米ストロング国立演劇博物館は、『DOOM』を作る前のid SoftwareがMS-DOS PC用に移植した『スーパーマリオブラザーズ3』のデモ入りフロッピーディスクを入手したことを発表しました。この歴史的な逸品は将来にわたって保存され、研究者向けに公開されるとのことです。
このデモは、2003年に出版された書籍『Masters of Doom』に存在が記録されており、過去に開発された事実は知られていました。当時まだ「Ideas from the Deep(IFD)」と呼ばれていたid Software社は、1990年に米国で発売された「スーパーマリオブラザーズ3」の公式PC移植版を開発する契約を得るために1週間以内にコーディングして任天堂に持ち込んだという経緯です。
本作で特筆すべきは、id Software創設者の1人であり伝説級プログラマーとして著名なジョン・カーマック氏が手がけた横スクロールのアルゴリズムです。そこには80年代後半のDOSゲームでありがちだった背景の動きの乱れや1画面ずつの切り替えもなく、まるでゲーム専用機で動かしているようなスムーズさ。ストロング博物館でデジタルゲームを担当するアンドリュー・ボーマン氏は「当時のPCゲームを見てみると、任天堂のヒット作に見られるようなスムーズなスクロールを備えたタイトルはありませんでした」と語っています。
結局、任天堂は「スーパーマリオ3」のPC移植を即座に断りましたが(カーマック氏が当時の悔しさを語ったことも)、id Software社は「拒絶されたことにもめげず、その技術が大ヒットした横スクロールアクションゲーム『Commander Keen』に活かされたーーボーマン氏はそう語っています。
このデモの存在が広く知られることになったのは、ジョン・ロメロ氏(カーマック氏と同じくid Software創設者で『DOOM』生みの親の1人)自らが2015年に公開した動画でした。その年はちょうど『Commander Keen』発売25周年であり、記念に公開したものと思われます。
その元になったデモが博物館に寄贈されたソフトウェアのコレクション中にあり、ボーマン氏は驚いたとのこと。寄贈してくれた人はゲーム開発者でしたが、自分で作ったわけではなく、仕事の合間にもらったものだそうです。
ボーマン氏はまずオリジナルのフロッピーをイメージ化し(物理的な媒体を保存するため)、エミュレータで実行して2015年のビデオと比べて内容を確認したと語っています。そして一般には公開されていないステージ1-4や、レベル1-1の左上に星とキノコで綴られた自己主張たっぷりの「IFD」のロゴなどを自らの目で確かめられたとのことです。
さらにボーマン氏は、初期のデモゆえの粗削りで多くの機能も欠けているものの、「スーパーマリオ3」を象徴する最初のステージを再現した『1-1』は素晴らしいものです」と述べています。
このデモは、記事執筆時点では研究者やその他の関係者の要望に応じて提供されるに過ぎず、博物館やその他の場所でも一般公開する予定はないとのことです。しかしボーマン氏は、そのような展示を行う機会は「将来的にはいくらでもある」として含みを持たせています。
もしも今回のデモが製品化にこぎ着けていたならば、任天堂とid Softwareという2つのトップ企業が提携し、90年代のPCゲームに革命をもたらしていた可能性がありそうです。特にジョン・カーマック氏はFPSゲームの生みの親ともいわれ、後にVRゴーグルOculus Riftを育て上げた3Dゲーム界の巨人でもあり、任天堂が協力を得られていたならバーチャルボーイも違った運命を辿ったのかもしれません。
(Source:Ars Technica。Engadget日本版より転載)
関連記事
・伝説のコーダーであるジョン・カーマックはOculusを辞職、個人的AIプロジェクトを追求
カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Alfonso John Romero / ジョン・ロメロ(人物)、id Software(企業)、Oculus(企業)、John Carmack / ジョン・カーマック(人物)、スーパーマリオ(製品・サービス)、Doom(製品・サービス)、任天堂 / Nintendo(企業)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/07/15/doom-supermario3-port-pc/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Engadget Japanese
Amazonベストセラー
Now loading...