一般電話での国際衛星通信を実現するLynk、商用化に向けて準備中

Lynk(リンク)の衛星ネットワークの登場により「電波が届かない」という時代は終わるかもしれない。Lynkの衛星ネットワークでは、最新の携帯電話が、特別なアンテナやチップを必要とせず、頭上の衛星と直接データを交換することができるようになる。同社は今週、双方向データリンクのデモンストレーションを行い、アフリカとバハマでの最初のネットワークパートナーを発表したばかりだが、順調にいけば、世界のどこでも電波を受信できるようになる日もそう遠くないかもしれない。

かつてUbiquitilink(ユビキティリンク)と呼ばれていたLynkは、元Nanoracks(ナノラック)の創業者であるCharles Miller(チャールズ・ミラー)氏を中心に、何年も前からこの段階に向けて取り組んできた。彼らは2019年の初めにまったく知られていない状態から突如姿を現し、普通の電話機が地球低軌道の衛星に接続できるという理論を示すために、いくつかのテスト衛星を打ち上げたと説明してみせた。初期のテストでは、ノイズやドップラーシフトなど、一部の専門家から「不可能」と言われていた要素を打ち消すことができたことが実証され、2020年には、衛星から直接、普通の電話機に初めてSMSを送信した。

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それだけでも、政府やネットワーク事業者にとっては注目すべき便利な機能だったはずだ。自然災害や停電などの緊急時には、通常のモバイルネットワークでは重要なメッセージを被災地に届けることができないからだ。Lynkは、衛星を使って都市全体に避難メッセージを送ることができることを示し、この技術が実際に将来的に使われる1つの例になるかもしれない。

しかし、先週初めて、同社は携帯電話と衛星(同社の5番目の衛星[Shannon]との間の双方向接続を実演してみせた。これにより、特別な装置を持たない地上の人間でも、頭上にLynkの衛星があれば、データの受信と送信の両方が可能になる。もちろん大したデータ量ではないが、SMSやGPSの位置情報、天気予報などには十分すぎるほどのデータ量だ(後により多くの衛生が配置ができるようになると、より多くのデータ量に対応する)。

「私たちは、携帯電話が宇宙のセルタワーに接続するために必要な双方向通話フローを何度も実証してきました。この双方向通話フローには、機器がチャネルアクセスを要求し、それに対応する認証や位置情報の更新手続きを含む、アップリンクとダウンリンクの複数のシグナリングが含まれます。現在までに、英国、バハマ、米国で数百台の携帯電話でこれを実現しています。これまで衛星セルタワーでは実証されてきておらず、Lynkがそれを成し遂げたのです」。とミラー氏はプレスリリースの中で述べている。

これはゲームチェンジャーと言っても過言ではないだろう。同社がさらにいくつかの衛星を軌道に乗せれば、地球上のかなりの部分をカバーすることができる。確かに電波の幅は狭く、断続的ではあるが、ハイキング中に足首を骨折したり、ハリケーンで街が停電したときに家族に無事を知らせるためには、何もないよりははるかにマシだ。

画像クレジット:Lynk

「いつでもどこでもテキストメッセージを送ることができるということは、すべての安全の基礎となります。友人や家族、隣人にメッセージを送ることができれば、それだけで命を救うことができます。あなたは必要ないかもしれませんが、あなたの奥さんや旦那さんは、心配しなくてすむためにも欲しいと思っているはずです。人々は安心を買っているのです」とミラー氏は教えてくれた。

まずは、より多くの人が緊急サービスを受けられるようにすることが先決だという。911コールはまだ無理でも、基本的な情報や座標を含むSOSメッセージは確実に可能であり、このサービスは、完全に彼ら次第というわけではないが、ゼロもしくは最小限のコストで提供されるようにしたいという。しかし、公式の緊急サービスに関連するものはすべて無料となるだろう。

通常のメッセージ機能は、通常の電波と同じように、衛星が頭上にあるときにリアルタイムで送信するか、送信ボックスや送信予約に入れておいて、宇宙ベースのネットワーク通信バーが表示されたときに送信するかのどちらかになる。

世界中のどこにいても、何があっても自分のいる場所の天気予報を配信できるデモアプリを無料で提供する予定で、ミラー氏は、ぜひ携帯電話メーカーやアプリメーカーと協力して、彼らのOSやサービスに統合したいと述べている。

驚くべきことに、アクセスにはユーザーはほとんど何も必要ない。軌道上にある電波塔なので、衛星が利用可能になると、他の通信事業者のセルタワーと同じように、あなたの携帯電話に通知してくれる。携帯電話というのは、あなたが使用しているネットワーク以外にも、周囲のさまざまなネットワークを常に認識している。異なるタワーに問い合わせ、信号を他のタワーに引き継いだり、何らかの理由でネットワークに再登録したりと、バックグラウンドでは常に相互作用が行われている。ユーザーは何らかの方法でそれを承認しなければならないが、それを手助けするアプリや、ネットワーク間の契約も用意される。

この点については、まずバハマのAliv(アリヴ)、中央アフリカ共和国のTelecel Centrafrique(テレセル・セントラフリック)と提携している。ミラー氏によると、米国を含む数十カ国のネットワーク事業者と交渉中とのことだが、これらの小規模な展開はその第一歩であり、現地の人々が本当に必要としているものだ。中央アフリカの農村部とバハマの離島には、あまり共通点がないかもしれないが、電波の届かない地域が広いという点では共通している。

通信事業者がどのような料金を設定しようとも、Lynkはその分け前を得ることができる。ミラー氏は、ネットワーク事業者の判断に委ねているという。「人々はメッセージごとに妥当な価格を支払うでしょう。最初のうちは1メッセージあたり5セント(約5円)、10セント(約10円)、20セント(約20円)としておけば、パートナーの判断に任せることができ、人々はそれにお金を払うでしょう」。時間の経過とともにサービスが普及し、Lynkが提供する費用が安くなれば、価格も下がることになるだろう(おそらく)。

常に接続されているという考えは、当然ながら、多くの人が持つプライバシーに関する考えとぶつかる可能性がある。しかし、ミラー氏は、自分たちは顧客データに興味がないことを強調した。「あなたは私たちの顧客であって、私たちの製品ではありません。私たちは興味がありません。それは非常に危険なことです」と述べている。911番通報やSOSメッセージが位置情報の提供を暗黙の了解としているという大きな例外を除いて、意図的にこの種の衝突を避けるよう構築しているという。

同社は現在、世界中の数十社のネットワーク事業者と交渉を進めているが、FCC(米国連邦通信委員会)の意見を聞く必要がある米国のように、規制や市場に関する問題が残っている地域も多い。しかし、ミラー氏は、自分たちが世界の通信インフラの主要な部分になるだろうと確信している。

「ポケットの中のスマートフォンは、人間としての能力を拡大してくれるスーパーパワーのようなものです。しかし、接続されていないと、その能力は失われてしまいます。私たちはその問題を解決しているのです」。とミラー氏は語った。

画像クレジット:Ubiquitilink

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Akihito Mizukoshi)


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