記録的な資金調達額と3つのユニコーンの出現で、2021年に向けルーマニアの見通しは極めて明るいと地元の投資家たちは考えている。TechCrunchは最近、8人のルーマニアの投資家に話を聞き、同国が技術系人材プール、ブロードバンドアクセス、安い生活費などによって、業界を超えたリモート優先型グローバル企業の時代に向けて着々と準備を整えていることを認識した。
長い実績のあるルーマニアのコンファレンスHow To Webが発表した最新レポートによると、2020年のルーマニアの活況を示す例として、58のスタートアップが合計3039万ユーロ(約38億5700万円)の資金を調達したという事実がある。この数字はまた、投資総額が前年比6%増、投資件数が同51%増という伸びを見せたことを示している。そして、この伸びの原動力となったのは、初めて資金調達を行う企業の急増だった。
主要産業は、サイバーセキュリティ、企業向けソフトウェア、フィンテックなどであり、ある投資家によれば、多くは「該当分野に関する深い専門知識を持つ超マニアックなチーム」だという。また、別の投資会社は、「当社はルーマニア人の創業者たちに注目している」と語る。しかし、近年は海外移住者が急増しているため、「彼らは世界中どこにでも居を構え起業できる」。
前編では、以下の投資家へのインタビューと回答を掲載する。
- Cristian Negrutiu(クリスチャン・ネグルチウ)氏、Sparking Capital(スパーキング・キャピタル)創業パートナー
- Cristian Munteanu(クリスチャン・ムンテアヌ)氏、Early Game Ventures(アーリー・ゲーム・ベンチャーズ)マネージングパートナー
- Andrei Pitis(アンドレイ・ピティス)氏、Simple Capital(シンプル・キャピタル)創業パートナー
- Bogdan Axinia(ボグダン・アクシニア)氏、eMAG Ventures(eMAGベンチャーズ)マネージングパートナー
Cristian Negrutiu(クリスチャン・ネグルチウ)氏、Sparking Capital(スパーキング・キャピタル)創業パートナー
TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。
ルーマニアのエコシステムは初期段階にあると考えていますので、当社のファンドは業界を選びません。個人的には、サプライチェーン、モビリティ、不動産テック、循環 / 共有型経済などの業界に興味があります。
TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。
一番最近では、デジタルフィットネス業界のスタートアップに投資しました。
TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。
サプライチェーン関連のソリューションを提供するスタートアップが増えてほしいと思いますね。この業界はパラダイム・シフトが必要だと確信していますから。
TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。
(1)どの市場が対象か、(2)製品は優れているか、(3)チームは優秀か、(4)当社との相性はどうか、といったことを検討します。
TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。
マーケティング分野とファイナンス分野は参入が難しいと思いますし、競争するには従来とはまったく異なる何かが必要だと思います。製品とサービスに関しては、マーケットプレイスは、競争力をつけるために進化する必要があります。
TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。
当社はルーマニアへの投資に集中しています。
TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。
ルーマニアのエコシステムはまだ初期段階ですが、急速に成長しています。また、将来の見通しも明るいと思います。当社の投資先も含め、ルーマニアのユニコーン企業が今後増えると確信しています。
TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。
先ほどお答えしたとおり、ルーマニアの投資環境はまだ初期段階ですが、チャンスに溢れており、急速に成長しています。
TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。
ルーマニアではそうはならないと思います。エコシステムは、まだブカレスト、クルージュ、ヤシなどの限られた都市とそれらの都市内のハブを基盤としています。
TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。
従来のHoReCa(ホテル / レストラン / カフェ)ビジネスと全体のトレンドはさておき、コロナ禍の影響はあまり受けていないと思います。実際、不動産テックなどの特定の業界でデジタル化を促進するスタートアップはすべて、コロナ禍の中で成長しています。
TC:御社の投資戦略は新型コロナウイルス感染症の影響をどの程度受けましたか。
当社はできるかぎり通常どおりに行動し、安定したビジネスフローを維持しようと努めています。創業者には、自社のチームと顧客のケアに注力し、現金の扱いには気をつけるように、とアドバイスしています。
TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。
はい。先ほどお話ししたとおりです。
TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。
常に前向きに考え、必要以上にパンデミックを恐れないようにしています。パンデミックはいずれ収束します。
Cristian Munteanu(クリスチャン・ムンテアヌ)氏、Early Game Ventures(アーリー・ゲーム・ベンチャーズ)、マネージングパートナー
TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。
当社の投資対象の地理的範囲が限定されていることを考えると(当社の投資範囲はルーマニア国内のみ)、包括的なアプローチで、多くの業界とトレンドを投資対象として検討する必要があります。一例として、当社は今、広く採用されるようになったテクノロジーを特定分野に適用しているスタートアップに注目しています。たとえばコンピュータビジョンを特定の作物に適用するアグリテックや店舗内の顧客の行動に適用するマーテック、(ウェアラブルデバイスを介して収集した)生体情報を個人ではなくグループの相互作用に適用するアイデア、超軽量ブロックチェーン台帳をインテリジェントビルに適用するアイデア、などです。また、別の投資観点から見た場合、「イノベーションのインフラ」とでもいうべき分野にも注目しています。たとえばAPIを構築するスタートアップなどがこれに該当します。ルーマニアでは、API化がまだ十分に進んでいない状態ですから。
TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。
当社は最近、ソフトウェアライセンスの管理方法を効率化する法人向けのサービスを構築しているスタートアップとの条件規定書に署名しました。このスタートアップは超マニアックな人材と、その分野の深い専門知識を備えており、顧客に多大な価値をもたらしています。
TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。
ゲーム内決済の簡略化(決済とゲーミングの交差部分に構築)を実現するスタートアップ、灌漑サービス(アグリテック)に取り組むスタートアップ、エネルギー分野のNASDAQを構築するようなスタートアップが登場するのを期待しています。
TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。
優れた能力と勇気の両方を兼ね備えた創業者を探しています。そのような人たちは大きな問題にも敢然と立ち向かい、解決策を見出す可能性を秘めています。
TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。
駐車スペースを探すアプリを構築するスタートアップ、誰も必要としないマーケットプレイス、マーケティング用の市販テクノロジー、CRMとERPなどは、多過ぎて飽和状態ですね。
TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。
当社はルーマニア国内のみに投資しており、地元のエコシステムに100%傾注しています。
TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。
ルーマニアは自然に恵まれているため、アグリテックには大きなチャンスがあると思います。ただ、この分野はまだ十分なサービスが提供されていません。他にも、サイバーセキュリティ、エンタープライズソフトウェア、フィンテックは本当によく見かけます。当社のポートフォリオに含まれる20のスタートアップの中では、サイバーセキュリティのスキルでマネージドサービスプロバイダーを実現しているCODA、合成培地テクノロジー用のハブを構築するHumans、相互に対話する農業機器を製造するMechine、陳列棚からデータを収集して分析するTokinomo(店舗内マーケティング)、3クリックで誰でも簡単にサーバーをセットアップできる次世代クラウドテックを構築しているBunnyShellなどがあります。
TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。
ルーマニアのスタートアップエコシステムはまだ揺籃期であり、国内初のVCファンドがEuropean Investment Fund(欧州投資基金)の支援を受けて3年前に設立されたばかりです。それでも、ルーマニア国内に3社のユニコーンが出現しており、他にも多数の有望なスタートアップがあります。豊富な技術系人材プール、広く普及したブロードバンドアクセス、安いビジネス運営費と生活費などの好条件が揃っているため、ルーマニアは目が話せない市場となっています。
TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。
大都市の創業者たちは大都市に残ると思います。スタートアップを立ち上げて運営するのは、リモートのビーチでラップトップを開いてコードを書くのとはわけが違いますから。製品が市場に適合しているかどうかを懸命に調査する際、創業者は、商談、パートナー訪問、契約書の署名、イベント出席、同業者との会合、調査の実施、プロトタイプの作成など、Zoomでは充分に実行できないことを山ほど実行する必要あります。ルーマニアのテック業界とスタートアップ群は、他国同様、パンデミックで大打撃を受けました。そしてやはり他国同様、生き残り、適応して、2020年3月以前の通常の運営にほぼ戻っています。
TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。
残念ながら、都市のモバイルアプリはパンデミックによる制約に苦しんでいます。レストラン、ホテル、従来型イベントに関連するビジネスもすべて大きな影響を受けています。当社はこれらの分野のスタートアップに投資して、パンデミックによる最悪の時期を乗り切れるよう、あらゆる支援を行っています。
TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。
2020年、当社のファンドは、前年比で投資件数は20%減、総投資額で40%減となりました。ですから新型コロナウイルスの影響は甚大です。ですが、ファンドのパフォーマンスで見ると、2020年は良い年だったといえます。当社のポートフォリオの中にも、外部の投資家が参加した新しい投資ラウンドで資金を調達し、評価額の上昇と高い利益率を達成した企業があります。2020年の上半期は被害対策とポートフォリオ企業の支援に終始しましたが、年末に向けて状況の変化が見られ、第4四半期には新しい投資活動も(2019の同四半期を上回るペースで)活発に行われました。VCの支援を受けたスタートアップの場合は、厳しい情勢の中でも資金を調達できる投資家がいるため、必要に応じて支援や追加資金の恩恵を受けることができました。ただし、その他のスタートアップにとっては、はるかに難しい状況だったようです。
TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。
パンデミックが始まったとき最初に気づいたことはおそらく、生産性がピークに達したという事実です。自宅待機が強制された数カ月の間、プロトタイプの制作に取り組んでいた初期段階のスタートアップは作業時間が増え、加速度的に成長しました。人材の定着率も高く、社員は集中して、会社を成功させようという前向きな姿勢と団結する意識があったように思います。実際、スーパーマーケットでTokinomoのロボットが人間の宣伝担当者を置き換えるなど、一部のスタートアップは即座に売上増を記録しました。
TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。
2020年で最も記憶に残っているのは、友人とギリシャの島々をめぐるヨットセーリングを楽しんだことです。あれで充電できて、年末まで仕事をする活力が得られました。そのあとの嬉しい出来事は、12月に、シリーズA投資で当社のファンドのパフォーマンスが向上したことです。
Andrei Pitis(アンドレイ・ピティス)氏、Simple Capital(シンプル・キャピタル)、創業パートナー
TC:通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。
先進的な知的財産を創造している、ルーマニア人や東欧の創業者が起業したスタートアップに投資するとき
TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。
Uniapply.com
TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。
創業者に強い熱意と当該分野の深い理解があり、革新的な知的財産を用いてグローバルにディスラプト(創造的破壊)を起こそうとしているかどうかを見ます。
TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資を検討する際に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。
あまりに多くの人達が、これといった差別化要因もなくプラットフォームを立ち上げるのがどれほど難しいことが理解していないように思います。他のデジタルマーケティングプラットフォームを介して顧客を獲得するのは、そうしたプラットフォームを立ち上げるための、商慣行を逸脱した優位性でもないかぎり、大きな費用がかかります。
TC:御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。
当社はルーマニアの創業者を中心に投資していますが、ルーマニアの創業者も今や世界中どこにでも居を構え、そこで起業できます。ですからルーマニア人創業者によって起業された米国拠点の企業にも多数投資しています。
TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。
ルーマニアは、サイバーセキュリティ、エンタープライズ向けソフトウェア、およびAIベースのエンジンで勝ち残るのに大変良い位置にいると思います。当社のポートフォリオに含まれるpentest-tools.com(ペンテスト・ドットコム)、deepstash.com(ディープスタッシュ・ドットコム)、uniapply.com(ユニアプライ・ドットコム)には本当にワクワクします。また当社のポートフォリオには含まれていませんが、Fintech OS(フィンテック・オーエス)やTypingDNA(タイピングディーエヌエー)にも期待が持てます。
TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。
ブカレストは、グローバル展開へのチャンスに恵まれた、繁栄しているエコシステムです。
TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。
実際、ルーマニアの比較的小さな都市出身の創業者が急増しています。当社は、ルーマニア全体でビジネスを展開しているInnovation Labsプレアクセラレータの創業パートナーでもあり、創業者になることに興味を持つ学生がルーマニア全体で増えていることを実感しています。
TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。
モビリティソリューションは影響を受けています。地域の企業はLime(ライム)のような大手企業に敗北しています。
TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。
パンデミックのせいで多くの投資が延期されましたが、年末に向けてこれらの投資ラウンドを完了させました。創業者にとって最大の懸念は、スタートアップとして技術系の人材を惹き付ける力が低下していることです。問題は、技術系の人材は今や世界中どこでも仕事が見つかるため、給与が高騰している点です。
TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。
はい、そう思います。そうした企業の中には、自宅待機で時間的余裕のできた人たちから生まれた需要の恩恵を受けている企業もあります。
TC:この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。
ワクチンが導入され、ルーマニア国内でワクチンの接種が進んだことですね。極めて迅速な対応でもありませんが、どうしようもなく遅い対応でもありませんでした。ワクチン接種の予約用オンラインプラットフォームも稼働しており、皆が使っています。
Bogdan Axinia(ボグダン・アクシニア)氏、eMAG Ventures(eMAGベンチャーズ)マネージングパートナー
通常、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。
パンデミックによって思いがけず伸びた健康分野と福祉分野は、間もなく変革と成長の時期に入ると思います。すぐに使えるソフトウェアとハードウェアの開発が急速に進んでおり、顧客と規制当局のオープン化も並行して進められています。
最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。
食品配達サービスです。この分野はまだ黎明期ですが、食品、半調理済み食品、日用品、食料雑貨など、消費者向けサービスとビジネスの成長という点で大きな可能性を秘めています。
特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスは何かありますか。
B2CおよびB2B2Cのフィンテック分野は比較的多数のスタートアップが起業していますが、まだ成長の余地があります。
御社の投資全体の中で、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)への投資と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。
ブカレストとルーマニア国内全般に言えることですが、科学技術分野の人材プールという点で大きな可能性がありますし、地域およびグローバルに展開していく拠点としてすばらしい場所だと思います。
他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。
投資先としてはすばらしい都市だと思います。インフラ(インターネットの費用と速度、ハブの数)も整備されており、人材プールも豊富で、投資案件数も過去3年間増え続けています。
パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。
大都市以外でも起業は増えると思いますが、他の地域から創業者が押し寄せてくるということはないと思います。それは、エコシステムとしては良いことだと思います。
御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。
旅行業界は変化への対応に苦慮すると同時に、新しいスタートアップにとって大きな可能性を秘めています。パンデミックの反動で旅行需要が高まる時期があるでしょうが、そのときは従来とは異なるものが求められるでしょう。同時に出張旅行も従来と同じというわけにはいかなくなり、新しい習慣と行動が生まれることになるでしょう。
新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。投資先に含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。
成長のチャンスはあると考えていますし、投資案件に割り当てる投資額も増えています。スタートアップ各社には調達額を増やして早く成長するようにアドバイスしています。
この1カ月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。
世界中でワクチン接種が開始され、結果が出始めていることです。
(後編へ)
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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュー、ルーマニア、ヨーロッパ
画像クレジット:frankpeters / Getty Images under a license.
[原文へ]
(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/02/19/2021-01-23-8-investors-tell-us-the-story-behind-the-romanian-startup-boom/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Mike Butcher,Dragonfly
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