プラモ製作上達に欠かせない基幹アイテム「ヤスリ」の選び方と使い方【達人のプラモ術<道具編>】

【達人のプラモ術】
「達人御用達接着剤カタログ」

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。今回はプラモデル製作に欠かせないツール第3弾、ヤスリについて。

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今回はプラモ製作はお休みして、ニッパーや接着剤と並んでプラモ製作に欠かせない基幹アイテムといえる、研磨ツールを紹介していきます。

研磨ツールと言えばヤスリです。現在はさまざまな種類のヤスリが揃っており、パーツのバリ取りやゲートの処理、接着面の整え、塗装面の表面処理用など用途も多岐にわたります。こうした研磨アイテムを適材適所で使いこなすことで、プラモデルの製作、塗装をレベルアップさせられます。そこで、達人愛用オススメのプラモ製作用ヤスリの紹介と使い方を解説していきます。

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中

 

■紙ヤスリ

ホビー用としてはベーシックな存在。フィニッシングペーパーなどプラモデル製作に特化したものを使いたい。またスポンジシートなど曲面の研磨に特化したものも増えました。

 

▼タミヤ「フィニッシングペーパー」

フィニッシングペーパーはプラモデルの研磨や特化しており(木材の研磨にも使用できます)、モデラーに広く使われている紙ヤスリタイプの研磨アイテムです。番手(目の荒らさ)の種類も多く、製作から塗装まで使用頻度の高い研磨アイテムと言っていいでしょう。

一般的な紙ヤスリと比べると表面に目詰まりしにくい特殊加工がされており、そのままでヤスリがけする空研ぎと、水をつけて使う水研ぎ(水を使うことで研磨の際の抵抗が少なくなる)のどちらにも使えます。

パーツの接着部分の修正や、パテ盛り部分の整形や仕上げ、ランナーから切り離した際のゲート処理、接着部分の段差修正、パテ盛りした部分の整形、さらには塗装面の研ぎ出しなど幅広く使えます。

番手は2000、1500、1200、1000、800、600、400、320、240、180が用意されています(数字が大きくなるほど目が細かくなる)。使用頻度が高いのは1000~400番といったところ。また粗目、細目で組み合わせたセットも発売されているます。価格は3枚セットで220円~132円です。

▲フィニッシングペーパーの表面は、削りカスが目詰まりしにくい加工が施されている。水研ぎでも表面の研磨用素材が剥がれることもない

▲塗装面の表面がざらついた場合、1000番~2000番のフィニッシングペーパーで空研ぎすることで平滑にならすことができる

▲塗装面の研ぎ出し(平滑に仕上げ鏡面仕上げにする)には、研磨の抵抗が少なくなる水研ぎがオススメ

▲二つ折りにすることで凹部分の研磨も可能だ

 

▼タミヤ「研磨スポンジシート」

プラモデルの製作では、曲面部分を研磨しなくていけないことも多いのですが、フィニッシングペーパーや金属性ヤスリは曲面部分の研磨は苦手。つい研磨しすぎて平らになってしまったりします。

そこで達人がオススメするのがタミヤ「スポンジシート」です。発売以降、こちらも定番研磨アイテムとして定着しています。

▲厚さ5ミリのポロエチレンフォームに研磨粒子が塗布されており曲面への追随性が高いのが特徴。サイズは114ミリ×140ミリ。1枚単位で発売。308円

厚さ5mmの弾力のある高密度ポリエチレンフォームに酸化アルミニウムが研磨粒子として塗布されたシートで、柔軟性があるので、パーツの曲面に馴染ませて使用できます。

番手も多く(240、320、400、600、1000、1500、2000、3000が用意されている)、研磨から研ぎ出しまで幅広く使えるし、もちろん平面の研磨や研ぎ出し(ザラついてしまった塗装面を磨いて均一にならす)や、小さくカットして持ち手をつければ奥まった部分の研磨にも使用できる汎用性の高さで、使用頻度の高い研磨アイテムです。

▲スポンジシートはフィニッシングペーパーと同様に、ハサミで使いやすいサイズにカットして使用する

▲紙ヤスリの苦手な複雑な曲面でもパーツの形状になじむので均一な仕上がりを得られる

▲複雑な形状部分の研磨、またダクト状パーツの内側には、カットしたスポンジシートを持ち手に突き刺して使用することも

 

▼タミヤ「精密研磨フィルム」

一見するとヤスリには見えないのですが、薄いポリエステルフィルムに微細研磨粒子を均一に塗布した2000~8000番の研磨フィルムで、ひじょうにキメの細かいヤスリです。カーモデル等のツヤありの塗装面のざらつき、艶消し塗装のザラつきの修正に効果を発揮します。またクリアパーツパーティングラインを処理といったプラパーツ表面の傷研磨に使用します。

▲番手は2000、4000、6000、8000が用意されており、それぞれフィルムの色が変えてあるのでカットしても番手が分かるようになっている。価格は3枚セットで528円

缶スプレーやエアブラシ塗装した表面は、テカテカに見えても実は表面が細かくデコボコしています。精密研磨フィルムを使って研ぎ出しをすると、塗装面を均一に均すことができます。仕上げにコンパウンドを使うことで鏡面仕上げになります。

▲精密研磨フィルムは使いやすいようにカットして使用。研磨の際にフィルムのエッジで塗装面を傷つけないように角を丸くカットして使用する

▲塗装面の研ぎ出しや、飛行機モデルのキャノピーによくあるパーティングラインを研磨処理で使用。ピカピカに仕上げられる

 

【ここがポイント!】フィニッシングペーパー、スポンジシート、精密研磨フィルムの使い方

これらの研磨アイテムは、そのまま素材を削る空研ぎ、さらに水をつけて研磨面の抵抗を減らしながら研磨する水研ぎに使えます。それぞれ使いやすいサイズにカットして、両面テープなどでプラ板に貼って使うこともできます。基本的には使い捨てですが表面がボロボロになるまで使えますよ。

フィニッシングペーパーは紙ですが、研ぎ出しの際にエッジ部分で塗装面を傷つけてしまうことがあります。カットして使用する際は、必ず角を落としましょう。

フィニッシングペーパーやスポンジシートでパーツ表面を研磨する場合、目の粗い番手から細かい番手に変えていきます。番手ごとに交互(直角方向)に研磨することで、研磨傷を残さず均一な仕上がりを得られます。

 

■金属ヤスリ

ヤスリと言えば金属のステック状のものを思う浮かべる方も多いでしょう。金属ヤスリには金属用、木工用など素材に応じて種類があります。プラモデルではプラスチック用を使います。プラモデル製作ではフィニッシングペーパーやスティックタイプのヤスリが主流ですが、金属ヤスリも欠かせません

 

▼タミヤ「クラフトヤスリPRO」

紙ヤスリやスティックタイプが使い捨てなのに対して、金属性なので耐久性が高く恒久的に使用できるのもポイントです。しかし安価なものだと目が粗く、研磨の際にパーツ表面に傷を漬けてしまう場合があります。

▲プラモデル製作では6mm幅がオススメ。平タイプ6mm幅で1540円

金属ヤスリで達人イチオシはタミヤ「クラフトヤスリPRO」です。精密な切削加工によって刃をつけた、プラスチックの研磨に特化した波目ヤスリになります。研磨の際に生じる削りカスの排出性を高める、波目とは逆方向に太い溝を掘ったチップブレイカー加工が施されているので、プラの削りカスがヤスリの溝に目詰まりしにくいのも特徴です。

▲金属ヤスリは研磨面が粗くなると思いがちだが、プラスチックの研磨に特化した金属ヤスリがタミヤ「クラフトヤスリPRO」。フィニッシングペーパー等と同等のキメの細かい研磨面を得られる

ヤスリ本体に斜めに入れられているのがチップブレイカーです。これに沿って削りカスが排出されるので目詰まりしにくくなっています。

▲平タイプは6mmと16mmがあり、他にも半丸タイプと丸タイプがある

 

▼タミヤ「ハードコートヤスリPRO」

こちらも金属ヤスリですが、「クラフトヤスリPRO」に比べて、より精密研磨が可能で、金属ヤスリながらフィニッシングペーパーと同じようなキメの細かい精密研磨やパーツのエッジ出し作業をこなせます。また、ミニ四駆やRCカーのパーツで使われているカーボンパーツやFRPパーツの加工にも使用できます。

▲ハードクロムコーティングが施されており、パテのような素材を削っても目詰まりしにくく、削りカスも簡単に落とせる。価格は2750~2860円

▲スケールモデルの精密研磨にも適している。また目詰まりのしにくさも特長だ

▲半丸タイプと丸タイプがあるがプラモデルの製作には、汎用性の高いフラットな面と曲面を持つ半丸タイプがオススメだ

 

▼タミヤ「エッチングヤスリ」

近年、プラモデルの製作シーンではディテールアップパーツとしてエッチングパーツを使用する機会が多くなりました。エッチングパーツには真ちゅう、ステンレスといった金属が使われます。薄く繊細なものが多く、切り離した際のゲートの研磨には細心の注意が必要です。

タミヤ「エッチングヤスリ」は切削力に優れたダイヤモンド微粒子が使われており、薄いエッチングパーツを削ってもヤスリが引っかかることなく、また動かす方向にかかわらず軽い力で削ることができるのが特徴です。

▲薄い金属板を使っているエッチングパーツは一度曲げてしまうと元に戻らないので、切り離したあとのゲート(パーツに残った凸部分)の研磨には必ず精密なエッチングヤスリを使いたい

 

【ここがポイント!】金属ヤスリの使い方

タミヤ「クラフトヤスリPRO」や「ハードコートヤスリPRO」などの一般的な金属ヤスリは、削る素材に対してヤスリを押し込むように前方向に動かして研磨するのが正しい使い方です。ヤスリの刃は押し込む時削れるようになっているので、引いても削れないのです(※ダイヤモンドヤスリなど研磨の方向性がない金属ヤスリもあります)。

またプラ材はヤスリの目に削りカスが詰まりやすいので、こまめに削りカスを掃除することでヤスリの性能を維持できます。

 

★達人流ヤスリの3ポイント

①ヤスリは多少高価でも質の良いものを選ぶ

②ヤスリは適材適所で使い分ける

③ヤスリといえどもメンテナスは欠かさないこと

 

>> 達人のプラモ術

<写真・文/長谷川迷人>

 

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