【達人のプラモ術】ハセガワ「YAMAHA TZR250(1KT)」01/05
戦車や戦闘機、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人による【達人のプラモ術】。今回からは、今年3月に発売されたばかりの完全新金型の精密キット、ハセガワ「YAMAHA TZR250(1KT)」の作り方を5回に分けて紹介。まずはバイクの心臓部でもある【エンジン&フレーム製作編】です。
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中
■ヤマハTZR250(1KT)とは
1983年に登場したスズキのRG250Γは、過激なまでのスタイルと高スペックで人気を博し、レーサーレプリカブームの火付け役となりました。84年にはホンダからNS250Rが、カワサキからKR250が登場。最後発となったヤマハからは1985年にTZR250が登場し、発売と同時に圧倒的な人気を誇りました。
アルミ合金製のデルタボックスフレームとスイングアームを採用し、前後17インチタイヤ、リヤリンクサスに大径フロントフォーク、320mm大径ディスクブレーキなど、ヤマハの市販レーサーTZ250の公道仕様とも言えるハイスペックなモデルとなっています。
TZR250(1KT)は1988年に各部に改良が加えられた後期型(型式2XT)へとマイナーチェンジ(外観上はほとんど同じ)。1989年には後方排気エンジンを搭載した2代目となるTZR250(3MA)が登場、そして1991年には3代目となるV型エンジンを搭載した(3XV)となり1999年に発売を終了しています。しかし今でもTZR250(1KT)は高い人気を持つレーサーレプリカであることは間違いありません。
■特徴的なスタイルとエンジンのディテールも精密再現した「1/12 TZR250(1KT)」
「1/12 TZR250(1KT)」は、バイクモデルでは定評のあるハセガワが創業80年記念キットとして2021年3月に発売した完全新金型の精密キットです。キットは、徹底した実車取材によりTZR250の特徴的なスタイルとエンジンのディテールも精密再現。またカウルを外した状態での製作も可能となっています。ヘッドライト内部とミラーはメッキパーツを採用。白×赤のストロボカラーはデカールで再現しています。
POINT1:小さいパーツはランナーから切り離さずに塗装する
▲インストの指示で各パーツを接着塗装していく
バイクモデルは、エンジンの組み立て、フレーム作り、フレームにエンジンを載せたら足回り、カウルなど外装の取り付け、といった手順で製作を進めていくので、ある意味実車を組み立てるような楽しさがあります。まずは、インスト(説明書)に沿ってエンジンを組んでいきましょう。
▲組み立てたエンジン本体とキャブレター。小さいパーツが多いので接着剤のはみだしを防ぐために流し込み接着剤を使う
はじめに、エンジン本体にキャブレターやクランクケースカバー等を組みつけていきます。プラグ等も別パーツでリアルに再現されていますが、非常に小さいパーツなので、ランナーから切り離す際には折損させないように注意が必要です。
▲プラグも別パーツで再現されている。小さなパーツなのでランナーから切り離す前に塗装する。ゲート部分は後からタッチアップ塗装すればOK
エンジン本体に接着するシリンダーや小さな補機類パーツは、接着してからエアブラシで塗装していきます。色の違う細部は筆で色を重ねることで、接着剤のはみ出しによる塗装の汚れを防ぎます。また、プラグなど小さなパーツは切り離してしまうと塗装が大変になるので、ランナーから切り離す前に塗装してから取り付けるようにします。
■アンダーゲートってなに?
▲ランナーから切り離した際に凸状に出っ張っているのがアンダーゲート部分。パーツの接着面なのが分かる
本キットではアンダーゲートが多用されています。一般的なプラモデルでは、ランナー(枠の部分)とパーツをつなぐゲートがパーツの側面で繋がっています。このゲートをニッパーで切り離すわけですが、その際にパーツ側が傷ついたり、クリアパーツでは細かいクラック(ひび割れ)が入ったりして、白くなってしまうことがあります。
▲アンダーゲートの凸部分研磨してやらないと、パーツが正しく接着できなくなる
▲アンダーゲートの凸部をヤスリで研磨し、パーツが正しく接着できるようしておく
アンダーゲートとは、そうしたパーツ表面の傷つきを防ぐために、ゲートがパーツ接着面に設けられたものをいいます。これにより、パーツを切り離した際に、表面に傷がつきにくくなっているのです。近年、多くのプラモデルメーカーで採用されており、ありがたい配慮ではあるのですが、切り離したゲートが凸となって切断面に残るため、必ず平滑に研磨しなければいけません。これを忘れるとパーツ組み立ての際に隙間が生じてしまうので注意が必要です。
POINT2:塗装でリアルなエンジンを再現する
▲エンジン本体は、Mr.カラー「C92 セミグロスブラック」で、オイルパン部分とキャブレターは「C8 シルバー」で塗装
バイクモデルは、エンジンや足回りなどを精密に再現されたメカが魅力です。キットは、TZRの特徴でもあるデルタボックスフレームやエンジン、足回り等を塗装で再現していくわけですが、エンジンは「セミグロスブラック」、部分的に「ツヤあり黒」や「シルバー」など細かな塗装指定がされています。
▲エンジンの塗装では、Mr.カラーから発売されている黒系塗料を使い分ける
また、エアクリーナーボックスのプラスチックやラジエーターホースゴムといった材質そのものの黒などは、同じ黒でも微妙な色の違いがあるため、Mr.カラーであれば、「C33 つや消しブラック」やゴムの質感を再現できる「C137 タイヤブラック」といった別の黒系塗料を使い分けることで、よりリアルに仕上げられます。
■パイピングのコツ
▲キャブレターに繋がるアクセルワイヤーやプラグコードなどを付属の樹脂チューブをカットして瞬間接着剤で取り付けていく
エンジンのアクセルケーブルやプラグコードなどの再現のため、キットには極細の樹脂チューブが用意されています。このチューブをインストの指示にそって指定の長さにカットして取り付けますが、チューブが細いためピンにうまく差し込めません。そこで、爪楊枝をチューブの切り口に差し込んで、穴を広げてやるとスムーズにパーツに差し込めます。また接着には瞬間接着剤を使用します。
▲ケーブルを取りつける際には、パーツ側の差し込みピンを折らないように注意
POINT3:シルバーの下に黒を塗って金属感をリアルに再現
▲ランナーから切り出したフレームパーツ
TZR250では、美しいアルミ合金製フレームやスイングアームなども外観上大きな特徴となっています。材質の違いを塗分けるエンジン塗装もそうですが、バイクモデルでは塗装での金属感も大きなポイントとなります。キットによっては、メッキパーツでポリッシュ(磨いてつやを出すこと)されたアルミを再現しているものもありますが、本キットでは塗装でアルミの質感を再現しなくてはいけません。
▲「C2 ブラック」で塗装。ピカピカに仕上げて平滑な下地を作る
フレームやスイングアームの塗装は、キットのインストでも指定されているMr.カラーの「C8 シルバー」を使用します。ですが、塗装前にサーフェイサーではなく「C2 ブラック」(ツヤあり黒)を使い、平滑で光沢感のある下地をつくることで、エアブラシでシルバー吹き付けた際の金属的な輝きがより強調されて、リアルなアルミフレームの質感を表現できます。
▲塗装に使用したMr.カラー「C8 シルバー」。エアブラシのみならず、筆塗りでもリアルな金属の質感が再現できる
▲エアブラシを使いシルバーを塗装。薄めに希釈したシルバーを塗装→乾燥→塗装と3~4回程度重ねることで金属感が強調された仕上がりになる
▲塗装が完了したフレーム。塗装面は接着剤が付くと溶けてしまうのでパーツの取り付けには、接着剤がはみ出さないように注意
▲塗装後組み立てが完了したフレーム。細部の黒などは筆で塗装していく
また、スイングアームはインストだとフレームの組み立て工程とは別に指示されていますが、先に組んでフレームと同時に塗装しておくと効率よく製作を進められます。
POINT4:ピンセットを使ってエンジンを組み立て
▲極細のチューブで再現されたアクセルケーブルやスロットルワイヤーなどは取り出す位置が決まっているので、インストをよく確認してワイヤーの位置決めをしつつエンジンを取り付けていく
フレームにラジエーターのリザーバータンク、バッテリー等を取り付けが完了したらエンジンを搭載します。その際にいきなり接着するのではなく、エンジンに取りつけたケーブルがフレームのどの位置から出ているか、ピンセットを使い確認しながらエンジンを接着します。エンジンを固定したらラジエーターを取り付ければ完了です。
▲エンジン本体、エアクリーナーボックスやバッテリー、ラジエーターのリザーバータンクを取り付けた状態
▲エンジンの接着がしっかりと乾燥したらラジエーターを取り付ける
▲エンジンを載せる際はキャブレターが正しくエアクリーナーボックスと繋がるように、またアンダーフレーム(パーツC19)は、エンジンをフレームに接着した後に取り付ける
▲今回完成したエンジン&フレーム
【迷人流!エンジン&フレーム製作のポイント】
「1/12 TZR250(1KT)」は、実車を徹底取材したことにより、TZR250の特徴的なスタイルとエンジンのディテールをかなり精密に再現しています。それをキットでもリアルに再現には、塗装で金属の質感を出すのがとても重要です。塗装の使い分け、重ね塗りなどを駆使して、よりリアルなTZR250にしましょう!
>> 達人のプラモ術
<写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/370252/
- Source:&GP
- Author:&GP
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