「WF-1000XM3」をレビューしてから2年弱になるが、その間ずっと、Sony(ソニー)のワイヤレスイヤフォンは高性能イヤフォンのスタンダードであり続けてきた。真面目な話、1カ月ほど前に別の新製品をレビューしたのだが、その時もやはり習慣で参照したぐらいだ。
これは、1年ごとのアップグレードサイクルが主流の昨今では珍しいことだ。ワイヤレスイヤフォン分野ではなおさらだ。ソニーが2019年半ばに本格的に参入したときには、市場はすでに混雑していると感じたし、状況は悪化する一方だ。しかしM3は、業界に新風を吹き込んだ。多くのメーカーがミドルエンドとローエンドを競っている中で、ソニーは真にプレミアムなものをリリースした。
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AirPods Proが発売される半年前に、M3は優れたサウンドとノイズキャンセリング機能を引っさげて市場に登場した。後者は今でこそ標準化されているが、ソニーがM3に搭載したときには、ほとんど例のない機能だった。しかし、このヘッドフォンは好評を博したにもかかわらず、ソニーはその次の製品を出すのに2年もかけた。それも無理はない。非常に良いものをさらに改善するのは難しいことだ。
「WF-1000XM4」は待っただけの価値がある、とご報告できてうれしく思う。ソニーは高級ヘッドフォンを得意としているが、この製品も例外ではない。今回のワイヤレスイヤフォンは、さまざまな面で以前のモデルよりも進化している。残念ながら、価格もそれに見合ったものになっている。もしあなたが、M3の230ドル(約2万5200円)は高いと思っていた場合、悪いニュースがある。新バージョンは、さらに50ドルを上乗せした280ドルだ(約3万700円、国内価格は税込3万3000円前後)。
その結果として生まれるいいニュースは、新しいヘッドフォンのリリースで、古い機種(M3)の価格は下がるということだ。軽く検索してみると、さまざまな場所で178ドル(約1万9500円)前後で販売されており、一般的なワイヤレスイヤフォンの価格に近いものとなっている。AirPods Proよりも30ドル(約3300円)高い新価格は、ソニーがスペクトルの中のプレミアムグレード側にあえて踏み込んでいることを意味する。価格を抑えるためのリソースと規模を持っている企業があるとすれば、それはソニーだ。
WF-1000XM4は価格に見合うだけの価値があるのだろうか?もちろん、これはかなり主観的な質問だ。間違いなくいえるのは、現在購入可能なワイヤレスイヤフォンの中で最高の音質を持っている部類に入るということだ。今のところ、オーバーイヤー型ヘッドフォンの体験をイヤーバッドで完全に再現できるとは思えない。しかし、ワイヤレスイヤフォンを使うことには確かな利点がある。それは携帯性と、言葉にできないほど暑い夏の日々に、耳を呼吸させるチャンスがあるということだ。
ワイヤレスイヤフォンはもちろん、フィットネスにも適している。とはいえ、特にワークアウト用のヘッドフォンを探しているのであれば、おそらくこれを第一候補にすべきではない。IPX4相当の防滴性能を備えているので汗をかいても大丈夫だが、このイヤフォンはどちらかというと、飛行機に長時間乗るときや、デスクに座ってジャズのレコードを楽しむようなときに向いている。
その理由の1つは、この製品の大きさだ。前作よりもかなり小さくなったのは確かで(本体はサイズ10%減)、パドル型から外耳道の上にコンポーネントを配置するようになったのは効果的だが、長時間の使用にはまだ少し大きすぎる。また、これは個人差がかなりあるかと思うが、私は長時間装着していると耳が痛くなる傾向があった。MサイズのイヤーピースをSサイズに交換すると圧迫感が少し和らいだが(私はほぼすべての種類のイヤーピースでMサイズを使用する)、Sサイズにすると、アクティブノイズキャンセリング(ANS)機能を最大限に活用するためには必要不可欠な耳への密閉性が非常に悪くなった。それでも、最終的には鈍い痛みがないわけではなかった。
ただ筆者は個人的に、フォームチップイヤーピースであまり良い経験をしたことがないという事実もお伝えしておくべきだろう。シリコンに比べて摩耗しやすく、耳垢がたまりやすい傾向があるのも影響している(この仕事はきれいごとばかりではない)。しかし、高級メーカーがこのルートを採用する理由は、快適性の観点から理解できる。
また、ソニーがサステナブルな紙製パッケージを採用したことにも賛辞を送りたいと思う。見た目は地味かもしれないが、あなたは自分のエレクトロニクスが入っていたパッケージをどれだけ頻繁に見るだろうか?私の中では、地球にとって少しでも良いものはネットプラスだ。そして、この充電ケースは見た目が非常に美しい。
ケースはM3より大幅に小さくなった(40%減)。前機種と比べ、ポケットに入れても邪魔にならないサイズだ。控えめなマットブラックで、上部にはかなり目立つSONYロゴが入っている。マグネットは強力で、イヤーバッドは小気味良くしっかりとケースに収まる。また、お互いにもくっつく。蓋の真下にある薄いLEDストリップは、充電状態に応じて緑または赤に光る。ケースは縦長なので、USB-Cポートは背面に配置されているが、Qi充電器を使ってワイヤレス充電することもできる。
興味深いことに、電池持続時間の公称値はM3と同じだが、数字がシフトされている。オリジナルの前機種では、本体のみで6時間、それにケースが18時間を足していた。今回は本体のみで8時間、ケースでプラス16時間となっている。どちらにしても1日は使える計算だが、私は確かに、実際のイヤフォンに2時間追加されている方を好む。
イヤフォン本体は、ケースよりも少し派手なデザインだ。2つの円が交差するデザインで、上部は耳にぴったりと沿うように設計されている。外側は金属製のマイクがアクセントになっており、上部には2つ目のフラッシュマイクが設置されている。
音質は本当にすばらしい。質の低いイヤーバッドでは聞き逃していた馴染みのある曲のディテールを新たに発見できるような、楽器の分離感がある。また、デフォルトのバランスもすばらしい。ソニーは低音を強調する必要がないので、そこに寄りかかってはいない。このヘッドフォンは、さまざまな種類の音楽やポッドキャストなど、幅広い分野ですばらしいサウンドを提供してくれる。
ノイズキャンセリング機能は、再び業界をリードしている。左のイヤーバッドをタップするだけで、ANCとアンビエントサウンド(外音取り込み)モードが切り替わるが、その違いはまるで昼と夜のようだ。非常に大きな音を出す野菜ジューサーも含め、この製品が遮断できる音には本当に感動した。また、このイヤフォンのBluetoothの範囲にも感心した。
イヤフォンに関しては、品質は値段相応というのが本当のところだ。今回も然り。ソニーは「WF-1000XM4」で再び、高性能ワイヤレスイヤフォンの基準を打ち立てることに成功した。
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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Sony、イヤフォン、レビュー
画像クレジット:Brian Heater
[原文へ]
(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/06/12/2021-06-11-sony-sets-a-new-standard-with-the-wf-1000xm4-earbuds/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Brian Heater,Aya Nakazato
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