ニューヨークを拠点とするMaisonetteが4年前に創業したのは、幼い子供がいる家族に必要なあらゆるものが手に入るキュレーション型ワンストップ・ショップを目指したことがきっかけだった。
その計画はうまくいっているようだ。同社は手始めにプレッピースタイルの子供向けアパレルを立ち上げ、家庭用装飾品、家具、おもちゃ、家庭用機器、アクセサリーといったカテゴリーを順調に展開してきた。同社によれば、昨年は顧客数が2倍に増え、収益は3倍になったという。コロナ禍で子供向けのおしゃれ着の売り上げはしばらくの間低迷し、同社のスタイルは下火になってもおかしくなかったにもかかわらず、DIYとSTEM教育玩具の売り上げが1400%増となったのだ。
同社は売上高を公表していないが、その成長振りは興味深い。特に、Amazonが衰えを知らない成長ぶりで2018年末頃にアメリカ国内トップのアパレル小売企業になったことを考えればなおさらだ。
こうして見ると、Maisonetteの魅力はこれまでに築き上げた顧客との信頼に負うところが大きい。顧客は、子供向け市場にいっそう注力しているGucciやBurberryのようなラグジュアリーブランドと比べて、同社の商品をハイエンドでありつつも購入しやすいと考えている。
詳しく言うと、従業員数75人の同社には、独立ブランドと提携して他のどこにもないような商品を世に出すことを得意とするマーチャンダイジングチームがあるのだ。
また、Maisonetteは2年半ほど前に「Maison Me」という自社のアパレルブランドを立ち上げた。より手頃な価格で手に入る「高級なベーシック」をターゲットとして中国で生産される商品は、子供が大きくなったり服がだめになったりするたびに繰り返し商品を購入するファミリー層向けに、好調な売り上げを見せていると同社は言う。
Maisonetteの創業者たちがシックなスタイルの目利きであることも幸いしている。共同創業者のSylvana Ward Durrett(シルヴァナ・ワード・デュレット)氏とLuisana Mendoza de Roccia(ルイザナ・メンドーサ・デ・ロシア)氏が出会ったのは、デュレット氏が15年勤務していたVogueマガジンだった。デュレット氏はプリンストン大学卒業と同時に同社に入社し、イベント担当ディレクターとなった(同氏がファッション界での名声を獲得した仕事だった)。ロシア氏は同じ2003年にジョージタウン大学卒業と同時に同社に入社し、Vogueマガジンのアクセサリーエディターを務めて2008年に退職した。
興味がある人のために言うと、彼らの元上司だったのがAnna Wintour(アナ・ウィンター)氏で、2人の擁護者でもある。他にも強力な支持者がおり、中でもNEAの投資家のTony Florence(トニー・フローレンス)氏は、e-コマースの事情通であり、彼の会社を代表しJet、Goop、Casperへの投資を主導した人物である。
NEAはThrive Capitalやグロースステージ・ベンチャーキャピタルのG Squaredと並ぶMaisonetteの出資者だ。G Squaredは3000憶ドル(約31兆8400億円)のラウンドを主導することを発表したばかりだが、これでMaisonetteの資金調達総額は5000憶ドル(約53兆円)になる。
もう一人同盟関係にあるのがMarissa Mayer(マリッサ・メイヤー)氏だ。同氏は2009年にデュレット氏と出会ったが、当時はGoogle初の女性エンジニアにして最もファッショナブルな役員として知られていた。友情が長く続いているだけでなく(メイヤー氏は名前を気に入って、双子の娘のひとりにシルヴァナと名付たそうだ)、メイヤー氏はMaisonetteのボードメンバーでもある。おそらくは、同社が本来の強みを持つ非常に若い顧客層についても、データ戦略の洗練に力を貸したことだろう。
「データとe-コマースに関して非常に役立つことは、特定のライフステージにいる人たちを捕捉できることです」とメイヤー氏は説明する。「ウエディング・レジストリが好まれたのはそうした理由です。結婚して子供を持つと、小売企業は子供の年齢に応じて顧客のニーズと、2年後に欲しくなるものを推測し始めます。」
「サプライチェーンの予測という観点からいうと、在庫の選択や、その瞬間を逃さず捉えるためにも、これらのライフステージを洞察することは非常に重要でありかつ役立つのです」とメイヤー氏は言う。また、メゾネットは事業を拡大し続けているため、このようなシステムは大きな利益をMaisonetteにもたらしてくれる可能性があると同氏は述べた。
確かに、すでに多くのことが同社の思い通りに進んでいる。メイヤー氏の指摘について、ロシア氏によればMaisonetteの昨年の売り上げの半分以上がリピーター顧客によるものだという。さらに、同社からのメールを受信したりソーシャルメディアのチャンネルをフォローしている人々はすでに80万人にのぼる。(Maisonetteでは充実した特集コンテンツをウェブサイトで提供している)
Maisonetteは一部のeコマース事業とは違い、アセットライト戦略を取っている。以前にいくつかのポップアップストアをオープンし、より大規模な小売りへの移行を検討したこともあったが(デュレット氏によれば「今はいったん中止している」とのこと)、同社は自らが管理する倉庫を持たず、商品は同社のサイトが特集するさまざまな小売業者から直接消費者へ発送される。
おそらく最も重要なのは、同社が巨大な成長市場で競争していることだ。米国だけでも子供向けアパレル市場は340億ドル(約3兆6800億円)規模と推定され、世界規模では見ると6300億ドル(約66兆8900億円)にもなる。Maisonetteが現在販売しているのは米国の顧客のみだが、今回の資金の一部を使ってグローバル市場に進出することを計画していると、ロシア氏は語る。同氏はパンデミックの期間中、子供4人とともにミラノで生活しており、一方デュレット氏は自身の子供3人から少し離れ自分の時間を確保するため、1月からほとんど誰もいないブルックリンにあるMaisonetteの本社で仕事をしている。
事実、遠距離のZoomコールで彼らが長い時間話すのは、子供を持つ在宅勤務者が今すぐにも新しい仕事スペースを必要としていることや、バーチャル授業を受けている子供たちの部屋をアップデートすることについてだ。世界的な活動停止を望んだ人はいなかったはずだが、コロナのために家庭用装飾品は「注目されているカテゴリー」だとロシア氏は付け加える。
今2人が追っている他のトレンドについて尋ねた。たとえばMaisonetteは、近年大規模なビジネスになったママと子供のペアルックスタイルを打ち出している。ロシア氏によれば、世界的活動停止が起きていても、これは「巨大なトレンド」であり続けているという。「これは休日のパジャマから始まったのです。それが一大ムーブメントを引き起こして、今は水着やカジュアルウェアがペアルック関連ビジネスのかなりの部分を占めるようにもなりました。」
デュレット氏が気付いたトレンドについて、同氏は笑って「ラマはすごいですね。同社はラマの音楽プレーヤーを販売しているのですが、ホリデーシーズンに何回もサイトに再掲載しなければならないほどでした。」と語り、さらにこう続ける。「虹とユニコーンも。虹とユニコーンは手に入れるのが難しいもののメタファーでもありますが、文字通り在庫を維持しておくのが難しいですね。」
ユニコーンについて、同氏は「ユニコーンは、ユニコーンをモチーフにした商品のことですが」と付け加えた。
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カテゴリー:その他
タグ:ファッション 資金調達
[原文へ]
(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/03/09/2021-02-11-maisonette-is-becoming-a-go-to-brand-for-fashion-conscious-families-heres-the-strategy/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Connie Loizos,Dragonfly
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