社名を変えてからわずか数日後にFacebookは、この世界最大のソーシャルネットワークが10億以上の人びとに関して集めた、いちばん心配なデータ集合を削除する計画を発表した。
火曜日のブログでFacebookの、その名も新たな親会社Metaは、同社の顔認識システムの部門を閉鎖し、顔を写真とビデオで突き合わせるために使っていた10億あまりの顔認識テンプレートの集まりを削除する、と説明した。Facebookは今後、このシステムにオプト・インしていたユーザーのマッチングを行わない。
Facebookは、写真に名前を自動的にタグ付けするために2010年に顔認識を導入した。この機能はローンチ時に自動的に有効になり、Facebookは2019年にやっと、システムを明示的にオプトインにした。それにより、同社が10億を超える顔認識プロフィールをどうやって編纂していたかも明らかになった。
ブログでFacebookの人工知能担当副社長Jerome Pesenti氏がこう述べている: 「今後に関しても、顔認識技術が強力なツールであるという認識は持ち続けるだろう。たとえば、人びとのアイデンティティを確認する必要があったり、詐欺やなりすましを防がなければならない。しかし、顔認識が役に立つ多くの具体的な事例は、この技術全体に対する懸念の高まりと比較して、その重要性の軽重を秤にかける必要がある」。
Pesenti氏によると、Metaの顔認識を制限するという決定により、顔認識技術を取り巻く環境が不確定になり、ごく一部のアプリケーションしか使えなくなるだろう、という。
現時点では、Facebookの顔認識システムはおそらく、その価値よりもトラブルの方が大きい。米国における、オンラインのプライバシーを規制する多くの提案は、その多くが、特に国のレベルでは仮説にとどまっており、既存の法律では、顔認識技術の利用が一層複雑になるだろう。たとえばイリノイ州のプライバシー法Biometric Information Privacy Act(BIPA)は、一部のテクノロジー大手の動きを制約しようとしている。
今年の初めにはFacebookがBIPAにより、イリノイ州民の写真を同意なく顔認識を使って同定したとして、6億5000万ドルの支払いを命じられた。議論を招いている顔認識企業Clearview AIも現在、同州でBIPAの訴訟に直面している。またFTCは、Facebookの顔認識の利用を欺瞞的なプライバシー実践と呼び、50億ドルという記録破りの、強制力を欠く調停案を提示している。
顔認識から撤退するFacebookの決定は、同社のメタバースをめぐる大きな社名変更と期を一にする象徴的なジェスチャーだ。Facebookのプライバシーとモデレーションの失敗に関するコンセンサスは、同社のビジネスにまったく傷を与えていない。しかし同社の次の章が社名変更であろうとなかろうと、それに続くものは大衆の不信と迫り来る規制だ。
今やMetaという名前で知られるようになった企業が自分を、次のインターネット時代における信頼される奉仕者として立て直そうとしているが、そのためには自身の努力が必要だ。これまでのプライバシーの汚名から、一部の重荷を捨てる試みは、狡猾なそぶりだ。それは、ユーザーの究極の勝利でもある。その突然の心変わりを、誰も買わないだろうが。
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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Kelly Sullivan/Stringer / Getty Images
[原文へ]
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/11/03/2021-11-02-facebook-face-recognition-data-deleting/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Taylor Hatmaker,Hiroshi Iwatani
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