私たちの会社には、月次の社内ブッククラブがある。それは夕方に行われるもので、チーム全員が参加しているので(そう、私たちはブッククラブにはまっている)、4月20日の夕方、1人のチームメンバーがブッククラブ開始の数分前に、自身が不在となるであろうことを私たち全員に知らせたのは理に適っていた。
彼はミネソタに住んでおり、Derek Chauvin(デレク・ショービン)被告の裁判の評決が間もなく下されるところで、雰囲気は緊迫していた。彼は集中することができず、チームの他のメンバーに不参加の意思をSlackで伝えた。いくつかのサムズアップ絵文字が返され、ブッククラブが開始された。
数日後、経営陣との話し合いの席で何人かの幹部が、自身のチームメンバーがブッククラブの状況を話題にしたことに言及した。それについて何かが感じられた。キャンセルすべきだったのだろうか?どのような理由があっても個人的な時間を自由に取ることができることを、みんなに再認識してもらえただろうか?誰も的確な答えを持ち合わせていなかったが、より思慮深いアプローチを熟考し、実現する機会のように感じられた。それは私たちのチームが急速に成長し、リモート環境に置かれているという状況において、特に重要な意味を有するものだ。
この1年、私たちは、仕事をする中で非常に重要な出来事が起こっているときに、それが私たちの集団的な良心に入り込み、仕事と生活の間の境界が薄くて穴だらけであると認識させられる瞬間を何度となく経験した。企業は、こうした出来事についてチームとどのように話し合うか、あるいは話し合うべきかどうかという課題に直面している。
インクルーシブな企業を発展させるためには、世界で起きていることのためのスペースが必要であるとほとんどの企業は考えている。一方で「政治的なこと」という曖昧な言葉とは切り離して企業は存在すべきだという相反する意見もある。
私は陸軍に何年も所属していたので「黙って仕事をしろ」という考え方には慣れている。例えば政治的な問題に関して、辛口の兵士たちは次のようにいうだろう。「陸軍が意見を求めているならそうしているはずだ」(意見したいことは多くあったが)。
しかし、それは私が考える会社づくりの様相とは異なっている。私たちの「仕事の自分」は、世界で起きていることと切っても切れない関係にあると私は信じている。波立つ水面をどう進むべきか正確にはわからないが、前述した最近の経験は、私のチームがいくつかの教訓を具体化するのに役立つものとなった。
「政治的なこと」がチームに影響を与えるときのためのスペースを確保する
数カ月前、私は仕事の準備をしながら「The Daily」を聞いていた。エピソードは、兵役中に性的嫌がらせを受けていた陸軍兵士Vanessa Guillen(ヴァネッサ・ギレン)氏の殺害に関するものだった。陸軍がどのようにしてヴァネッサを失望させたかについての彼女の母親の話を聞いて、胸が張り裂けそうになった。私は泣いた。制服を着ていた私自身の経験がよみがえり、その朝はじっくり考えて書き物をする時間が必要だった。私は自分のスケジュールの中でいくつかのことを変更し、準備ができるまで仕事を始めることはなかった。
個人的な時間を必要とする許容可能な理由について指示を出すことは、企業の役割ではないと思う。そうではなく、賢明で意欲的な人材を採用し、その適切な意思決定を支援するフレームワークを与えることが重要だ。
私はその朝、時間が必要だった。個人的な時間を必要とする理由として何が受け入れられ、何が受け入れられないかを決定するのは、企業が果たすべき役目ではないと私は考えている。そうではなく、賢明で意欲的な人材を採用し、その適切な意思決定を支援するフレームワークを与えることが重要だ。
当社のワーキングフレームワーク(私たちにとって企業文化の構築は進行中の仕事であるため「ワーキング」と表現している)は、Netflixから拝借しているところが大きい。すなわち、自由と責任から成るデュアルコンセプトを採用している。Ethenaの従業員は、理由を問わず自由に休暇を取ることができ、上司に正当な理由を述べる必要はない。彼らには自分の仕事をきちんとこなす責任もある。例えば、ミーティングに参加できない場合は、カバレッジを確保する必要がある。
同僚からの意見に耳を傾ける
創業者の神話というのは強力なものだが、CTOのAnne Solmssen(アン・ソルムセン)氏と私はそれを支持していない。次の2つのことに真価があると考えている。賢明で、原動力を備え、機知機略に富む創業者であること、そして、チームと協働して向上していくこと。当社では、会社をより良くして欲しいという想いを託すことのできる、見いだせる限り最も賢明な人材の採用に努めている。
私たちは直属の部下との間でフィードバックミーティングを毎週実施しており、フィードバックは常に二者間で行われる。つまり、マネージャーは直属の部下からフィードバックを得る。フィードバック・フライデーは、問題が最初に表面化する場となっている。こうしたフィードバックのための圧力解放バルブの存在はとても喜ばしいことだ。リモートチームにおいては特にそうだと思う。こうした場がなければ、上手くいっていないときにすべてが順調だと考えてしまうような、狭い視野に陥ってしまう。またフィードバックを私たちの文化の中に早期に取り入れたことは、後になってからそれを固定するのは非常に難しいことから、幸いに感じている。
従業員のフィードバックに耳を傾ける上で重要でありながら無視されがちなことに、意思決定の方法に関する公正さがある。例えば、共同創業者と私は、意見の相違や批判を聞きたいと思っている。しかし、熱心に耳を傾けることは、直接民主主義とは異を呈する。私はCEOとして意思決定を行うとともに、従業員たちができる限り多くの情報を得て、包括的であることに重きを置いている。
早い段階で人材運用に投資する
社内ブッククラブへの参加について積極的なアプローチが取られなかった理由として、当社にはまだ人材運用のリーダーが存在しないことが挙げられる。従業員約20名ほどのチームで、急速に成長しているところだ。私たちが人材運用担当者の採用を優先してきたのは、それが必須の機能であり、早期に投資しなければ、問題が見過ごされたままになりかねないからである。
確かに、共同創業者は企業文化に個人的に投資すべきだが、人材運用は技能であり、専門知識を必要とする。経験豊富な人材運用のリーダーは、複雑な問題に対処するプラクティスを豊富に有している。
誰もが自分自身を仕事に駆り立て、時間が必要なときには仕事から離れることもできる、機能性の高いチームを作りたいと私は考えている。この先途中で間違ってしまうこともあると思うが、どこでつまづくかを知る最善の方法は、賢明で有能なチームに教えてもらい、彼らのいうことに耳を傾け、企業文化を構築することに意識的になることである。
編集部注:本稿の著者Roxanne Petraeus(ロクサーヌ・ペトレイアス)氏は、現代のチームのためのコンプライアンス研修プラットフォームであるEthenaのCEO兼共同設立者。元陸軍の戦闘経験者でもある。
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カテゴリー:その他
タグ:コラム
画像クレジット:Klaus Vedfelt / Getty Images
[原文へ]
(文:Roxanne Petraeus、翻訳:Dragonfly)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/07/28/2021-05-21-politics-and-personal-time-making-room-for-both-at-work/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Roxanne Petraeus,Dragonfly
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