弁護士がクラウドベースのテクノロジーを使ってより効率的に業務を行うのをサポートしているソフトウェア企業Clio(クリオ)が現地時間4月27日、T. Rowe Price Associates Inc.とOMERS Growth Equityが共同でリードしたシリーズEラウンドで1億1000万ドル(約119億円)を調達したと発表した。
本ラウンドでブリティッシュコロンビア州バンクーバーを拠点とするClioの評価額は16億ドル(約1733億円)となり、ユニコーンステータスを獲得した。Clioの前回の資金調達は2019年9月で、そのシリーズDでは2億5000万ドル(約270億円)を調達した。最新のラウンドにより世界で「初の法務管理ユニコーン」となった、とClioは主張する。創業した2008年からの累計調達額は3億8600万ドル(約418億円)となった。
創業者でCEOのJack Newton(ジャック・ニュートン)氏は、2008年の不況のときに独立弁護士や小さな弁護士事務所が事業運営で苦労しているのを見て、Rian Gauvreau (ライアン・ゴーブロー)氏とともにClioを立ち上げた、という。歴史的に法務管理ソフトウェアは小さな弁護士事務所向けではなく企業を相手とする事業向けのサーバーベースのソリューションに限定されていた、とニュートン氏は話した。Clioはそれを変えるために設立された。
「MicrosoftのWindowsが数十年前にいかにPCのためのOSを定義したかということとよく似ていて、Clioは法律事務所やその顧客のためにクラウドベースで顧客中心のデザインのソフトウェアプラットフォームを開発しました」とニュートン氏は話した。
同社のプラットフォームは、クラウドベースの法務管理、顧客の獲得、法務CRMソフトウェアを提供する、弁護士のための「オペレーティングシステム」として機能することを目的としている。同社は世界100カ国に15万超の顧客を抱える。Clioを使っている弁護士の多くは小さな弁護士事務所所属か独立しているが、同社はLocks LawやKing Lawのような大手にもサービスを提供している。
業界特化型SaaSのClioは法律の専門家がより生産的になり、事務所を大きく育て「法律サービスをさらにアクセスしやすいものにする」のをサポートしているとニュートン氏は述べた。同社はまたクライアントが弁護士を、あるいは弁護士がクライアントを簡単に探し出せるようサポートすることも目指している。
同社の財務状況についてニュートン氏は口を閉ざし、2019年の資金調達以来「爆発的」に成長してきた、とだけ述べた。この成長は新型コロナウイルスのパンデミックと、パンデミックによるあらゆるもののデジタル化によって加速した。現在の評価額は「相応」で「完全な」審査プロセスを経て成し遂げた、とニュートン氏は付け加えた。
Clioは、多くの場合において従来ペンと紙に頼っていた産業に向けたコアテクノロジーの構築にフォーカスしてきた。同社はまた法律テクノロジーを弁護士が使いやすいよう安価なものにすることも目指してきた。
変化は少しずつではあるが、新型コロナによって弁護士はどのように事務所を運営し、いかに法律サービスを顧客に提供するかについて根本的に再評価することを余儀なくされた、とニュートン氏は述べた。
「多くの事務所が、新型コロナでチームがバラバラになる中で、顧客データを事務所に保存することはもはや選択肢ではないと認識しました」と付け加えた。「過去にテクノロジーの受け入れをためらっていた弁護士や法律専門家は突然この新しい現実をすぐさま受け入れることを強制されました。このテクノロジー面での変更は危機対応である一方で、永続的な変化でもあります」。
2018年にClioは初めて買収した。ロサンゼルス拠点の法律テックスタートアップLexicataだ。ニュートン氏によると、Clioは新たに調達した資金でさらに買収する計画だ。同社はまた、引き続き同社のプラットフォームと戦略的提携にも新たな資金を注入する計画だ(同社は最近150以上のアプリと提携した)。
当然のことながら、Clioはスタッフも採用する。具体的には、プロダクトとエンジニアリングのチームを強化するために現在600人の従業員数を40%(250人)増やす計画だ。
「今後数年で当社は、法律サービスが提供される方法を完全に再定義し、クラウドという方法で法的支援へ誰でもアクセスできるようにします」とニュートン氏はTechCrunchに語った。「今回の資金によって計画を促進し、既存の顧客にさらに多くを提供できます」。
Clioは特にEMEA(欧州、中東、アフリカ)のマーケットで成長しており、現在は英国とアイルランドにフォーカスしている。
OMERS Growth Equityのマネージングディレクター、Mark Shulgan(マーク・シュルガン)氏は、同社がClioを何年もの間追いかけてきた、と声明で述べた。
「Clioは明らかにマーケットをリードする法務テック会社としての地位を確立し、今後数十年にわたって成長するでしょう」と話した。
カテゴリー:リーガルテック
タグ:カナダ、Clio、資金調達、ユニコーン企業、弁護士
画像クレジット:McIek / Shutterstock
[原文へ]
(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/04/28/2021-04-27-canadas-newest-unicorn-clio-raises-110m-at-a-1-6b-valuation-for-legal-tech/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Mary Ann Azevedo,Nariko Mizoguchi
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