株式会社博報堂DYホールディングスは、ボリュメトリックビデオのリアルタイム撮影・配信の基礎技術を開発するHolotch Inc.と共に、能楽師・安田登氏主宰のプロジェクト「NOH&」の協力を得て、ボリュメトリックビデオをリアルタイムに双方向で配信する実証実験を実施しました。
通常、高品質なボリュメトリックビデオの撮影・リアルタイム配信には専用のスタジオや高価な専用機材が必要ですが、同実験では持ち運び可能な機材セットと一般的なタブレット端末にて検証を実施。現状の技術的課題と運用時に必要なオペレーションなどを確認しました。
演者がバーチャル共演
ボリュメトリックビデオは、物理空間を3次元の立体映像として記録した実写の立体動画。大きな特徴は、目の前に投影された映像をARデバイスを介して好きなアングルから見ることができることと、VRデバイスを使うことでその映像を別の空間で再生できることです。
今回の実験では、約9.5メートル離れた2つの舞台にそれぞれ立った能演者のボリュメトリックビデオをリアルタイムに相互のステージに配信。スマートフォンやXRグラスを介して鑑賞する人は、目の前の演者とバーチャルで出現したもうひとりの演者が共演するひとつの能舞台を観ているかのような体験ができたようです。
この結果から、今回のような機材でもボリュメトリックビデオの撮影・リアルタイム配信・鑑賞体験が可能であることが確認できたといいます。
ボリュメトリックビデオの可能性
最近では、実空間に人を集めるイベントなどの開催が困難となり、オンラインで開催されるイベントが増加する中、より臨場感や実在感のある映像体験を求める傾向が強まり、それを実現するボリュメトリックビデオへの注目が集まっているようです。
2021年には、松竹株式会社がリリースしたアプリ 「INTO by Shochiku」で楽しむことができるAR歌舞伎コンテンツや、キヤノン株式会社と日本アイ・ビー・エム株式会社が協業して公開された能楽『葵上』のボリュメトリック映像など伝統芸能の楽しみ方を拡張する技術として用いられました。また、ファッション業界では初めてマガシーク株式会社が運営するファッションECサイトにて同技術が採用されています。
このたび、持ち運び可能な機材でも撮影・配信などができるとわかったことで、今後のボリュメトリックビデオの活用シーンが広がったといえるでしょう。例えば、通話時に相手と目の前の空間で向き合いながら話せる次世代のビデオ電話や、遠隔地同士をつないだライブデュオコンサートなど物理的距離を超える新たな体験が実現するかもしれません。
(文・Higuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/157788
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口
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