私にとって、そしてすべてのスタートアップの頭の中にある2021年最大の問題は、世界的パンデミックのような大異変が、ポストパンデミックのイノベーションの中でどのように起きるかだ。おそらく今は、「あ、なるほど!」の瞬間が企業へと具現化するところを見るにはまだ早い段階にいると私は思う。そして、パンデミックが我々の意識に与える真の影響は、事態が収拾し、振り返ることのできる時期がくるまでわからない。
しかし、それが見ていて興味をそそられるものであることは間違いない。2020年、イノベーターとインベスター(投資家)は、黙って立ち尽くし、社会の亀裂や破壊やがれきを目撃することを余儀なくされた。それは屈辱的な年であり、テック業界のほとんどが、室内やどこか遠くやひとりぼっちで費した1年だった。
これまでに私が気づいたリアクションの1つは、必ずしも新しくないが新たな重みをともなったもの、それは摩擦を減らすことに焦点を当てたイノベーションの急増だ。たとえば 「Building in Public」(公開の場でスタートアップを作っていく)やベンチャーキャピタルの切り離しが増えている傾向。あるいは、リモートワークがコミュニケーションを可能にするためのものから、受動的・能動的なコラボレーションを可能にするものへと変わったこと。それどころか、Y Combinator方式を採用して、運営者を投資家に変えるのを支援したり、社員のサイドビジネスをフルタイムの会社に変えるのを支援する人達さえ目にした。
こうしたムーブメントは新型コロナウイルス(COVID-19)のせいで始まったわけではないが、いずれにもパンデミック規模の巨大な注意マークがついている。
これを些細で、取るに足りない動きだと片付けるのは簡単だ。しかし、同僚のDanny Crichton(ダニー・クライトン)記者が指摘した(未訳記事)ように、「時としてベンチャーキャピタルやスタートアップにとって最も重要な変化は、行動を起こすための最後の摩擦を減らすことだ」。
摩擦を減らす、は2021年に向けて我々全員に必要な合言葉のように思える。
イノベーションがもっと多様な人々の集まりから生まれることを、私はずっと願っている。それが女子学生向けのハッカー・ハウスであれ学生と非営利団体をつなぐ学生の立ち上げたサービスであれ。だから新年を迎えるにあたり、どうかみなさんには楽観的になってほしい。
2020年のテック業界は、人々に疲弊と絶望を残したわけではない。人々にエネルギーと万全の準備を与えたのだ。
Qualtricsに2度目の魔法は働くのか?
SAP(サップ)が、Qualtrics(クアルトリクス)が2020年7月にスピンアウトすると発表したとき、本誌のEquityポッドキャストチームはマイクに飛びつき(未訳記事)、一体なぜなのかと思いを巡らせた。数カ月後の現在、新たなS-1書類が提出され状況が見えてきた。Alex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)記者はユタ州拠点ユニコーン(未訳記事)の数字を分析し、これがQualtircsにとって2度目の申請であることを指摘した。
2度目の申請は、Qualtricsが今回こそ上場するため必要な魔力なのか?みなさんには、アレックスによる企業価値と財務状況の分析(未訳記事)を見て自身で判断してほしい。
マイアミとSubstackとClubhouse
もし、1つの小見出に並んだこの3つの単語があなたにあるリアクションを起こさせようとしているなら、Danny Crichton(ダニー・クライトン)記者は何かいいたいことがあるようだ。先週彼はテック関係者の新しいものへの不信感について記事を書き、Substackの伝統的ジャーナリズムに置き換わる未来と、Clubhouseのソーシャルメディア破壊装置としての未来が予想通り批判の的になっていることを指摘した。
即時の成功に対する皮相的な見方は2020年のスタートアップ界における奇妙な力学の1つだ。スタートアップというものに対して、1人か2人のファウンダーと数人の従業員がどうにかして初日から完璧なプロダクトを作り、問題になりそうなことは事前に解決してしまうという期待がある。おそらくそういうスタートアップは世に広まるのが早すぎただけであり、早期のプロダクトを理解する人たちは、プロダクトの進化を理解しないもっと多くの大衆に呑み込まれていくのだろう。
ダニーの主張は、そういう会社には彼ら自身まだ上っ面もなでていないビジョンを遂行する猶予をもう少し与えようというものだ。スタート時点ですべてを正しく行なっていないという理由で、会社を切り捨てることが成長を阻害するという意見に私は同意する。悲観的になるのは簡単だが、あえて楽観主義者になるのも悪くない。
いくつか良いニュースも
屈辱的な時間と楽観主義といえば、本誌のSarah Perez(サラ・ペリッツ)記者がEarlyBirdについて先日、記事を書いた。家族や友達が子供に投資をプレゼントできるアプリだ。
かつてYello.coのVPで、現在EarlyBirdのCOOを務めるCaleb Frankel(カレブ・フランケル)氏が彼らの初期のひらめきについて説明した。
「かわいらしい姪が生まれた数年前に経験した問題からすべては始まりました。私は姪っ子に首ったけで、馬鹿馬鹿しいぬいぐるみに数百ドル(数万円)も使いました。かなりゴミのような贈り物にです」と話す。
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カテゴリー:その他
タグ:ポストパンデミック
画像クレジット:MirageC / Getty Images
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/01/04/2021-01-02-the-mad-rush-to-end-friction-in-2021/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Natasha Mascarenhas
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