2021年、携帯各社が繰り広げた“料金値下げ”合戦をおさらい! 来年は…… 【2021年振り返り #2】

2021年の通信業界は、“料金値下げ”が大きな注目を集めた1年でした。

なかでも、オンラインに特化してコストを大幅に下げた新機軸の料金は、そのコストパフォーマンスの高さから話題を呼びました。ドコモのahamo、KDDIのpovo、ソフトバンクのLINEMOがそれです。

いずれも、20GBの中容量で料金は2000円台後半。店舗での契約やサポートを省くことで、大幅な値下げを実現しました。これらの料金が出そろったのは3月のことです。

ドコモがahamoを開始したのを契機に、各社ともオンライン専用料金プランの導入に踏み切った。写真は2020年12月の発表時のもので、料金は税込みで2970円に下がっている

KDDIとソフトバンクのサブブランドが好調

また、大手キャリア各社とも、無制限、大容量プランやサブブランドの料金プランも値下げしました。

なかでもKDDIのUQ mobileは、1回線目から3GBで1628円の「くりこしプラン」を投入し、契約数を伸ばしています。また、UQ mobileは6月に「でんきセット割」を導入し、auでんきやUQでんきとセット契約した際の料金を1回線目から990円に値下げしています。でんきセット割は9月に「自宅セット割」に改定。固定回線もセット割引に含め、値下げの対象者を増やしています。

UQ mobileは、6月に導入した「でんきセット割」を9月に「自宅セット割」に改定。1回線で3GB、990円という破格の料金を実現した

UQ mobileほどのインパクトはありませんでしたが、ソフトバンクのワイモバイルも料金を値下げしています。KDDI、ソフトバンクともに、このサブブランドが好調。ショップで契約できたり、オンライン専用料金プランで省かれてしまっているサービスはそのまま使えたりと、かゆいところに手が届きつつ、料金が下がるのがこれらサブブランドの魅力です。

例えば、ワイモバイルの場合、キャンペーン実施時にPayPayの還元率が上がったり、オプションの「Enjoyパック」でPayPayモールやYahoo!ショッピングがお得になったりと、使い方によってはLINEMOよりもお得になることも。オンライン専用プラン開始後もサブブランドの勢いが衰えていないのは、こうしたサービス面まできちんと評価された結果と言えるかもしれません。

ソフトバンクの成長をけん引しているのはワイモバイル。ユーザーの伸び率も高い

一方のオンライン専用プランは、サービス開始から半年も経たずに、内容を改定しています。

ソフトバンクは、7月にLINEMOのミニプランを開始。3GBで990円の料金を実現しました。対するKDDIはpovoをpovo2.0に全面リニューアルして、基本使用料0円を打ち出しました。必要なデータ容量は、ユーザーが自由に「トッピング」として追加していけるというのが、povo2.0の特徴。プリペイド的な感覚で利用できるオンライン専用プランとして、UQ mobileの差別化を図りました。

povoは、9月にpovo2.0へサービスを刷新。トッピングでユーザーがある程度自由に料金を組み立てられるようになった

格安スマホMVNOも軒並み値下げへ

大手キャリアの相次ぐ値下げであおりを受けたのが、格安スマホなどと呼ばれるMVNOです。元々、MVNOは低容量、低価格を武器にしていましたが、特にサブブランドが主戦場としていた3GB帯を値下げした結果、価格差が縮まっていました。また、混雑時の通信品質などに課題も。

こうした状況を受け、MVNOの業界団体は回線を借りる際の接続料や、音声通話利用時の基本使用料の値下げを要求。総務省の後押しもあり、前倒しで値下げが実現しました。

回線を借りる際の料金が下がったことを受け、MVNO各社も値下げに乗り出します。4月までには、IIJmioやOCNモバイルONE、mineoといった大手MVNOが、軒並み新料金プランを発表。nuroモバイルの「バリュープラス」のように、3GBで627円といった格安な料金を打ち出すMVNOも登場しました。価格がサブブランド以下になったことで住み分けができ、MVNOは再び勢いを取り戻しつつあります。

MVNO各社も新料金プランを導入。得意とする低容量の領域を大幅に値下げし、勢いを取り戻しつつある

ドコモはMVNO活用し店舗で販売、組織再編も

こうしたなか、サブブランドを持たないドコモはMVNOを活用する取り組みを始めました。「エコノミーMVNO」と呼ばれる仕組みです。

契約自体はMVNOと直接結ぶことになりますが、ドコモショップで手続きができ、初期設定のサポートを受けられるのが特徴。開始当初はNTTコミュニケーションズのOCNモバイルONEのみでしたが、12月22日からは子どもにターゲットを特化したトーンモバイルが2社目としてエコノミーMVNOに加わります。

NTTコミュニケーションズは22年1月にドコモの子会社になる予定で、夏にはOCNモバイルONEをドコモの完全子会社となるNTTレゾナントに移管する予定。エコノミーMVNOではありますが、子会社が運営する以上、実質的にはサブブランドに近い存在と言えます。

もう1社のトーンモバイルはNTTグループからは完全に独立した会社ですが、特色のあるMVNOとしてドコモのメインの料金プランや、OCNモバイルONEとは差別化が図れています。

ドコモは、MVNOの料金プランを店頭で販売する「エコノミーMVNO」を開始。OCNモバイルONEに加え、写真のトーンモバイルが「TONE for docomo」を22日に開始する

エコノミーMVNOは、2300店舗のドコモショップで販売されるのがメリット。

オンライン中心だったMVNOの販路が大きく広がることになり、この仕組みに参加する2社はシェアを大きく伸ばす可能性がありそうです。現時点では2社にとどまっていますが、引き続き協議中のMVNOもあるとのことで、今後、選択肢が少しずつ増えていく可能性もありそうです。

今年は値下げの年、来年は5G加速へ

2021年は料金競争にわいた1年でしたが、MNP手数料を廃する会社も相次ぎ、ユーザー視点で見ると、よりキャリアの変更が容易になったと言えるでしょう。

12月からはメールアドレスの持ち運び制度も始まり、よりキャリアを変更するハードルは下がりました。とは言え、この料金値下げは政府からの要望を反映させたもので、いわば“官製値下げ”と言えるもの。結果として、各社の利益率は悪化し、通信事業に関しては各社とも収入や利益を大きく落としています。

そのため、同様の値下げが2022年も続くことはないでしょう。各社とも、こうした減収を補うべく、非通信の領域を強化しているほか、通信事業では5Gの展開を加速させています。ユーザーが5Gに移れば、そのぶん通信量が増え、より上位の料金プランに加入してもらえる可能性が高まるからです。

5G端末の比率は徐々に上がっていますが、より大容量で高速な通信を必要とする機能やサービスは、2022年にさらに増えていくことになりそうです。

(文・石野純也)


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