CX-5は新鮮味に欠けるって人に!プジョー「3008」は走りも居住性も上出来です

SUVの人気モデルであるマツダ「CX-5」と同等サイズのボディに、抜群の使い勝手を内包したプジョー「3008」。

中でも、マイナーチェンジを受けたばかりの新型は、フランス車らしい個性と走りの良さで日本でも人気を集めそうな秀作だ。

■ルックスの洗練と安全装備の充実で全方位的に進化

今、ヨーロッパの新車市場で最も勢いのあるブランドがフランスのプジョーだ。2021年2月には、EU(欧州連合)27カ国の新車販売においてコンパクトカーの「208」がトップに立ち、2番手の座はコンパクトSUVの「2008」が獲得した。ランキング上位の常連であるフォルクスワーゲン「ゴルフ」やルノー「クリオ(日本名「ルーテシア」)」、トヨタ「ヤリス」などを追い越し、まさかのワン・ツー・フィニッシュを決めたのである。

そんなプジョーのラインナップは、208や「308」、「508」といった3ケタの数字を車名に掲げるモデルが基幹車種で、2008や3008、「5008」といった4ケタの車名を掲げるモデルは、チャレンジングな派生モデルという扱いだ。今回フォーカスするミドルサイズSUVの3008は、ボディサイズが全長4450mm、全幅1840mm、全高1630mmとマツダ「CX-5」とほぼ同じ。つまり、日本の都市部でも無理なく扱える大きさといっていいだろう。

パワートレーンは、1.6リッターガソリンターボや2リッターのディーゼルターボ、そして1.6リッターガソリンターボに大型バッテリーとモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドの3タイプ。最もパワフルかつハンドリンク性能にも優れたプラグインハイブリッド仕様の印象は、先日、お伝えしたので、今回はシリーズ全体に焦点を当てたレポートをお届けしたい。

それにしても大胆な顔つきだ。3008は2021年1月、マイナーチェンジモデルが上陸したが、エクステリアではフロント回りのデザインが大きく変わった。それは従来のプジョー車の概念を覆すもので、なんとも不思議な印象だ。

何より斬新なのは、フロントのグリルとバンパーとの境目がどこだかよく分からないこと。一般的なモデルのフロント回りは、「ここまでがグリル、ここからはバンパー」といった感じで、互いの境界がきっちりしている。しかし、中央がドット状となり、左右に向かって横長のバーやスリットへと変化していく3008のグリルデザインは、見れば見るほど不思議。このフレームレスグリルのどこまでがグリルで、どこからがバンパーなのかは、ぜひ実車に触れてチェックして欲しい。あたかも地上に舞い降りたモダンアートのようである。

一方、リア回りのデザインは、パッと見たところ変化がないように思える。しかしこちらもしっかりリフレッシュされており、コンビネーションランプが2次元的な光り方から立体的なそれになったことで、グッと洗練された印象となった。またウインカーも、光が内側から外側へリレーして光る、いわゆる“流れるタイプ”に変更されている。

ブラッシュアップされたルックスとともに注目したいのが、先進安全支援システムの充実だ。例えば衝突被害軽減ブレーキは、夜間であっても、クルマはもちろんのこと2輪車や歩行者まで検知できるようになるなど、一気に最新仕様へとバージョンアップ。また、前走車に合わせて車速を自動制御するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は、高速道路における渋滞に対応するほか、前走車が停止するとそれに合わせて停止し、そのままドライバーの操作なしに停止状態を保持できる渋滞対応の全車速対応型へ進化している(停止後3秒間までは自動で、それ以上ではドライバーのアクセルペダルもしくはハンドル操作で再発進する)。

■後席や荷室の使い勝手こそ3008の魅力

見た目はもちろん、中身もしっかりとブラッシュアップされた3008の魅力は、どこにあるだろう? デザインという人も少なくないけれど、筆者は絶妙なパッケージングだと見ている。

大きすぎないボディにもかかわらずリアシートはゆったりと広く、その上、ラゲッジスペースも約520Lと広い。また、荷室を拡大すべくリアシートの背もたれを倒す際も、それに連動して後席座面が沈み込んでフラットな荷室を得られるなど、日本車顔負けの使い勝手を誇る(プラグインハイブリッド仕様を除く)。

ひと回りコンパクトな2008でも、リアシートやラゲッジスペースの広さと使い勝手は上々だが、3008ではさらに余裕が増している。

それでいて個性を感じさせるのも3008の魅力だ。例えば、プジョー独自のコックピットレイアウト“i-Cockpit(アイ・コックピット)”は、メーターパネルを高い位置に配置し、その視認性を邪魔しないよう小さなハンドルを組み合わせるのが面白い。その運転感覚には少々慣れが必要だし、好みが分かれるところだが、じっくり乗って慣れてくると、こういったプジョーのチャレンジもアリだと思えてくる。

また、3008は運転席回りのパッケージングがかなり独特だ。フロアに対する着座位置はSUVらしく高めだが、インパネからセンターコンソールにかけての、運転席と助手席とを明確に分けたスポーツカーのようなレイアウトは、SUVとは思えない包まれ感を生み出している。

■SUVとは思えないコーナリング性能を披露

今回のマイナーチェンジでプラグインハイブリッド仕様をラインナップに加えた3008だが、従来モデルでは、日本における販売の約6割がディーゼル車だったという。その理由は、経済性に優れること、そして厚いトルクによる運転しやすさという2点だろう。

今回試乗したのは、そのディーゼル車。停止状態からのスタートで力強く加速してくれる、トルクフルな走りが印象的だ。燃費に優れるだけでなく、燃料価格の安さを活かしたランニングコストの低さもユーザーとしてはうれしい美点だろう。

以前レポートしたプラグインハイブリッド仕様は驚異的なハンドリングの持ち主だったが、ディーゼル車はそれに比べると、少しおとなしい。とはいえ、タイトな峠道をドライブしても、SUVとは思えないコーナリング性能を披露してドライバーを楽しませてくれる辺りは、さすがはプジョーといったところ。こうしたハンドリングの良さも、ライバルに対する3008のアドバンテージといえるだろう。

今、ヨーロッパでプジョーの人気が盛り上がっている大きな理由は「真摯にいいクルマを作っているから」とされている。マイナーチェンジで進化した新しい3008も、プジョーらしい出来の良さをしっかり感じられる秀作だ。

<SPECIFICATIONS>
☆GT BlueHDi
ボディサイズ:L4450×W1840×H1630mm
車重:1610kg
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:177馬力/3750回転
最大トルク:40.8kgf-m/2000回転
価格:473万6000円

>>プジョー「3008」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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