦めた唯一の国です。開発の中止は間違いなく英国の宇宙部門を停滞させました。ですから、この急成長するセクターで、世界をリードする企業になるというビジョンと野心を持つ新しい世代の英国の宇宙スタートアップの1つであるMagdriveを支援できることに興奮しています」

衛星産業は2020年時点で50億ドル(約5200億円)の規模がある。メガコンステレーション(多数の通信衛星による衛星網)の増加により、2030年までに300億ドル(3兆1200億円)に成長すると予測されている。今後2年間で約5000の衛星が打ち上げられる予定であり、衛星を打ち上げる企業の75%はすでに宇宙で何かを飛ばしている。

Magdriveはオックスフォードのハーウェルにある欧州宇宙機関のビジネスインキュベーションセンターで活動している。

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画像クレジット:Magdrive

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(翻訳:Mizoguchi


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