産総研は11月26日、大阪大学大学院基礎工学研究科と共同で、次世代通信規格となるいわゆる「ポスト5G/6G」時代に利用が予定されている140GHzというミリ波帯の電波を特定方向に高効率で反射させる「メタサーフェス」反射板を世界で初めて開発したと発表した。これを利用すれば、基地局を増設しなくとも反射板を設置するだけで通信エリアの拡大が期待される。
メタサーフェスとは、波長よりも小さな構造体を周期的に並べて、電磁波を任意の方向に反射させることができるメタマテリアル(人工媒質)のこと。不要な反射をなくし、特定の方向だけに反射させる(異常反射)が可能なため、電磁波を高効率に伝搬できる。これまで、100GHzを超えるミリ波に対応したメタサーフェス反射板は、その効果の計測が困難であったため世界的に開発や実証は行われてこなかったのだが、産総研はミリ波帯の高精度の材料計測技術を活かしてこれを克服した。
ポスト5G/6Gで活用されるミリ波は、高速で大容量の電波帯域として期待されている反面、障害物によって簡単に遮蔽されてしまう問題がある。これを解決するには基地局を増やして高密度化するという方法があるが、それでは消費エネルギーやコストが増大してしまう。メタサーフェス反射板なら、電源を必要としない。設置免許もいらず、ビルの窓などに設置できるので、街の景観を損なうこともない。これで、障害物の影になる地域でも通信が可能になる。
産総研が開発したメタサーフェス反射板は、理論的な反射効率が99%以上に達した。また、反射板の素材損失を除いた実測値でも最大88%という高効率が実証された。今後は、300GHzまでの高周波化や反射方向の動的制御、マルチバンド動作などの高効率化を目指すという。
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/11/29/aist-meta-surface/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:tetsuokanai