大阪大学は12月15日、生物が匂いの発生源「匂い源」を効率的に探索するためには、複数の感覚の情報統合が必要であることを、世界で初めて解明したことを発表した。この行動解析は、ガス漏れ探索機や人命救助ロボットへの応用が期待されるという。
生物は、生存に欠かせない匂い源の探索に風や視覚情報を使っていることは前から知られていたが、その情報が、どのような状況化でどのように行動に反映されているかは未解明だった。そこで、大阪大学大学院基礎工学研究科大学院生の山田真由氏らによる研究グループは、匂い、風、光を同時に連続的に提示できる昆虫用VRシステムを開発し、カイコガの雄が雌を探す様子を観察した。すると、匂い情報と風の情報は歩行と回転の速度調整に、視覚情報は姿勢制御に寄与していることがわかった。
さらに研究グループは、生物学的データからモデルを構築し、シミュレーションにより機能評価を行ったところ、これまでに提案されていた匂い源探索モデルよりも高い探索成功率が示された。また、生物と同様の探索軌跡が発現されることも認められた。
研究グループでは、このVRシステムを他の生物にも応用することで「生物の生存戦略についての知見が深まる」としている。同時に、ガス漏れ源探索ロボットや人命救助ロボットといった工学分野への応用も期待されるとのことだ。
同研究は、大阪大学大学院基礎工学研究科大学院生の山田真由氏、大橋ひろ乃特任研究員、細田耕教授、志垣俊介助教、東京工業大学工学院システム制御系の倉林大輔教授らによるもの。