気象庁によると国内での1年あたりの竜巻発生確認件数の平均は約55件(2007~2017年、海上竜巻を含む)。家屋の倒壊や車両の横転などの被害は甚大だといいます。
そんな中、気象庁気象研究所は2018年より「AIを用いた竜巻等突風・局地的大雨の自動予測・情報提供システム」の研究開発に着手。そしてこのたび、同研究開発に参画している株式会社インキュビットと共に、竜巻検出AIシステムの汎用性の向上を実現したことがわかりました。
課題は、誤検知
従来の竜巻の検出や予測には、全国各地に設置されている気象レーダーで観測したドップラー速度データが活用されています。ドップラー速度データとは、上空にある雨などの降水粒子を反射波で可視化し、レーダーに近づく風と遠ざかる風を測定することで導出されるもので、上空の風の速度と方向の傾向を観測するために必要なもの。つまり、このドップラー速度データからは、竜巻が発生している箇所に見られる竜巻渦とよばれる特徴的な風向きのパターンを検出できるというわけです。
現在、気象研究所は、過去に発生した竜巻から抽出した竜巻渦のパターンをAIに学習させ、正確な竜巻発生場所を検出するシステムの開発を進めています。しかし山岳地域では、その地形がドップラーレーダーの反射へ干渉し、観測できるドップラー速度データが平地のパターンと異なる場合があり、誤検出が発生するという課題があったようです。
地形データを追加学習
そんな課題を解決すべく、インキュビットと気象研究所は、地形の標高データを特徴量としてAIモデルへ加え、地形特徴を考慮した形での竜巻検知AIの学習を実施。これにより、AIは地形の高さがドップラー速度データの観測へ与える影響の関連性を深層学習することが可能となりました。
その結果、竜巻を捉える検出率を高い水準で維持したまま、山岳地域における過検知を約50%削減することに成功。地形に左右されない汎用的な竜巻検知AIの実用化に期待が高まっています。
今後は、時系列変化の情報・広範囲の雨量データ・一般風のデータなどの多様なデータを複合的にAIに学習させることで、より高精度な竜巻発生検知を行うAIへと進化させる見込みです。そして、実用化が現実味を帯びてきた自動運転車両やレベル4でのドローン飛行などの安全にも貢献していきたいといいます。
(文・Higuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/157314
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口
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