コンピューター技術者を目指す若者にまずは学位を取らせるEdTech「Edge Pathways」

4年前、起業家Dan Sommer(ダン・ソマー)氏はTrilogy Education(トリロジー・エデュケーション)を創設し、大学と協力して最新技術の職業訓練をオンラインで個人指導する、大人向けの教育の場を作るという大きな賭けに出た。

2019年、ソマー氏はその企業を2U(トゥーユー)に7億5000万ドル(約820億円)で売却し、今日に至るまで最大のEdTech系エグジットを果たした。そして米国時間3月18日、ソマー氏はベンチャー投資に支援された新たな教育系スタートアップをローンチした。今回は、もう少し早い教育段階からスタートする。つまり高校だ。

Edge Pathways(エッジ・パスウェイズ)というこのスタートアップは、大学と協力して、エンジニアを目指す若者に、難解で、ときに怖じ気づきそうになる科学、技術、教育分野への入口へ導き、大学の1年間修了時の単位を授与する。本日のサービス開始にともないEdge Pathwaysは800万ドル(約8億7000万円)のシード投資を調達したことも発表した。このラウンドは、First Round Capital、Emerge Education、Rethink Education、2Uが主導した。First Round CapitalのBill Trenchard(ビル・トレンチャード)氏は、Edge Pathwayの取締役会に参加することになっている。

ソマー氏の新スタートアップは、すでに企業に雇用され技術を磨いているコンピューター技術者ではなく、コンピューター技術者を目指す若者に、まずは学位を取らせることを目的としている。同氏の2つのスタートアップの違いを尋ねると、突き詰めるなら、学生のサポートを後押しし、最終的に成功に結び付けることが支援者の役割であるの、1つの知見だと彼は答えた。

「この2年間、数多くの企業が才能ある学生を旧式の工学教室に集めようとしてきました」とソマー氏。「もっと早い段階からスタートすることでスキルギャップを解消し、まだ多感で、学習意欲と新しい進路への関心が高い若者たちを多く集められるようになります」。

Edge Pathwaysは、大学の最初の1年間に相当するプログラムと単位を提供してもらえるよう、大学に協力する。Drexel(ドレクセル)やNortheastern(ノースイースタン)の協同プログラムを参考にしたEdge Pathwaysは、旧来の講義中心の教育に代えて、プロジェクトベースの学習とインターンシップの機会に学生を結びつける。つまり同スタートアップは、工学を学びたい若者に扉を開きたい大学のためのサービスプロバイダーということになる。

Edge Pathwaysは、実際に単位が取得できるため、大学の体験入学とは違う。極めて重要な利害関係者である大学に満足感を持ち続けてもらうために、同スタートアップは、プログラムに参加できる学生の選考を大学側に任せることにしている。また、プログラムのカリキュラムも、大学職員を交えて組み立てる。Edge Pathwaysの役割は、プログラムの実施と日々のサポートに限られる。

最初の1年を修了した後も、同社は学生の寄り添い、在学中を通して、指導や就職活動の支援を行う。

このプログラム受講料は1万5000ドル(約160万円)。州内在出身者が減免される学費よりも、わずかに安い。数々の調査が示しているように、STEM(理数工系)学生は、専攻を変えたり、退学してしまったりで脱落者の比率が多い。これでは、エンジニアを求める350万件ほどもある雇用口が満たされないと、ソマー氏はTechCrunchに話した。

Edge Pathwaysの最大の課題は、顧客とのプロダクトマーケットフィットだ。大学と手を組んでカリキュラムを作っているが、それが学生の要望や必要性に適合することが必須だ。そこでの重要な判断は、エンドユーザー抜きに決めるわけにはいかない。当然ながら、ソマー氏は自身の取り組みに自信を見せている。

「非常に多くの学生たちが、特に今の時代、教室で習ったことが外の世界でどう役に立つか、その関連性を見いだせずにいます」と彼は話す。「そのつながりを作るのは大変な作業であるため、大学でそのギャップを埋めてもらうための支援をするモデルを、私たちは開発しました」。

もう1つ、Edge Pathwaysの前に立ちはだかっている大きな課題は、協力者となる大学探しだ。ソマー氏は、最初のパートナーがどの大学になるかの明言は避けたが「じきに」発表するとのこと。特にソマー氏は、当初の提携大学は編入可能な大学になると考えている。理数工系学部で学ぶ学生の4割が編入生だからだ。

「今では大変に多くの大学が、学生の編入に力を入れています」と彼はいう。「こうした猛勉強を要する難しい専攻科目を修了できるよう学生たちを支え、やる気を出すことの意味を与えたい」とEdge Pathwaysは願っている。

野心的な大事業だが、時代遅れの教育方法を自ら淘汰することで、Edge Pathwaysが学生たちに提供する理数工の世界での活躍の機会が、大きく際立つことになるだろう。

カテゴリー:EdTech
タグ:Edge Pathways資金調達STEM教育

画像クレジット:smolaw11 / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:金井哲夫)


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