<&GP自作部>
クォーツ腕時計の電池交換を自分でしてから、腕時計熱が高まり、未知の世界への挑戦となった、オリジナルの機械式腕時計DIY。
前回、腕時計マニアや専門業者が集う海外通販サイトで、さまざまなパーツを個人輸入し、組み立てを始めました。
ここまでの作業で、SEIKO製機械式ムーブメント「NH35A」に、セレクトしたダイアル(文字盤)とハンズ(針)を装着。いよいよウォッチケースにムーブメントを挿入していきたいと思います。
この時点でNH35Aムーブメントには、仮のリューズと巻芯が付いており、そのままではケースに入れられません。
■ケースにムーブメントを収める
まずは仮のリューズと巻芯を取り外します。調べた情報によると、固定された巻芯のロックを外すには「オシドリ」と呼ばれる小さなボタンを押すのだそう。
NH35Aの場合はこちらのボタン。本当に小さいですね〜。腕時計修理業者さんのサイトや海外マニアのブログなどを参考にしましたが、どれがオシドリなのか探すのにかなり苦労しました。
このボタンを精密ドライバなどで軽く押しながら仮リューズを引っ張れば、すっと巻芯が動き、簡単に外すことができます。
次に購入したケースを見てみると、その内側にムーブメントを固定するためのプラスチック製のパーツが入っています。このパーツがあるとなしとでは大違い。前回「NH35A」の方が、「MIYOTA 8215」よりも初心者向きだといったポイントです。
この固定のための専用パーツのおかげで、ムーブメントとケースの結合作業が非常にスムーズにいったのですが、この段階では私は気づいておりません。何も知らず、指でグリグリと取り外したのでした。
外したプラスティックパーツと入れ違いに、ムーブメントを12時方向が合うよう確認してケースの中にそっと押し込みます。
裏側から作業しているので、最初はケースの左右を勘違いして6時が上になる向きで入れてしまい大失敗でした。最終的には巻芯を、ケース側面の穴とムーブメントの接続部に合わせて差し込むので、誤った方向では固定できませんが、ケース内には結構な遊びもあります。文字盤の12時が完全に真上でないと、非常に格好が悪いので注意してください。
表側から文字盤の微妙な位置合わせをしっかりと行い、仮の巻芯を戻してムーブメントがブレないようにして、プラスチックパーツで固定しました。これでケースとムーブメントの結合は完了です。
■巻芯とリューズを取り付ける
続いてケース付属のリューズと仮のリューズを交換します。まずリューズに軸棒となる巻芯を装着。本番用巻芯はムーブメントと一緒に届いてましたが、この巻芯は、どのようなデザインのケースでも使えるよう、非常に長めになっています。
上の写真が本番用のリューズと巻芯を挿入した状態ですが、ケースに対してめちゃくちゃ飛び出してますね。これでは実用では使えません。そこでケースの外周とリューズの距離を正確に計測し、この長い分を切断する必要があるのです。
計測の結果、今回切断しなければならない巻芯の長さは約8mm。私の持っている木工用の定規では、正確な計測は難しかったです。
同じく私が普段、針金などを切断する時に使うニッパーでは、今回の作業ではあまりにも大きすぎました。本来ならより精密な工作用の切断工具を使うべきだったようです。それでもビギナーズラックか、なんとかピッタリに収めることができました。
最後に裏蓋についているパッキンをシリコングリス塗布器でグリスアップし、裏蓋をねじ込めば腕時計の組み立てが完成です。
■裏蓋を締めればパイロットウォッチの完成
NH35Aムーブメントは手巻き機能も付いているので、軽くネジを巻き上げれば秒針が軽快に動き出しました。シンプルで機能的なデザインのケースに、ドイツ製パイロットウォッチをイメージしたダイアルとハンズの組み合わせがハマったのか、美しくカッコ良いだけでなく、時刻の視認が非常にしやすい、実用性の高い腕時計ができ正直、感動です。
ここまで大きなトラブルもなく、十分に実用に耐えうる一品を作ることができました。DIYという趣味にあまり効率や費用対効果を考えるのは野暮というものですが、この腕時計DIYは、非常に満足度が高く、コストパフォーマンスにも優れています。
さてこの記事もここで終わっていれば、ああ良かった良かった無事にDIY成功だとなったのですが、ついつい欲を出してしまうのがDIY好きの悲しい性。やはりマニアの間で非常に人気が高いMIYOTA製のムーブメントも欲しいし、これまた多くの腕時計愛好家が愛するダイバーズウォッチ を作ってみたいじゃないですか!!
そこで次回は、MIYOTAムーブメントの魅力と難しさをご紹介するとともに、完成した腕時計のために、レザークラフトでオリジナル革ベルトを作っていきます!
<写真・文/阪口 克>
阪口克|旅と自然の中の暮らしをテーマに国内外を取材するフリーカメラマン。秩父郡長瀞町の自宅は6年かけて家族でセルフビルド。家を経験ゼロからDIYで建てる。家族でセルフビルドした日々を描いた『家をセルフでビルドしたい』が文藝春秋から発売中。ほか近著に『笑って!小屋作り』(山と渓谷社)、『世界中からいただきます』(偕成社)など。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/384231/
- Source:&GP
- Author:&GP
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