シャオミが7月2日に、SIMフリーの5Gスマホ「Mi 11 Lite 5G」を発売しました。ミドルレンジモデルですが、ハイエンドに近い性能を備えて、おサイフケータイにも対応。約6.81mmという薄さ。価格は4万3800円で、MVNOによってはSIMとのセットでさらに安く買えることも。
▲6.55インチの有機ELディスプレイを搭載。ハイエンドモデルに使われる折り曲げられる薄い有機ELを採用し、「ゴリラガラス6」という強化ガラスで保護されている
▲約6.81mmという薄さで、重さは159g
Mi 11 Lite 5Gは、どういう狙いで作られたモデルなのか? なぜ、こんなに安くできるのか? 東アジア担当ゼネラルマネージャーのスティーブン・ワン氏に話を聞くことができました。なお、インタビューは複数メディアを対象にしたオンラインのグループインタビューで行われました。
▲シャオミの東アジア担当ゼネラルマネージャーのスティーブン・ワン氏。インタビューはZoomを用いて、通訳を介して行われた
■世界的なチップ不足の中、最新チップの搭載を実現
インタビューに先駆けて、ワン氏から、現在、スマホ業界は直面している大きな問題について説明がありました。それはチップセット不足。4Gから5Gへの移行が進み、IoTや暗号通貨、自動車業界でもチップセットの需要が高まる中、コロナ禍やブラックスワン(予測不能な事象)などの影響で、チップセットの製造が追いつかない状況にあるとのこと。
▲コロナの影響で、消費者の購買力が低迷するかと思いきや、実際には4Gから5Gへの移行が加速するなど、業界の判断ミスもチップセット不足に影響しているという
「5Gスマホのチップセットは、工場において従来の2倍以上の生産能力を必要とします。また、ひと口にチップセットと言っても、SoC(CPUを含む、最も重要なシステム)だけでなく、多種多様なチップが使われています。シャオミのスマホには、1デバイスに114ものチップを搭載していて、その1つでも欠けると製造できません。その中で、最も不足が顕著なのがSoCと、ディスプレイと充電に関するチップです。リフレッシュレート(画面の更新速度)の高速化や急速充電に対応させるために、新しいチップの需要が高まっているからです」(ワン氏)
シャオミは「昨年の第二四半期にはこの状況を予測し、他社よりも早く準備に着手した」そうですが、ワン氏は「この状況は、まだ1〜2年続く」と予測しています。
Mi 11 Lite 5Gは、クアルコムが今年の春に発表したばかりの「Snapdragon 780G」という新しいSoCを搭載しています。5nmプロセスで製造するSoCで、前世代の7シリーズ(700番台)からパフォーマンスは50%も向上しているそう。ワン氏いわく「今回の不足で、最も影響を受けたチップの1つ」です。
▲Snapdragon 780G(最大2.4GHz)と6GB RAMを搭載しているためか、サクサクと小気味よい操作感
「他社のミドルレンジモデルは、既存のチップを使って新製品を出しています。従来のテクノロジーを使っているのに、価格を引き上げているメーカーもあります。しかし、シャオミの製品開発への取り組み方は変えていません」(ワン氏)
他社に先駆けて、最新チップを確保できる理由はどこにあるのでしょう?
「シャオミは、スマホ業界において最もチップセットの調達量が多いメーカーです。ただ単に調達するだけでなく、生産ラインを予約して確保するという手法を取っています。もちろん、他社に比べて、よい高く価格で購入していることも、良いチップをいち早く確保できる理由です」(ワン氏)
■ニーズを先読みしてSIMフリーモデルにもFeliCaを搭載
Mi 11 Lite 5Gは、FeliCaを搭載し、日本独自の「おサイフケータイ」を使えることもセールスポイント。今年2月にソフトバンクから発売した「Redmi Note 9T」に続く2台目ですが、SIMフリーモデルに搭載するのは初めてです。
▲FeliCaを搭載し、おサイフケータイに対応。SuicaやPASMOも利用できる
「Redmi Note 9Tは非常に好評で、ソフトバンクの製品の中でも最もよく売れている製品の1つと認識しています。評価された理由は性能と価格(2万1600円)。同じ価格帯で、Redmi Note 9Tに匹敵する製品は市場にありません。今回も同じようなアプローチを考えています。同じ価格帯で最も優れた性能を備えて、さらに競争力を強化するためにFeliCaを搭載しました。なぜ、SIMフリーモデルに搭載したかと言うと、日本のマーケットが大きく変化していて、SIMフリー市場に大きな期待を持てるからです。大手キャリアが新しいオンラインのプランを発表し、楽天モバイルも非常にアグレッシブなプランを発表しています。こうした安いプランを選ぶ人は決して最も安いスマホを求めているわけではありません。費用対効果が高いスマホも求めていると考えています。その上で、弱点のない製品を作ることを目指しました」(ワン氏)
■ハードウエアの利益率は5%までと消費者に約束
Mi 11 Lite 5Gは、最新のチップセットを搭載しているだけでなく、6.55インチの有機ELディスプレイやデュアルスピーカーを搭載。6400万画素をメインとするトリプルカメラも備えています。薄型ながら4250mAhの大容量バッテリーを内蔵し、33Wの急速充電に対応するなど、注目すべきポイントが多い端末です。
▲メイン+超広角+テレマクロの3眼レンズを搭載
▲明るく鮮やかな色で撮影できる
▲手持ちで鮮明な夜景を撮影できるモードも搭載
▲同梱の充電器でスピーディーに充電できる
ミドルレンジでは最高峰と呼べる仕様を実現しつつ、他社より安い価格を設定できる理由はどこにあるのでしょうか?
▲スティーブン・ワン氏は、Mi 11 Lite 5Gの価格の優位性について、OPPO Reno5 AとiPhone 12と比較してアピールした
「理由は3つあります。まず、シャオミは世界で最も効率的かつ優れたサプライチェーンを構築しています。そのため、優れた部品を最も良い価格で調達することができます。次に、シャオミは消費者の皆様に、ハードウェアに関しては5%以上の利益を取らないと約束しています。つまり、弊社の製品の価格は、各工場から調達している価格をもとにして決まっています。3つ目の理由は、マーケティングに関して他社とは異なる理念を持っていること。他社では、製品価格に100ドルから200ドルくらい上乗せして、それを原資にテレビCMを打ったり大規模なキャンペーンを行うといった、伝統的なマーケティング手法が取られています。われわれが同じようにしていたら、消費者に優れた価値を提供することができません。消費者に提供する価値を最大にするために、マーケティングのコストを削減して、それをお客様に還元しています」(ワン氏)
広告を使わずに、ブランド認知を高める方法として、シャオミが積極的に活用しているがSNSです。
「優れた製品を魅力的な価格で提供すると、使った人は誰かに伝えたくなります。実際に日本でもそれは起きていて、スマホブランドの中でもシャオミはTwitterの中で最も話題になっているブランドの1つです。弊社の製品を紹介するYouTubeコンテンツも多く見かけます」(ワン氏)
■日本で求められる機能は、他国とは異なるのか?
シャオミは2019年12月に日本市場に参入しから、まだ2年も経っていません。しかし、すでに日本でも多くのファンを獲得している印象。日本市場でのニーズは、他の国・地域と異なるのかを聞いてみました。
「日本のマーケットは、中国やヨーロッパなどとはかなり異なります。まず、FeliCaが必要とされること。次に、防水性能を重視するお客様が多いこと。FeliCaは必要なテクノロジーと考えて、今回のMi 11 Lite 5Gに搭載しました。防水については、実際に水中で使いたい人は多くはなく、ある程度の耐水性能を求めている人が多いと認識しています(Mi 11 Lite 5GはIP53に対応)。また、市場によってユーザーの習慣も異なります。日本はもともとPCが普及していて、ユーザーの多くは今でもさまざまな作業をPCで行っています。一方、それほど発達していない市場においては、初めて手にするスマートデバイスがスマホという人も少なくありません。そのため、従来はPCで行っていたことも、スマホでできるようにする必要があります。例えば、インドでは、最初に手にする電化製品がスマホという人もいらっしゃいます。そうなると、スマホにテレビ機能を求める人もいます」(ワン氏)
▲Mi 11 Lite 5Gの主な仕様。おサイフケータイは日本向けの仕様。日本のユーザーが有機ELや薄型を好むことも、このモデルを日本市場に投入する理由だという
Mi 11 Lite 5GはSIMフリーで、国内すべてのキャリアの5Gに対応しているとのこと。2枚のSIMを装着して、2つの電話番号で待ち受けられるDSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)にも対応しています。ただし、eSIMには未対応。
▲Mi 11 Lite 5GのSIMスロットには表裏1枚ずつ、2枚のnanoSIMを装着可能。2枚目はmicroSDとの排他利用
「eSIMに普及に向けて、さまざまな取り組みが行われていることは理解しています。われわれも将来に向けた検討をしていて、現在リサーチしているところです。eSIMは、まだグローバルでの普及率は低いですが、消費者に利益になる機能になれば、前向きに検討したいと考えています」(ワン氏)
現時点では、これと言った弱点が見当たらないMi 11 Lite 5G。筆者も1週間ほど使ってみましたが、ストレスなく快適に操作でき、「Netflix」なども満足できる画質・音質で楽しめる。ahamoやpovo、LINEMOなどの新プランのユーザーも検討の価値がありそうです。
<取材・文/村元正剛(ゴーズ)>
村元正剛|iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。
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- Original:https://www.goodspress.jp/news/383749/
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