使用環境とサイズで変わる“釣り用ライフジャケット”の正しい選び方

安全に釣りを楽しむための装備として、ライフジャケット(救命胴衣)は必需品です。実はいろんなタイプの製品があり、また決して安価なものでもありませんので、出かけるフィールドや釣りのスタイルごとに、適したものを厳選して身につけたいところ。そこで国内有数の救命具メーカーに聞いた、釣り人が知っておくべき、ライフジャケットの基礎知識を、ご紹介しましょう。

■釣りにライフジャケットが必要な理由

<POINT>
→遊漁船では着用義務。国交省認定品をつけねばならない
→船は常時着用義務。違反すると罰金や船舶免許の剥奪も
→磯でも要着用。“固型式”(詳細は後述)がおすすめ
→海中転落時の生存率は2倍

日本語で「救命胴衣」とも呼ばれるライフジャケット。正しく着用していると一定時間、水の上に体を浮かせやすくしてくれるアイテムです。その着用効果について海上保安庁の資料によると、2011年から2016年までの5年統計では、ライフジャケット非着用時の生存率が51%なのに対し、着用時は88%と、圧倒的に死亡率が低くなっています。また漁船やプレジャーボートでは、生存率が3倍も違う(非着用27%/着用80%)というデータもあり、すでに法律で着用が義務化されています。

また、救助に重要なポイントは、落水後に「どのくらいの時間、浮いて救助を待てるか」だそう。ライフジャケットで水に浮いていられる時間を確保できるかどうかは、命を左右する分岐点になるのです。

ちなみに船に乗る際は「桜マーク」と呼ばれる国交省の認証マークがついたType A、もしくはType Dの着用が必要ライフジャケットが必要です。これは、水中で浮き上がる力が7.5kg以上あること、顔を水面上に維持できること、などさまざま安全基準が定められている試験を国交省が行い、適合を確認し合格した印です。違反すると、遊漁船の船長にペナルティが課せられます。

・遊漁船での船釣り…「桜マーク」がついた国交省認定品を必ず常時着用しなければなりません。違反すると違反点数が付され、累積すると最大6カ月の免許停止を含む罰則が船長に課されます。

・ボート釣り…自分で操船してボートなどの小型船舶で釣りをする際も「桜マーク」付きのライフジャケットを着なくてはならないことが法律で決められました。2022年からは、こちらも遊漁船と同じく、船長(操縦者)には「違反点2点」が付き、船舶免許の再講習が必要になります。また違反点数が累積し、行政処分基準に達したら、最大で6カ月の免許停止になります。

 

■使用環境とサイズで変わるライフジャケットの選び方

さて、ライフジャケットにはいろんな種類があるため迷ってしまう方も多いと思います。そこで「Bluestorm」ブランドのライフジャケットを展開する、高階救命器具の大橋さんに、基礎知識と選び方を伺いました。

「まず、ライフジャケットは大きくふたつの種類にわかれます。中に発泡プラスチックなどの浮力体が入れられている“固型式”と、手動または落水の水を感知して自動で、炭酸ガスを膨脹させて浮き輪を膨らませる“膨脹式”です。これらは主に釣り場の特徴で使い分けます。

さらに実際釣りをするとなると、夏場に暑くて脱ぎたくなるようなものでは常時着用できませんし、動作の邪魔になるようなものでは釣りに支障が出てしまいます。ウエアの一部として、常時着用できるものかどうかという点も非常に重要です」(大橋さん)

そこで、それぞれのフィールドごとでの、ライフジャケットの選び方のポイントと、同社でのオススメアイテムを教えてもらいました。

■船釣り向けのライフジャケット選び

「まず船釣りでは、法令でライフジャケット着用が義務付けられていますが、注意したいのは『ライフジャケットなら何でもいいというわけではない』という点です。“国土交通省型式承認”を受けた証、いわゆる“桜マーク”入りでなければいけません。これは、それぞれ船舶の航行区域によって使用できるものが限定されます。詳細は国交省のHPでも確認できますよ」(大橋さん)

船釣りの場合、この要件さえ満たしていれば問題ないそうです。そのうえで、船釣りもエサ釣りと、ルアー釣りでオススメも変わるそうです。

「船のエサ釣りでは、腰かけて釣ることが多いので、首掛けタイプがおすすめです。PVCターポリン生地を採用しているものであれば、臭いの強いエサが付いた場合でも布で簡単に拭き取れます。一方、船のルアー釣りであれば、立ち上がって釣ることが多いので、コンパクトな腰巻きタイプをオススメします」(大橋さん)

1.「船ルアー」のオススメ

モーゲットウエスト」(膨張式)
2万2000円

竿のアクションでロッドの竿尻(バットエンド)に引っ掛かったりしないよう、膨らみのある部分が腰の後ろに納まるよう設計。動きの多いルアー釣りに適しています。また、カバーが立体形状に裁断されており、腰へのフィット感もよく、ジギングなどの激しい動きでもズレにくくなります。

■堤防釣り向けのライフジャケット

ひとくちに堤防の釣りといっても、渡船を利用する沖堤防の場合と漁港の波止などで釣る場合があるため、着用できるライフジャケットが異なります。

「渡船のみの利用であれば “桜マーク”の入ったライフジャケットだけでなく、“CS JCIマーク”の入ったライフジャケットも着用義務に対応するようになります」(大橋さん)

一方、漁港の波止など地続きになっている堤防などでは着用の義務はありませんが、万一の落水に備えて着用しておきたいところ。選ぶ際のポイントは、これも釣りのスタイルと釣り場によって選択肢が分かれるそうです。

2.“堤防エサ釣り”でのオススメ

「トカラウ」(固型式)
6160円

シンプルで動きやすく、さまざまな身長体重に対応するためにサイズ展開が豊富なモデル。桜マーク付きの“TypeD”のライフジャケットでもあるので、条件付きですが船釣りにも対応しています。ひとつであれもこれもという人にもおすすめ。

3.“堤防ルアー釣り”でのオススメ

「エレファンタ」(固型式)
9900円

釣りでは「ゲームベスト」と呼ばれるタイプです。通常このタイプは体に接触する部分が多く、暑い季節の着用はつらいもの。しかし、こちらは肩から胸にかけて大きく空いており、加えて背面が逆三角形になるようデザイン。これにより接触部分を少なめにしてヒートストレスを軽減しています。非常に軽いのも特徴で、前面ポケットの収納量を抑えめにして足元の視認性を高めることにより、テトラなど足元が不安定な場所での釣りがしやすくなっています。

■磯釣り向けのライフジャケット

磯向けのライフジャケット選びでは、ガスで膨らむ「膨張式」は避けましょう。その理由を大橋さんはこう語ります。

「落水したときのシチュエーションがポイントです。海水しかない沖などど違い、磯場は周りが尖った石やカキ殻だらけです。膨張式は中に炭酸ガスが充満した浮き輪ですから、これらが刺さって破れてしまうと浮力を失ってしまいます。また足場も不安定なため、動きを邪魔しないことと、細かなアイテムを入れておけるポケットがあるなど、釣り道具としての機能性も重要です」(大橋さん)

4.“磯のエサ釣り”でのオススメ

「SARASHI」(固型式)
1万9800円

サイズにより8.3kg~9.7kgとしっかりした浮力を持ちながら、多彩な機能を持ちます。ポケットがたくさんあり、ウキやガン玉、ハリといった小物が多い磯のエサ釣りで、道具を分けてしまうことが可能。また生地は目の細かくウォッシャブルのものを採用し、まきエサによる汚れ、臭いの付着を解消しています。

5.“磯のルアー釣り”でのオススメ

「レバンテ」(固型式)
1万5840円

幅のあるリブベルトを採用した、高いフィット感が特徴。磯場を歩いた際もライフジャケットが体に密着し、ぶれないため疲労が軽減されます。ルアーボックスをそのまま入れられる大型のメインポケットや、薄型の背面収納があるので、移動とキャストを繰り返しながら長距離を身軽に動くのに最適なモデルです。

*  *  *

船、磯、子どもは必ず着用を!

「万が一の時に身を預けるライフジャケットには、高い安全性が要求されます。だからこそ、Bluestormのライフジャケットは、国土交通省の定める、実際に救命を想定した各種の厳しい試験に合格し、型式承認を取得しているのです」(大橋さん)

着用により生存率を大きく上げられることがデータで実証されてきたことで、乗船時に近年法令で着用が義務化されているライフジャケット。もちろん船以外の磯など、不意の大波にさらわれやすい環境でも着用は必須。たとえ堤防など遊びやすい場所であっても、子どもは落水リスクがつきまといます。釣りに行く際は、「船と磯と子どもは必ず常時着用」と覚えておきましょう。

 

>> Bluestorm

<取材・文/おちから丸>

おちから丸|海山野外遊び系の企画編集&ライター。3人乗りのミニボートに乗り、日々家族で相模湾に出船。釣った魚を美味しく仕立てるのを楽しんでいる。得意ジャンルは釣り、料理、野営

 

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